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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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アリス視点

アリス視点です。


ハルトと初めて会ったのは、孤児院にいた頃だ。

ハルトは、すごい大人しい子で、あまり何もしゃべらない子だった。

ジャックや、ミーア達と話しているのは見かけたけど、他の子と話しているのは見た事がなかった。

やっと少し話をしてくれるようになった頃には、あたしは5歳になってベッドを取り上げられ、孤児院を出た。


路上で生活に慣れるまではそんなにかからなかった。

外ってだけで、孤児院に居た時とそれほど生活は変わらなかったから。

食事は、数日ごとに孤児院で食べさせてもらえる。

他の日は、他の子達が居ない所のごみを漁ればなんとかなる。

最悪、道端に生えている草でも食べる事が出来る。


孤児院に戻っても、ハルトに会う事は無かった。ハルトの事を思い出す事も無かった。

路地での生活に慣れ、1人で寝るのにも慣れ、体が汚くても、髪の毛が絡まってぐちゃぐちゃになっても、気にならなくなった。


あたしは、小さい頃町の外の農村で暮らしてた。

あまり覚えていないんだけど、そこが盗賊に襲われ、村が全滅したらしい。

盗賊は、村を全滅しても子供はあまり殺さない。攫ったりもしない。

害にも益にもならないって事で、放置されるらしい。


多くの場合は、そのまま食事もとれずに餓死するらしいけど、盗賊を討伐しに来た騎士達駆け付け保護された。

そのまま町に連れてこられ、孤児院に入れられた。

お母さんも、お父さんも、優しかったのは覚えてるけど、もうあんまり思い出す事も無くなった。

村がどこにあったのかも判らないし‥‥。


ある日いつものようにごみ箱を漁ろうと、いつもの食堂のごみ箱に行ったら、知らない男の子が4人でごみを漁ってた。

4人もいたら、あたしの分は無いじゃない‥‥。


仕方ないので、行ったことないけど違う食堂のごみ箱に行ってみる事にした。

食堂によって、親切なお店と親切じゃないお店があるの。

親切な所は、食べられる物を分けててくれるの。

嫌なところは、腐った物や、食べられないものと混ぜてたりするの。

いつも行ってた所は、新s熱な所で食べられる物を分けて出してくれる所だった。


今回の所はどうかな‥‥と思って見てみると、分けずに一緒に入っている。

あまり親切な所じゃないみたい。

こういう不親切と言うか、無頓着な所は他の子は余り来ない。なのでこうやって誰も取らずに残っている事が多い。


それにしても食べる物が多い。

このヘタも食べれるし、こっちの実も種の周りにこんなに残ってるし、種の中も手つかずだ。

分けられてないけど、ここは良い所なのかもしれない。

食べられるものを分けてると、男の子が1人歩いて来た。


「もう、全部取っちゃった?」

知っている顔だった。

「ハルト?」

「?」

「アリスだよ。」

「アリス‥‥久しぶりだね。」

ハルトは、孤児院にいた頃よりもやせ細った、汚い顔でにっこり笑った。


「ハルトは、いつもここなの?」

「うん。」

「そっか。場所取っちゃったね。結構あったから、一緒に食べよっか。」

「いいの?」

「うん、いいよ。一緒に食べよ。」

「じゃあ、こっち‥‥俺のいつもいる所に行こう。」

付いていった路地で、一緒に食堂の残飯を食べた。


「ハルトも町に出てたんだね。」

「うん。最初はジャックとミーアと一緒にいたんだけど、3人だとご飯集めるのが大変だったから、1人でこっちに移って来たの。」

「そっか‥‥3人分だと、いろいろ食堂回らないと集められないもんね。」

「うん。」


ハルトも1人か‥‥私の行ってた食堂もあの子達が来たから、取れなくなりそうだし、ここにいようかな。

その日はハルトと一緒にご飯を食べて、一緒に寝た。

それから一緒に生活して、いろんな所の食堂を回ったりして生活した。



朝起きたらハルトがすっごい震えてるの!

「寒い」って言って震えてるの!


前に見たことあるの。こうなった子供は死んじゃうって!

そして死んだら大人に、連れて行かれちゃうって!

そんなのダメ!

寒いなら、温めないと!何か食べたら温かくなるはず!

いつもの食堂のごみ箱に行ったけど、まだごみが出ている時間じゃない。

昨日、寄り分けてもう食べられる物は無い。

あ!ごみ箱の下に布が敷かれてる、これならハルトが助かるかも。


ごみ箱の下から布を引っ張り出して、ごみ箱の中から昨日取りこぼした食べられる物を探して、集めてハルトの元に戻った。

ハルトはまだ手足を縮こませて、ガタガタ震えている。

布を頭から被せて、声をかけるけど聞こえてないみたい。

近くに、取ってた来た食べ物を置いた。


もっと食べ物を持ってきてあげるから!

私は走って、違うお店のごみ箱を漁りに行く。

こんな時に限って何もない!

さらに他の食堂のごみ箱に向かってそっちも探す。

また、少し見つけたんで、急いでハルトの所に戻ると‥‥。


ハルトが居ない!連れて行かれちゃったの?

