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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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29.住居


俺とアリスは、先ほどカウンターの中にいた店員に連れられて、南に向かって歩いて行く。

路地を抜けて行き、西通りを超え南西の区画に入って行く。

この辺りは、職人が多く店を構えている場所だ。

職人達も多くの資材を抱えているので、倉庫用の建物もあり、そう言った倉庫の中に今回の倉庫がある。

俺達が借りる倉庫の周りも、倉庫で囲まれており周りはあまり人通りも無い。


「小僧、これがカギだ開け方はわかるか?」

店員は、ケニーさんほど丁重な感じではないが、まあ悪意がある訳ではないので問題はない。


「鉄のカギなんですね。」

「ああ、ケニー商会の商品在庫を置いておく為の倉庫だったから、それなりに貴重品を入れてたからな。自分で開けて見ろ。」

カギを受け取り、扉に向かう。

扉に鉄の突起が付いており、そこに錠前が付いておりこれにカギを差し込み錠前を開ける。

一体型になっているので、錠前だけ外れる感じではなさそうだ。

扉はしっかりしているが木製なので、そっちを壊したらすぐに侵入されそうな気もする。


建物は、下側は石作りで上部は木製の作りで、一般の家よりも背が高い建物になっている。

倉庫としては一般的なようで、周りの倉庫とほぼ同じ作りだ。

窓は無いので、中は真っ暗になっているだろう。

建物は広く、中にバスケットのコートくらいは入りそうなほどの大きさだ。


中に入ると床は無く、地面の上にそのまま倉庫を建てただけって感じだ。

荷物の1つもなく、ただ長方形の場所だけと言う感じだ。


「カギの開け方もわかるみたいだし、もういいか?」

「はい。ありがとうございました。」

「カギは無くすんじゃないぞ。何かあれば店にすぐに知らせるようにな。」

案内してくれた店員さんは、そのまま店の方に戻って行った。


2人で倉庫に入り、扉を閉めると倉庫は真っ暗だ。

けどいくつかの場所から、外の明かりが漏れてくるのがわかる。

と言う事は、逆に夜に中で明かりを点けると外に漏れるって事だ。

手を入れないといけなさそうだな。

今はまだ外は明るいので、魔法で明かりを出し倉庫全体を映し出す。


内側も外装そのままで、内装は一切ない。

天井は高く2階建てくらいの高さはあるんじゃないかな。

本当に倉庫だな。

だが‥‥やっと町に家が確保出来た。


「家を手に入れちゃったね。」

「うん。でも、なんにもないね。外のお家の方がいい。」

「まあ、まだ何も手を入れてないからね。これから手を入れて行くからちょっと待っててね。」


さてどうして行くかな。

光漏れ対策してしまわないと、日が沈んだら魔法の明かりが目立ってしまうのでそこからか。

地面から魔法で、壁を補強して行く。

地下部屋同様に、地面から壁にそって偽大理石の壁を作りだし設置して行く。

大理石のような白い壁になった事で、魔法の明かりが、より明るく見えるようになった。

屋根は三角屋根に作られてるのだが、屋根裏のような場所は無くここからでもそのまま屋根が見える。

雨漏りしてるような跡は残ってないから、屋根から明かりが漏れる事はないだろうけど、壁と同じように屋根に沿って偽大理石を設置していく。

入り口部分は土間のまま残し、それ以外の部分は少しかさを上げた状態で、偽大理石の床を設置した。

これでこの倉庫の内側は、真っ白な壁で囲まれた部屋になった。


次は部屋割して行こう。

生活する為には、トイレは必須だな。

あと寝室もあった方がいいか。

ちょっと考えている事があって、生活環境は最低限で十分だ。検証してうまく行かなかったら、作って行こう。

その為に、隠し部屋が1つ必要になるので、入り口から一番遠い場所は隠し部屋にしよう。

広さは必要無いから、通路程度の幅の部屋を奥の壁一面に作ってしまう。

入り口は入る時に魔法で作るので、入り口は必要無い。


今日ロベルトさんの家で小鹿を解体して貰った時に、場所が狭かった。

ここにハーリさんに来てもらって、解体して貰ったり教えて貰ったりなんて事も出来るかもしれない。

解体用のスペースを用意しておこう。


そうなると水が必要だし、排水も必要になる。そもそもトイレも必要なので、浄化槽は必須か。

この辺は地下部屋でも作っているので、同じように作って行くだけだ。

町の地下も、外の地下と同様に地下水脈もあったので井戸も掘れたし、浄化槽用の穴も空ける事が出来た。

浄化槽からの空気穴は、建物の中を通して屋根に出るように工夫した。

パイプの代わりに、壁面に使っている偽大理石で作っている。


大きいテーブルを2つ作る。

1つは俺とアリスの背丈にあった大きさのテーブル。

もう1つは、ハーリさんの家に会ったのと同じくらいの大きさの物だ。

ハーリさんの家のテーブルで、俺達が解体作業をするのは、踏み台が必要だったので非常に面倒だった。


寝室にベッドを地面から作り出す。

その中に、地下部屋でベッドに使った雑草を細かくしたものを敷いて、さっき服屋で買ったシーツを敷いて今日の寝床を確保する。


「ハルト‥‥すごいね。もうあっちの家と同じ感じになっちゃったんだね。」

