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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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18.襲撃


もうマントの中にウサギを隠し、後は逃げるだけだ。

「アリス行くよ!」

「うん!」

俺達は、2人で走って逃げ出した。

それと同時に、サーチで周りの状況を確認する。

冒険者ギルドのスタッフが騒いでいるので、助けようと俺達を捕まえようとするやつが出るかもしれない。

それ以外に、こんなにウサギ、ウサギと騒がれれば、それを狙う奴も現れるかもしれない。


売れなかった上に、追われるだけなんて赤字な状況じゃないか。

1つだけわかったのは、「冒険者ギルド使えねぇ~。」って事だけだ。

皮屋さんだけでなく、肉屋さんなんかもあればいいんだけど、ハルトの記憶でも見た事ないんだよな‥‥。

これも皮屋さんを教えてもらう時に、ハーリさんに一緒に聞いてみよう。


とにかく今は逃げないと、アリスの手を引っ張り素早く冒険者ギルドを出て東通りを走って行く。

後ろから、さっきの女が「あたしのウサギ返せ!」とか、「クソガキ死ね!」とかう言っているけど、ギルド出てまで追いかけてくる様子はなさそうだ。

でも問題はそれで終わらなさそうだ。

走りながらサーチしてみると、俺達と同じ速度で通りを走っている奴らがいる。

いや子供の走る速度なので早足程度なのかもしれないが‥‥。


住んでる場所を特定されるのは嫌なので、いつもの路地の1本手前に入る。

そのまま突っ切り、追っ手を確認すると2人だ。

路地に入った所で一気に差を詰めて来たが、こっちも追い風の魔法を使って速度を上げてなんとか路地を抜け露店が並んでいる通りに出た。


どうするかな‥‥これ以上体力を消耗しても仕方ない。

逃げて逃げ切れる感じではないだろうしな。

助けを求める所もないだろうし、味方はいない。

ここからならハーリさんの所にたどり着ければ、もしかしたら守って貰えるかもしれないが、関係なく襲撃される可能性もあるので巻き込めないな。


「はぁ、はぁ、ハルトぉ。」

アリスもそうだが、俺ももうそろそろ息が上がりそうだ。

「アリス、ここまででいいよ。」

「はぁ。はぁ。わ、かった。」

アリスは結構息を切らしてた。


足を止めると、それこそ襲うタイミングになってしまうので、そのまま歩きながら呼吸を整えていく。

サーチすると、徐々に距離をつめながらタイミングを見ているようだ。

さっき路地で追い風を使って大人の全速力くらいの速度で走ったので、慎重になっているのかもしれない。


今振り向いて魔法で何とかできるのかもしれないけど、いろいろと問題がある。

酸欠の場合、10秒ほど酸欠にさせないとダメっぽいので、相手が10秒ほど立ち止まってくれないと出来なさそう。

さらに突然大人が2人倒れると、それはそれで何だか違う噂になってしまうかもしれない。

他の方法で撃退する事は出来るだろうけど目立ちそうだ。


酸欠がうまく行ったとしても、ギルドで傷無しのウサギを持ってた、それを追って行った大人が突然倒れる‥‥と言うのはカンの良い人なら、魔法を持ってると言う所まで予想されるかもしれない。

なので戦っている風を装い、何かわからないけど子供が仕掛けた事で、気絶して倒れたって形にしたい。

それなら「強い子供なんだ」程度になるし、うまくいけば子供にも負ける弱い大人って事にもできるかも。

襲い掛かってつまずいて、コケて気を失ったって言う風にみられるのがベストだな。


左後方と右後方からそれぞれゆっくり、俺達との間合いを詰めて来てる。

俺の右側にはアリスがいるので、本命は左後方のやつだろう。

逃げようとしたら、右後方の奴が回り込む的な感じの作戦かな?


俺の考えた作戦はこうだ。

左後ろの奴の動きはわかるので、ウサギを盗むタイミングを察知してウサギを引き戻し、取りそこなった所で足を引っかけて、転んだ風を装いながら酸欠にさせる。

そして右後方から来たやつも、なんらかの攻撃を仕掛けた時点でこけたように見せて酸欠させる。

そして、ダッシュで逃げる‥‥という作戦で行こう。


マントから、ウサギを出し見えるように左腕に持つ。

もうあと、数メートル程だ‥‥走り出した。走り去りながら奪う感じかな。


俺は冷静にタイミングを計って、俺の真後ろに来た所でウサギを引き戻し、男が俺の横を通り過ぎるタイミングを待った。

「がっ!」

すごい音がした。


俺の背中にすごい衝撃が来て、肺の中の空気をすべて出し切って体が宙に浮く。

俺の体がすごい勢いで飛ぶ。

事故にあった時に見える、ゆっくりした景色が流れる。


俺は空中で横向きに回転しており、意図せず振り向く事ができた。

2人の男がいた。はっきりと姿が見えた。


そしてすぐに落下する。

5メートル以上飛んで露店に突っ込み、露店に並んでいた商品をぶちまけそのまま地面に落ちる。

「きゃーーーーー」

大きな声で露店の店員が叫ぶ。


「誰か!衛兵を!はやく!!」

俺は露店に直撃したようで、露店にあった商品に当たったおかげで衝撃は大分吸収されたんだろ。

状況が呑み込めず、立ち上がろうとするが右腕が動かない。

左腕で体を支えて、足を動かそうとするがまったく感覚がない。


そしてすさまじい痛みが体の全体に走りたまらず叫ぶ!

