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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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ロベルト視点

ロベルト視点


最初に見かけた時には、何とも思わなかった。

騎士や冒険者にあこがれてるのか、マントのように布を纏っている。

その纏っているマントの汚れのひどい事‥‥。

「近づくな!」って言いたくなるくらい臭い。


貧民街の子供の口減らしに、危険な場所に採取に行かせる事があるが、ここまで汚いと孤児だろうからそういう訳でもないだろう。

じゃあ町で生きて行くのが辛くって、外に逃げ出すのか。

浮浪児のケンカなんかで居づらくなったのか、犯罪を働いて逃げ出そうとしているのか。

そんな所だろうと思っていた。


だが話てみると、戻って来る気、満々じゃないか‥‥。

本気で森でなにか採取するつもりらしい。

世間知らずって事か。


まあ孤児が1人森の獣の餌になった所で、大した事はないか‥‥。

戻って来られるなら、運が良かったと言う事だ。

助ける気もないが、止める気もない。

そう思って、送り出したのだが、数時間すると何も無かったかのように戻って来やがった。


しかも服をきれいに洗ったのか、臭いも無くなっているし、服もマントも綺麗になっている。

さらに驚く事に黒耳ウサギを持ってやがった!

これが死んでるウサギでも見つけたと言うのならわかるが、そうじゃない。


ウサギなんて見つけるのも難しいし、狩るとなるとちゃんとウサギがどう動くか知ってないと狩れる訳が無い。

傷も少なく、血抜きも出来ている。

これは‥‥ちゃんと狩った獲物のようだ。

周りを見ても、こいつしかいないようだし。


たまたま娘の誕生日がもうすぐで、明日あたり冒険者ギルドに良い肉を買いに行くつもりだった。

冒険者ギルドから買うなら、ハーリが元職員なので安くしてもらっても、ウサギの場合肉だけで銀貨3枚は必要だ。

予算は銀貨1枚程度だから、シカ肉辺りにしようと思ってたけどこれは丁度いい。


「売ってくれないか?大銅貨5枚でどうだ?」

交渉は基本安い所から、交渉して行く。

まあ子供だから、そのまま買えるかもしれない期待もあるんだが‥‥。


「ごめんなさい。冒険者ギルドに売ろうと思っているんで‥‥。」

冒険者ギルドに出すなら、ギルドに売りに出す銀貨1枚か‥‥それと同額は出すか。

子供だからと騙したなんて、ハーリ知られたら機嫌をそこなっちまう。

「冒険者ギルドに持って行くなら、同じ値段の銀貨1枚でどうだ?娘の誕生日に食わせてやりたいんだ。」


思わぬ提案で、値段を下げてその代わりに、解体を教えてほしいとの事だった。

家にはハーリがいるので、安くなるなら解体を教えるくらいなんて事は無い。

子供が好きなハーリなら喜んで教えるだろう。


それにしても、この子供は変わっている。

通貨の事や文字を教えてほしいと、熱心に話を聞いてくる。

その割には、言葉は商人のように丁重に話してくる。

没落した貴族や、潰れた商人の子供って感じなのか?


家でハーリに解体を教えて貰っている時も、理解が早い。

でも、文字も数字も知らないと来ている。さらに計算も出来る。


次の日になって‥‥今度は、増えやがった。

もう1人、浮浪児を連れてやがる。どういう事なんだ?

しかも戻って来たら、また黒耳ウサギを持ってやがった‥‥なんだこれ?

どうやったら、こんなにウサギが狩れるんだ?

なんか森に異常でも出てるのか?

念の為、次の報告会で主任には報告しておいた方がいいかもしれんな。


冒険者ギルドに行くと言うから、「付いて行ってやる」と言ったのだが、「2人で行く」と聞かなかった。

気になったので、仕事が終わった後に、冒険者ギルドに様子を見に向かう。

途中で露店が壊れ、なにか荒事があったような様子。

露店の女に話を聞くと、最悪の状況になっていた。

男女2人の浮浪児が襲われ、女の子は攫われ、男の子は蹴られ露店に突っ込み大けがをしていたらしい。

男の子の方は、そのまま女の子を追って行ったらしいが、死んでおかしくないようなケガをしていたとの話だった。


服装を聞くと、洗ってきれいになった浮浪児の服を着てたって事は‥‥確定だ。

どっちに行ったか聞いて、急いで追いかける。

途中まで血の跡があったが、途中で途切れ、向かった方向が判らなくなった。

通りの方まで出て、大けがをした子供の話を聞いたが、目撃者はいなかった。

攫われたって女の子の方は、見た奴はそれなりに居たが、路地に入ったって所で情報が途切れた。


子供がこういった事件に巻き込まれるのは、珍しくもない。

浮浪児にしては身ぎれいにしていたし、金目の物も持っていたのなら狙われても不思議はないか。

ウサギ狩りの秘密は分からなかったが、こうなると探しようがないだろう。

外の森からは無事に帰って来たのに、町の中からは無事帰れないなんて皮肉だな。


翌朝‥‥何事もなかったかのように現れやがった。

ケガしているような感じでは無い。

と言う事は、襲われたのはこいつらじゃないのか?