アリスには、部屋の隅に椅子を作って待ってて貰ったけど、次々に変わって行く部屋の見た目を眺めていた。

「せっかく借りたので、綺麗に使わないとだね。」

‥‥すごい事に気が付いてしまった。と言うか、家が手に入った事でテンションが上がり過ぎててなんにも考えずにやっちゃったんだけど‥‥。

これって賃貸なんだよね‥‥勝手にここまでいじり倒したけど‥‥良かったのかな。

‥‥普通に借りた訳でも無いから‥‥大丈夫‥‥かな。


「まだもうちょっと作りたい物があるから、アリスはこれで文字を勉強してて。」

「さっきケニーさんから借りたやつ?」

「そうそう、これが順番に文字になっているから、覚えて行くだけだよ。」

って、よく考えたら筆記用具が無いな‥‥文字を覚えるには書くのが一番だから筆記用具は必須か。手に入れないとだな。

とりあえずは、木炭でもいいか。

薪をナイフで薄く切って、これに木炭で文字を書いて覚えて貰うようにしよう。

「これに書いて覚えて行ってね。」

「わかった!アリスやってみる。」


俺は奥の隠し部屋に入って、やってみようと思ってた事を試す事にする。

まずは新たに部屋くらいの大きさの亜空間を作り出す。

その亜空間への入り口を、隠し部屋の奥に設置する。

中に出入り出来る事を確認する。


次に隠し部屋の逆の端に行き、ここにさっきの亜空間への入り口を作る。

そこから入り、さっき作った入り口から出る。

「おっし!いけそうだ。」


何がやりたかったのかと言うと、同じ亜空間の入り口を2つ作ってみたかったのだ。

右側の入り口から亜空間に入り、左側の入り口から出る事が出来るのであれば、入り口が外の地下部屋にあったら、そこからも出られるんじゃないかと考えている。

ワープとは言えないけど、亜空間経由の移動魔法って感じかな。

入り口さえある所なら、どこからでも出る事が出来るはず。

逆に亜空間側から、地下部屋をイメージして入り口を作ろうと思っても、それは出来なかった。


亜空間で財布を作ったり、リーゼに教えて貰った時に中に入ったりした結果思いついた考え方だ。


魔法は基本的に触手を伸ばして、そこで魔法を発動する。

亜空間魔法によって作る空間は、今いる空間とは別の空間に作られた部屋だ。

別の空間ではあるのだが、場所は俺の近くにある。

なのでこの空間のどこにいても、その空間への入り口を作る事が出来る。

この入り口を追加して行く事で、いろんな所に移動する事が出来そうだ。


もう少し具体的に言うと、今ここで亜空間の入り口を作る。そこには魔法の触手が繋がっている。

ここから俺が移動して、町の外に出たとしよう。

普通に触手と考えると、南門を通って西通りから延々伸びてここに繋がっているって事を想像するだろう。

でも実際にはそうではなく、俺の亜空間を通って、亜空間側から入り口に触手が伸びているだけになる。

なので検証は必要だ。せっか開けた入り口が、この空間での距離によって、閉じてしまったりする事はないだろう。


この魔法は非常に有用ではあるのだが、デメリットとしてはその場所に行かないといけない事だ。

あと入り口を開けていると、青紫色に光ってしまう事かな。

その場所に行かないといけないのはどうしようも無いが、光ってしまうのは隠し部屋に置く事で誤魔化す事が出来るだろう。

明日、地下部屋に行ってから検証して、もう南門から外に出なくて済むようになりそうだ。


これで検証も含めて、一通りの作業が終わったので、日が沈む前に、夕飯と明日の朝ご飯を買いに行く事にしよう。

「アリス、食事を買いに行って来るよ。」

「アリスも行く!」


未調理で食べられる食料はパンしか手持ちに無い。

スープを、亜空間に入れて置けばとちょっと後悔だ。

町で料理を食べられる環境になるとは思ってなかったので、地下部屋に置きっぱなしにしてきてしまった。


「ちょっと遠いけどナシ屋に行こうと思っているんで、アリスは文字覚える続きをしててほしいかな。

急いで行って来るのですぐ帰って来るし。」

なによりも襲撃現場に行く訳だから、昨日の今日では危ないし、アリスにとっても嫌な記憶が甦ってしまうだろう。


「アリスもナシ買いたい!アリスも行く!」

「どうして行きたいの?」

「アリス、ナシ美味しかったから。」

「そっか。じゃあ、ナシいっぱい買って来るね。明日の朝もナシ食べられるくらいいっぱい買って来るよ。」

「うん!」

「じゃあ、行って来るね。」


俺が倉庫の扉を開けようとしたところで、

「え!ハルト、アリスも行く!」

‥‥誤魔化せなかったか。

「俺が今から行く所は、昨日襲われた所なんだよ。なのでアリスを連れて行くよりも、俺一人で行ってすぐに帰って来る方が良いと思っているんだよ。」

「じゃあ、ハルトも危ないんじゃないの?」

「危ないから一人でって事じゃなくて‥‥。あそこにアリスが行くと、昨日の事思い出しちゃうから、あまりいい気分じゃないだろうからね。」

「アリス大丈夫だよ。ハルトと一緒に行きたい。」

「他の場所ならいいんだけど‥‥。俺もあまり行きたくないんだよね。

だからすぐに行って、すぐに帰って来たいんだ。それには一人の方が早く動けるから‥‥。」

「‥‥そっか。すぐ帰って来るの?」

「うん。アリスが文字を覚えるより早く帰って来るよ。」

「‥‥わかった。待ってるね。」


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