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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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28.ケニー商会


次はケニー商会に向かうので、西通りから1本北の道に向かって行く。

この辺りは北西区域で、お金持ちの子供や商人など、町の中でも裕福な人達の多い地域になっている。

服装もそれにならって、木綿の服の人がほとんどで、靴もほぼ全員が履いている。

フードを被っている人も珍しくない。


俺達も、もうここで歩いていても違和感がある恰好では無いようだ。

浮浪児と言われて、道行く人に突然殴られたり、衛兵の見回りに見つかって、路地に投げ捨てられたりと言った事もないだろう。

まあ修道服という事で普通の子供と言う扱いでもないのかも知れないけど‥‥。

ってこっちの宗教の知識が無いから、修道士がどういう立場かはわからないけど、ハーリさんの態度からしてそれほど問題がある恰好でも無いのだろう。


やっと一安心だ。結構俺は気持ち的に追い詰められていたんだろう。

周りの大人がほとんど敵って状況で、昨日には襲われ、アリスも攫われかけるなんて体験をすると、精神的に大人の俺でも緊張を強いられていた。

気持ちは随分楽になった。


「ハルト!アリスすごい服きてるよ。ほら‥‥手のとこフリフリできる。」

「ローブってはじめて着たけど、ちょっとワクワクするね。」

なんだか、ゲームとかの魔法使いになった気分だ。

後は、大きな杖でも手にいれれば完璧だ。

「ハルト、この服、温かいし、柔らかいし、気持ちいい。」

アリスもお気に入ってくれたみたいだな。


衣食住の衣食は確保出来た。残りは住の部分だな。

町に家でも借りられればいいんだけど、どうにかならないかな‥‥。子供で契約は出来ないだろうから難しいかもな。

まあこれは機会があればって感じだろう。

外には地下部屋があるから、冒険者ギルドのギルド証なんかがあればそれでもいいんだろうしな。


ケニー商会に向かう途中で、シカ肉とか服とか大物を手持ちで持っていたので、路地に入って亜空間に収納して身軽になっておく。

代わりにヘビの頭を出して、布袋に入れ手持ちにして準備しておく。


もうそろそろ、ケニー商会の近くに来たみたいだ。

サーチの魔法で、ケニーさんの居場所を探してその建物に向かっている。

ケニーさんがいる建物の前に来たが、これがケニー商会なのかどうかはわからない。

看板なんて便利な物は、この世界の町にはないようだ。まあ、あった所で文字が読めないので俺には意味が無いのだが‥‥。

その辺りの人に聞いて確認するのが正解なんだろうけど、どうせ店の前まで来てるので中で聞いた方が早い。


ケニーさんがいる建物は、間口が開いており外から見ても店になっているので、入るのは誰でも大丈夫なんだろう。

中にはカウンターがあり、その奥に店員が控えている。

カウンターの奥には、商品っぽい物があるが、なんの商品かまではここからではわからない。


俺とアリスの2人が店の中に入ると、店員の男の人が声をかけてくる。

「いらっしゃい。」

「ケニーさんはいますか?」

「いるが何の用だ?」

「ヘビの頭を購入して貰えると言われたので来たんですが。」

「ヘビの頭を持って来たのか?ちょっと待っててくれ。」

店員は、奥に入って行く。


ここがケニー商会で合っているようだ。

すぐに奥からケニーさんが出てくるが、俺とアリスを見ていぶかし気に首をかしげる。

「ハルトです。」

俺は名乗りながら、フードを外す。


「ああ!ハルトさんでしたか。昨日と服装が違うので気が付きませんでした。」

「フードもしてましたしね。」

「よくいらっしゃいました。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「ヘビを狩ったので、買い取ってもらおうと、頭持ってきました。」

「昨日の今日で、もう狩ったのですか?」

「今日狩って来ました。2匹いるので買い取って貰えますか?」

「もちろんです。確認させていただいていいですか?」

俺は、さっき買った布の袋の中に手を入れ亜空間から、ヘビの頭を2つ出してケニーさんに渡し確認してもらう。

「確かに、黒マダラヘビの頭ですね。毒腺にも問題ありません。」

ケニーさんは、まだ納得いかないような顔で見ている。


「もしかして‥‥。私はすごい原石を見つけた事なんでしょうか。ハルトさん、先日もお聞きしましたけど、このヘビはハルトさんがお一人で狩ったのですか?」

「はい。俺が一人で狩りました。アリスも一緒にいますけどね。」

「少し奥でお話させていただいていいでしょうか?こちらにどうぞ。」

「はい。アリスも行こう。」

「ハルト。大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。お支払いさせていただくのと、少しお話を聞かせて貰おうと思っているだけですから。」


