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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
3.襲撃
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7.マディとリル(1)


「次は、マディ。お前はなんでここにいたんだ?」

「私はパンを作って、夫がそのパンを売って生活していました。

2日前に、朝起きたら家の中の物がすべて無くなっていました。


私は、その部屋で寝てたのに全く気が付かず、荷物だけがすべて無くなったんです。

なにがなんだかわからずに困って、私の両親に状況を話して受け入れて貰っいました。


ただ夫は何か心当たりがあったらしく、浮浪児にやられたってすごく怒ってて・・・。

私が、衛兵に訴えて何とかして貰おうと言っても、夫には取り合って貰えませんでした。


そして昨日の夜、夫が友人と言って冒険者を連れてきました。

そいつが・・・私の父を殺したんです!

その後、夫が・・・母を殺しました。

そして、私をその男に売ったんです。」

マディは、思い出したんだろう、泣き出してしまった。


しばらくして、マディは話を続ける。

「それから、私は自分の家に連れられて行き、男達に好きにされました。

その内、大けがを負った浮浪児の子が連れてこられ、さらに虐待されていました。

そして・・・誰かが家を襲ってるって話になって・・・気が付いたら今です。」


泣き出しはしたが、思いのほか淡々と状況を話してる。

普通は、こんな話はしたくないし、つらくて泣きじゃくって、話になんてならないだろう。

いや・・・この殺伐とした世界では、

もしかしたらそれほど珍しい事では無いのかも知れないな。

自分の嫁の親を殺し、嫁を売るなんて、心底反吐が出る所業だ。


「お前の旦那は、ごみだな・・・。」

「はい。あまりに自分勝手・・・殺してやりたい。」

「奴は、両足を失ったよ。もうまともに生きられないだろう。」

「・・・そうですか。」

マディは泣きながら、下を向いてしまった。


この人達は、被害者っぽいな。

完全に信じる訳ではないが、状況的にも被害者で間違いないだろうし、辻褄もあってそうだ。


「では、2人共・・・このまま解放してやる事が出来るがどうする?」

「私は・・・家族も知り合いもすべて殺されました。

解放されても、死ぬのを待つだけです。」

「私も、同じです。」

そうだろな・・・状況としては最悪の状況なんだろうな。


「お前たちを雇ってやる事も出来る。ただし自由はない。

その代わり、身の安全、衣食住は保障してやる。

仕事内容としては、家事全般と雑用になる。」


あ・・・そうだこれは言っておかないと。

「あと、マディ」

「はい。」

「お前の家の物を、すべて奪ったのは俺だ。」

「なんで!あれがすべての始まりだったのに!」

「違うな・・・。パン屋は俺が弱った所に漬け込んで、攻撃し、

獲物を奪って行ったのが始まりだ。

その報復として、俺はあいつの荷物をすべて奪っただけだ。」

「え?あ・・・ウサギが手に入って売ったって。」

「ああ。それだな。」

「・・・やっぱりあの男が、すべての原因なんですね。」


「さて・・・どうする?

ほかにも、教会なんかを当てにして、解放されるのも選択肢としてはあるとは思うが・・・。

あと、俺に雇われるなら、秘密を守ってもらう為に町に戻る事は出来なくなる。」

「1つお伺いしてもいいでしょうか?」

リルは顔を上げ、問いかけて来た。


「なんだ?」

「あなた様は、どういった方なのでしょうか?騎士様か貴族様なのでしょうか?」

「そうだな・・・。決めるにも情報がいるか。俺は、騎士でも貴族でもない。

だが・・・力を持っている。

あの程度の盗賊は問題にならない程度にはな。」


リルは、決めたように顔を上げて、

「私は・・・解放されても生きる方法がありません。教会での扱いは聞いてます。

雇っていただけるのあれば、何でもさせていただきます。」

確かに、村は全滅、知り合いも親戚もなく、1年盗賊に飼われた女が、

金も家もない状態から生活して行く方法はかなり過酷だろう。

教会の扱いってそんなにひどいんだ・・・。

もしかしたら、孤児院なんかと同じかもしれないな。


「私も・・・お願いします。」

マディも同じ答えだった。

「マディいいのか?多分お前の破綻の原因はパン屋かもしれんが、

直接的には俺が手を下した事になる。」

「いえ・・・私の人生はもう破綻していたのです。

あの男の嫁として嫁いだ時から・・・。」


確かに・・・ごみ男だからな。

ピンチを救ってくれた親を殺し、嫁を売って、自分の復讐を優先するような男だからな。


「では、お前達が俺に従順である限り、お前たちの身の安全は保障しよう。」

「はい。ありがとうございます。」

「一応念の為に行っておく。

もしも俺の許可なく、俺の事を他人に話したり、俺の仲間に危害を加えた場合容赦はしない。

俺はあの盗賊達よりも、確実に裏切者を見つけ、始末する事が出来る事を肝に銘じておけ。」

「はい。」


2人の目隠しを外そうと近づくと、体に打撲の跡がいくつも見えた。

「少し大人しくしててくれ、治療する。」

魔法で、2人の体を治療していく。

むごい扱いをされていたんだという傷もあり、出来るだけ跡が残らないように治療していく。

10分ほどで2人の体の治療は終わった。


2人の目隠しを外してあげる。

2人は、急に明るくなった事でまぶしそうに下を見て、目を慣らしてから俺の方を見て驚く。

「子供・・・。」

「ああ。その通りだ。」

声だけでは確信出来なかったのか、見えない事でイメージが膨らんでたのか、

子供である事は、盗賊達の会話の中で知ってるはずだったのに驚いたようだ。


「ここは?」

「俺の町での拠点だ。」

マディは周りを見回しながら、自分の家ではない事に今気が付いたようだ。


2人を拘束していたロープを外して、服をそれぞれに渡してあげる。

服を着るのを待って、

「少し移動するぞ。」

「はい」


倉庫奥の2重壁の奥の亜空間の入り口に向かって、入る様に指示すると、

「もしかして・・・。」

「ああ。付いて来い。」

魔法に気が付いたようだけど、説明は後からだな。


亜空間の入り口から、家に出ると、リビングにはアリスとミーアが、

机に向かって座っていた。


「アリス。この2人もこれからここで一緒に住む事になった。」

「大人!・・・大丈夫なの?」

アリスがいぶかしそうな顔で、2人を見比べる。


「まあ、大丈夫だよ。料理や、掃除をやってもらう予定だ。

こっちが、リルでこっちがマディだ。」

「この子がアリスだ。俺の大事な仲間だ。」

「リルさん、マディさんよろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」


「そして、この子がミーアだ。」

「よろしくです。」

「よろしくお願いします。」


「奥の寝室にあいつらに攫われてた子がいるが、起きてからにしよう。」

「あの子は無事だったんですね。かなりむごい事をされてました。」


リルだ。虐待を見てたんだろうな。

「ああ。治療してある。」


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