それとも、あの露店の奴が話を大げさに言ってただけなのか?


聞いてみたら、そんな話は知らないと言う。

ただ冒険者ギルドでの販売はうまく行かなかったらしい。


今度は、町の外で泊まりたいと言う話だ。

なので冒険者ギルド証の話をしてやったが、年齢的に難しいと言う事で、人を雇うか入る人に付いて入る方法を言っておいた。

例えウサギが狩れても、他にも多くの危険な獣が外にはいるんだ。危なすぎる。

子供が野営なんてするべきじゃない。


‥‥今度は、小鹿を狩って来やがった。

一体どうなっているんだ?

小鹿とは言えシカは、ウサギと違ってすごい速さで移動する。

傷を見ても、1撃で仕留めている。

どうやって毎日こんな獲物を狩って来られるんだ?


ハーリの所に行きたいと言うので、家まで連れて来てやった。

ハーリと解体して、そのまま買い物にも付き合ったみたいだ。


「なあ、ハルトの事どう思う?」

俺は、その日の夕飯の時に妻のハーリに聞いてみた。


「そうよね。不思議な子だけど、いい子よね。」

「ああ、そうだな。どんな秘密を持っているんだと思う?」


「そうねぇ。最初にウサギ、次の日にまたウサギ、そしてシカよね。それ以外にヘビの皮も3つ持ってたわよ。」

「あいつヘビまで狩ってたのか?皮しか持ってなかったって事は、皮だけ取って捨てたって事か。

でも南門から出たのは、2日前から今日を合わせて3日だけのはずなのに‥‥。」

「それだけなら、冒険者パーティーで狩った獲物を、運んでるだけって可能性も無くはないんだけど‥‥。」

「子供にそんな事させる理由も無いし、わざわざ森まで遠い南門に行く必要も無い。」


「そうなのよね。それに明らかに手練れの狩り方だし、今日見せて貰ったんだけどナイフはすごい業物だったの。」

「業物って、そんな高価な物を持っているのか?」

「そうね。柄や鞘は普通の短剣の物だったんで見た目ではわからなかったんだけど、抜いたらすごかったわよ。

なんだか刃が欠けたような見た目なんだけど、そもそもそういう風に作られた物らしいわ。」

「そんな物どこで手に入れたんだ?

いや順番的には手に入れたから、外に出て狩りを始めたのか。

という事は、そのナイフが狩りの秘密と言う事か‥‥。でも、ナイフだけで5歳児がそんなに狩りが出来る物か?」


「あのナイフもしかしたら、魔道具ってやつじゃないかしら。あれだけの業物なら魔道具って言われても信じるわ。」

「魔道具って、貴族が使う魔法の道具か。」

「その魔道具を使って、狩りが出来るって事じゃないかしら?」

「なるほど。と言う事は‥‥元貴族の子供って線が強いのか。それなら魔道具のナイフを持ってるかもしれないし、あの丁寧な言葉遣いも納得行くな。」


そのナイフが魔道具なら、いくらになるんだろうな。

とんでもない値段で売れそうだ。

それに5歳の子供でも、狩りが出来るようなナイフって事は、俺が使ったらもっと狩り出来そうだな。


「そのナイフがあれば、俺もあんな狩りが出来るって事か‥‥。」

「何言っているの!シカを1撃で倒せるような子なのよ!シカのようにやられるに決まっているじゃない!」

「いや、本気で言っている訳じゃないって。」

「それにあの子はいい子よ。そんな子に手を出したら、私が許さないからね!それと、ナイフの事は私にだけって事で話してくれたんだから、あの子には言わないようにね!」

「わかっているよ。俺もあいつは気に入っているから、何かしようなんて考えてねえよ。」

ハーリの奴は随分気に入っているみたいだな。


「ナイフを最近手に入れたんだとすれば、元貴族の子供じゃないかもしれないわよ。」

「どういう事だ?」

「だってそんなナイフをどこから手に入れたのよ。」

「なるほど。と言う事は貴族の子供のお忍びかなにかって事か?」

「う~ん。それはわかんないけど、貴族様絡みって言うのは間違いないんじゃないかしら。」

「確かに‥‥そうだな。」


「私はハルトもアリスちゃんも好きだから、いままで通りに仲良くしたいし、あなたにも仲良くしてほしいわ。」

「それには俺も異存は無い。あの子達には出来るだけ力を貸してやろう。」

「そうね。」

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