俺達は、ケニーさんに勧められるままカウンターの中に入り、商品が並べられている場所のさらに奥に入り、カウンター側から陰になっている場所に入って行く。

そこにあったテーブルの椅子を進められてアリスと一緒に座る。

「ではまず先に、清算しておきましょう。黒マダラヘビの頭2つで、銀貨1枚で買い取らせていただきます。」

「ありがとうございます。」

ケニーさんから銀貨1枚を受け取る。


今の手持ちは

銅貨 : 129枚

大銅貨 : 26枚

銀貨 : 5枚

銅貨100円換算で、9万8,900円になった。


さっき店番をしてた人が、俺達に飲み物とおやつっぽい物を出してくれた。

「芋の干した物、と水です。どうぞ。」

「いただきます。」

「いただきます。」

俺は干し芋に手を出して口に運ぶ。味は‥‥思ってたのと大分違う食べ物だった。

サツマイモで甘いと想像して食べてしまったけど、じゃがいもで塩の利いたしょっぱいおやつだった。

飲み物は、普通の水だった。


「ハルトさんは、前からヘビ狙いで狩りをされてたんですか?」

「いえ、ヘビだけじゃないです。」

「と言う事は、今日の2匹は私と出会って話を聞いて、狙っていただけたって事ですか?」

「そうですね。買い取っていただけると話だったし、今日ここに来るつもりだったので狙いました。」

「狙っても2日で3匹なんて、1人で狩れる数では無いはずなんだが‥‥なにか手を持ってそうですね。

どうですか、我が商会の専属になりませんか?」

こっちも専属の話になったのか‥‥。人気なのは嬉しいけどノルマは抱えたくないし、アリスの事もあるのでテッド商会と同じ感じかな。


「前にも話たようにヘビだけ狙っている訳じゃないので、常にヘビを納品と言われても難しいかもしれません。」

「なるほど‥‥。他の獲物でも稼ぐって事ですか。では、今後も我が商会にヘビの頭を売りに来てくれると言う契約をしてはいただけませんか?」

「え~っと、それって契約まで必要な物なんですか?」

「そうですね。昨日お話したように黒ヘビは、買い占められています。

買い占め独占する事で、値段を吊り上げ大きな利益を得ています。

もしも買い占め出来ずに、独占状態が崩れた場合、敵対的な行動にも出かねません。

私も麻痺毒をこれから販売して行くので、狙われる事になるでしょう。

ただ私の場合には同じ商会の為、直接なにかが出来る訳でも無いので、いやがらせ程度では無いかと思っています。

基本仕入れは、自分達で行っていますので、やれる嫌がらせも限られるでしょうがね。


でも、ハルトさんに対しては容赦なく行う事が出来るでしょう。

「例えば人を雇って襲わせる」とか、「獲物の横取りの為に付け狙う」とか、「脅す」とかでしょうか。

仕入れ方法に関しては、秘密にします。きっと子供から仕入れているとは思わないとは思います。

しかし、万が一見つかった場合に、ハルトさんが単独であるよりも、私の商会の一員であると言う形にしていた方が、私も守りやすいのです。

ただの荷物配達であると思われるので、直接なんらかの被害に合う事もないでしょうしね。」


確かに、力ある商会に狙われるなんて避けたいな。

ケニーさんは、信用出来るだろう。冒険者ギルドでの値段は確認していないが、ヘビ頭の値段も嘘でも無いだろう。

いまさらそんなすぐにバレるような嘘を付くような人でも無いと思う。


でもそれだけなら、ケニー商会で無くてもいい。

他にも、商会は多く存在していて、独占に食い込めるなら、もっと条件の良い所もある。

だって大手の商会が独占して利益を得ているような商品なら、他の商会でも大きな儲けが見込める訳だからな。

多分俺に渡している金額の何十倍と言う金額で、麻痺毒は売れるのだろう。しかも飛ぶように売れる。

ならば、もう少し俺側の利益を増やして貰ってもいいかもしれない。

ちょっとお願いしたい事もあるので、それを条件にしてみよう。


「なるほど‥‥。それは確かにメリットですね。でもケニー商会以外の所に売られないようにって意味もありますよね。」

「まあ、確かにそれもありますね。買い占めしている所以外で、薬剤系の販売をされている商会では売れるでしょうからね。

契約のもう1つのメリットとして‥‥そうですね、金額を1割上げるって言うのはどうでしょうか?冒険者ギルドの金額にさらに1割って金額になります。」


「契約の対称は、ヘビの頭だけで良いんですよね?ヘビ頭以外は他に売っても良いって事ですね。」

「ええ。ヘビの頭だけで結構です。」

「後はお金は嬉しいんですけど、お金じゃなくって別の物が欲しかったりするんです。難しければお金でも結構なのですが‥‥。」

「何でしょう。」

「俺達が住めるような場所が欲しいと思ってます。普通の家でもいいんですが、出来れば倉庫みたいな所が嬉しいです。

生活環境は整ってなくて大丈夫なのでどこか紹介して子供の俺達の代わりに借りて貰う事ってできませんか?」


「倉庫でしたら、商会で持っている倉庫で空いている所があります。もう必要無いので売却しようとしていた所ですので、そこで良ければ今日からでもお貸しする事が可能です。」

「それを借りるなら、どれくらいの金額になるのでしょうか?」

「そうですね。10日で銀貨1枚ですが、いかがでしょうか?」

やっぱりそれくらいはするよね。


日本では賃料の計算って、2年で売却値段になるのが目安なので、月3万と言う事は2年で72万程度か。

安くしてくれていると考えると、売却を100万程度で考えていると言う事かな?