布団もないし、置いてたご飯もない。

ハルト!死んじゃったの?

死んじゃって、大人に連れて行かれちゃったの?


そんなのダメ!

ダメ!


私も、震えだした‥‥。ハルトのように死んでしまうのかもしれない。

ハルト!‥‥ハルト!

私は、いつの間にか寝てしまった。


「アリス?」

ハルトの声が聞こえる。

「!‥‥ハルト?」

「うん。よかった、アリスだったんだね。探そうと思ってたんだよ。」


生きてた!

「ハルト!」

うれしくて飛びつこうと思って、金髪のきれいな男の子を見て止まった‥‥。

「だれ?」


金髪の男の子は、困ったような顔をして、

「ハルト。」

って‥‥でもこんなきれいな髪の子なんて知らない。ハルトじゃない。

「ハルトの知り合い?」

「いや‥‥ハルト本人だけど‥‥。」

私も何となく‥‥ハルトな気はしてるんだけど‥‥なんでこんなに金髪に?

やっぱり違う人?

「ハルトじゃない。」


金髪の男の子は驚いた顔をして、私の顔を見た。

「髪も違うし、顔も違う。」

男の子は、ほっとしたように、

「髪の毛切ったんだよ。それで髪も洗ってきれいにしてきた。よく見てハルトだよ。」


よく見ると‥‥ハルトの目だった。

「ハルトだ。」

私は、ハルトに抱きついてハルトの温かさを確認する。

「ハルト~。ハルト~。よかった‥‥。死んじゃったと思ったの。」

急に涙が溢れて来てどうにもならなくなり、泣き続けた。


ハルトに聞いてもらいたいの。

どんなに心配してたのが、どんなに頑張ったのか。

「ごめんね。朝に麻布かけてくれたのに、なにも言わずにいなくなってしまって。」

「朝、ハルトがすっごい震えてて、前に死んだ子の最後が同じような事になってて、慌てて布探してかぶせて、ご飯も急いで集めて、それでもまだ震えてて、もっとご飯を探しに行って、戻ってきたらいなくって‥‥。

死んで大人に連れていかれたと思って‥‥。」


怖かった‥‥。ハルトがいなくなるのが怖かった。1人になるのが怖かった。

「よかったぁ~。うわああああん。」

そして、私はこう言うの。怖いから‥‥いなくなったら困るから。

「ハルトいなくならないで‥‥。」



朝、起きてハルトが、ご飯をくれた。ナイフも持ってた。

ご飯は美味しかった。


でも‥‥ハルトじゃないって思った。

きっと昨日‥‥。

やっぱりハルトは死んじゃってたんだ‥‥って気が付いた。


ハルトは、すっごい優しい子だった。

きっと自分が死ぬことが判って、私の事を心配してくれたんだ。

だからきっと神様にお願いして、きっと自分の代わりに、今のハルトを私に合わせてくれたんだ。

私を心配して、1人にならないように、私が幸せになる様にって。

ハルトも言ってたもん。「アリスが幸せになるのを祈っている」って。


この人は、ハルトの中のもう1人ハルト‥‥ハルトとは別のハルト。

良く判らないけど、この人はハルトとハルトじゃない人が混ざったようなハルトなのかも。

ハルトは死んじゃったけど、いなくなってないって事なんだよね。


私が、気が付いた事は言わなかった。言ってはいけないと思った。

そうしないと一緒にいられないんだ。


それからのハルトは、やっぱり別人だった。

前の弱くて優しくて、引っ込み思案のハルトじゃなくなった。

でも、新しいハルトは優しくて、ご飯もくれるし、いろんな所に連れて行ってくれる。

すっごい幸せになったの。

本当のハルトは、私の幸せを祈って、私の為に新しいハルトを連れて来てくれたんだ。


私ね。ハルトの事が好き。

新しいハルトの事も好き。

2人のハルトが大好き。


ある日、また新し所に連れて行ってもらったの。

冒険者ギルド‥‥。あるのは知ってたけど入ったのは初めて。

危ない、嫌な大人がいっぱいの場所。


その帰り道、私がハルト見て幸せになってたら、突然ハルトが飛んで行った。

大人に蹴られたんだって気が付いた時には、私にも袋がかぶせられて、訳が分からなくなった。

しばらく、なにが起こったか判らなかった。

でも私攫われたんだって気が付いて暴れたの。

ハルトを助けないと!

私がハルトを助けるんだって暴れたの。


でも全然、暴れても動けなくって、それでハルトから貰った、ナイフを思い出して思い切り突き刺した。

「があ!‥‥このガキ!」

殴られた。何度も何度も何度も。

次気が付いたら、やっぱりハルトに助けられてた‥‥。


ハルトは、私に幸せをくれるの。

綺麗にしてくれるし、お家も用意してくれた。

温かい食べ物を食べれた。

怖い思いしても、それからも助けてくれるの。

ハルトは絶対なの。

私の絶対なの。


私も、ハルトの役に立ちたい。

ハルトに幸せをあげたい。

そして、ず~と一緒にいるの。


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