足りるのなら、いっそ購入したい所ではあるけど全然足りないな。

10日で銀貨1枚なら無理なく稼げるだろう。ウサギ1匹もしくは、ヘビ頭2つだからな。


「お願いする事にします。」

「こちらこそこの条件で契約いただけるのでしたら、ありがたいです。それに倉庫も売却するよりも貸し出せる方が助かりますし。」

思ってなかった衣食住の確保完了だ。

これで、冒険者ギルドの方は急がなくても良くなった。

何よりも、今日あのトイレ臭い路地で寝なくて済むのは非常に嬉しい。


「では契約書を作りますので、少々お待ちください。」

「はい。一応ヘビ頭の方の契約と賃貸の契約は分けて契約書お願い出来ますか?」

「もちろんです。ただヘビ頭の方の契約書にも、倉庫賃貸も条件である事は記載しておきます。

書いてないと、こちらから賃貸契約を反故にした上で、ヘビ頭の契約だけ有効にすると言う事が出来てしまうので‥‥。」

「そうですね。よろしくお願いします。」

まあ逆に書かれて無かったら、ヘビ頭の契約やめても倉庫借り続けられると言う事も出来るんだけどね。

正直な契約の方がいいので俺としては了承する。


ケニーさんは、契約書を作る為に執務用の机に座り直し、紙のような物に契約内容を記載している。

俺は契約書が出来上がるまで回りを見まわしたり、しょっぱい干し芋を食べたりしながら待つ事にする。

ここからは、カウンターの中に置かれていた商品が良く見える。

ほとんどが壺に入った製品で中身が良く判らない。

俺が両手で抱えるくらいの大きさの壺や、小瓶のような大きさの壺など数種類の壺があるので、それぞれ違う製品なんだろう。

ヘビ頭から作った毒と言うのもこの壺のどれかなんだろう。

壺以外には、道具類っぽい物も置いてあるし、お土産物のような木彫りの飾り物っぽい物や、紐に飾りが付いただけのペンダントっぽい物も置いてある。


「では契約書の内容としましては、

・ヘビを狩って頭部を手に入れた時には、ケニー商会に販売する事

・金額は冒険者ギルドへの販売価格と同額である

・ケニー商会の倉庫を、10日毎に銀貨1枚で貸し出す

と言う内容になります。よろしいでしょうか?」


文字を読めないので、数字と通貨の文字だけしか確認出来ない。なので契約書の内容は言われた事が書かれていると信じるしか無い。

契約書の効力がただの覚書程度なのか、違反したら指名手配されるような強固な物なのか‥‥。

まあその辺りを考えても仕方ないか。ケニーさんが俺をハメてもなんの利益もないだろうし、今までの対応も真摯な物だったので、ここは信じて行こう。

「はい。問題ありません。」


「では、サインをお願いします。」

差し出して来た契約書は、紙かと思ったが木を長方形に切ったただの板だった。

紙の代わりに板を使ってるんだ‥‥。

まあかさばるけど、頑丈だしきっと安いんだろう。


なんの棚かと思ってたけど、先ほどケイニーさんが契約書を書いていた机の隣の棚には、綺麗にこの木の板が収められていた。

契約は、この木の板がメインで使われてそうだ。


「そういえば、自分の名前の文字も知らないや‥‥。教えて貰っていいですか?」

「そうなんですね‥‥。ハルトって文字は、これです。」

「ありがとうございます。はいサインしました。」

「今後ともよろしくお願いします。」


「ケニーさん。」

「はい?」

「文字覚えたいんですけど、なんか文字覚える為のなんかあったりします?」

「商人の子供に文字を教える為に使う、木板があります。よろしかったらお貸できますよ。」

「ぜひお願いします。文字の読み書き出来ないと不便なので。」

「そうですよね。こちらを使ってください。それなりに価値のある物ですので、使い終わったら返却して貰ってもいいですか?」

「はい。写してしまいますので、写し終わったらお返ししますね。」


「倉庫の方は、そもそも売るつもりで準備していましたので、中身は空っぽです。何時からお使いになりますか?」

「今日からでいいですか?」

「了解しました。私は店を離れる訳には行きませんので、代わりに店の物に案内させます。あと、先に家賃のお支払いもお願いできますか?」

そっか、これからは定期的にお金を払わないといけなくなるんだな。

「ある程度先払いしておいていいですか?30日分先に払っておいていいですか?」

「ええ、結構ですよ。」

銀貨3枚と交換で、家賃の支払い証を書いて渡してくれた。

「これは家賃を支払ったって言う証明になりますので、無くさないようにしてください。」

結構しっかりしてる感じだな‥‥。商人だからなのかな。


今の手持ちは

銅貨 : 129枚

大銅貨 : 26枚

銀貨 : 2枚

銅貨100円換算で、6万8,900円になった。


「では、またヘビ頭が手に入りましたらお願いします。」

「了解です。近い内にまたヘビ頭確保してきます。」

「お待ちしています。」


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