「がぁぁぁぁ~。」

そして、俺は意識を失ってしまった。




腕を乱暴に引っ張られる感触がする。

何度も、何度も、しつこく引っ張られる。

俺の持っている物を引っ張って取ろうとしてるんだろ‥‥。

うすぼんやりとする意識の中で、渡してはいけないと思いしっかりと握る。

今度は腕に強い衝撃が走り、左腕を殴られたんだと認識する。

その衝撃で意識がはっきりしてきた。

俺は目を開けると誰かが、俺の腕からウサギをもぎ取ろうとしているのを見た。


その顔に見覚えがある。

何度も俺の左手を殴って、力が抜けた所でウサギを奪い取っていく。

左手に力が入らない、右腕も感覚がない、足の感覚もなく、背中が熱くてたまらない。

息もまともに出来ないし、体中の筋肉が全部固まったような感覚。

「ぐぅううう。」

痛覚が戻って来ると、体の痛みに悶える。


動けねぇ‥‥。

意識を失ってたのはほんの少しの時間だったみたいだ。


「女の子が、攫われたぞ。」

遠くの方で、そう聞こえた。

くそ!

すぐさまサーチすると、アリスが離れて行っている。


アリスを助けないと!

「がぁぁ!!!!」

気合を入れて叫んでみたけど、体はまったく動かない。

記憶をたどると、飛ばされた時に見た光景では、1人はアリスの首に後ろから腕を回して、片手には麻袋のようなものを持っていた。

もう1人は、サッカーでボールを蹴った後のような恰好をしていた。


くそ!!また俺の油断だ!

見つからないようにとか下手な考えをせずに、アリスも危険に巻き込むくらいなら本気でやるべきだった。

アリスを助けないと!!


やった事は、ないけど関係ない。回復しないと!


目をつむるとまた意識が飛んでしそうになる。

目を開けたまま集中する。体の中の魔力を意識する。


回復のイメージは分からないから、まずは自分の状態を確認するように体全体に魔法を流す。

サーチの体内版のような感じだ。

腰部分から下に、魔法が流れにくい。背骨が折れて神経を圧迫し、下半身の感覚がなくなっている。

ここに魔力を集中し、元に戻るイメージを与え続ける。


少しずつ背骨が回復していくのが判り痛みが少しマシになっていく。

背骨が正常に戻ったら、足の各所に痛みが発生する。だが足は動く!

左手を地面につけ、何とか立ち上がる。


そこでせき込み血を吐いた。肺もやられてる。

いや、いま無理に置きかがって折れた肋骨が傷つけたのか。

魔法を流し肋骨を元の位置に戻し、肺の傷を修復する。


右腕は肩が脱臼しており、まったく反応がない。次は右腕に魔法を流す。

流しなら、アリスがいる方向に走っていく。

体中の筋肉も、ガチガチに委縮してしまいまともに動かない。


少し無理したら、すぐにこけてしまいそうだ。だが、そんな事は言ってられない!

路地に入った所で、右腕を壁に当て押し当てる。

魔法と相まって、脱臼が入り大声を上げる

「うごぁ!」

痛みがすさまじく思わずしゃがみこんでしまう。

その勢いで肺の中にたまってた血も吐きだす。


「アリス!!」

気合を入れ立ち上がり、アリスを追う。

痛みをこらえながら、魔法で自分のケガを癒しながら路地を走っていく。


アリスは、俺達の住んでいた路地方面に移動して行っている。

水場近所から南に向かっているようだ。

移動しているならまだ仲間と合流している訳ではないだろう。まだ間に合う。

もっと速くもっと速く!


魔法で風を後方から吹かせて、追い風で追いかける。

さらに、風を強くする。

足が追い付かない。

でも、もっとだ!さらに風を強くする。

ほぼ風で飛ばされている状態で進んで行く。


路地を抜け、水場を抜け、次の路地に入った所で見つけた。

「見えた!」

冒険者風の男が、アリスの頭から腰くらいまで袋を被せ、左腕に抱えて移動している。

右足を引きずっているように見える。

そのままの勢いで、その男に体当たりする。


男は飛ばされ、アリスはその勢いで地面に落とされた。

俺も右肩がまた脱臼したが、まずは足止めできた。

俺は倒れたままで、男周辺を広範囲に酸欠状態にする。


「アリス!」

俺ははいずりながら、アリスの元に行き袋をナイフで切って確認する。

アリスは気絶しているのか返事はない。

外傷は‥‥頭や顔周辺に殴られた跡がいくつもある。


袋の中に入れられた時に抵抗したのか、走りながら殴られたのか分からないが、すぐさま自分にしたように回復の魔法をアリスにかける。

アリスの顔に手を当てて魔法を流す。

だが、俺自身にやったのと違い、魔法がなかなかアリスの中に入って行かない。

焦りながらも、押し込んで行くように魔法をアリスの体の中に入れて行きサーチする。

頭のケガは大した事なさそうだが、顔の骨はいくつも骨折しており、肋骨も数本折れていた。

すぐさまそれぞれを回復して行くのだが、魔力が中々アリスの中に入らず時間がかかる。

俺自身のケガのせいなのか、そう言う物なのかわからないが、時間がかかる。


誘拐犯の方を見ると、完全に気絶しており動く事もなさそうだ。


アリスのケガは、治ったがきっと怖い思いをしただろう‥‥。

許せない‥‥。こいつら‥‥。

頭に血が上っている俺は、このまま喉をナイフで切ってしい殺してしまおうとナイフを手に男に近づいた。

俺も殺されかけたんだ‥‥こいつ死んでもいいだろう。

いや‥‥一思いに殺してしまっていいのか?拷問するか‥‥いや、拷問して知りたい情報なんてない。


ナイフを持って近づくと、見た事のあるナイフを腰に刺していた。

これはアリスに渡してた石のナイフだ。

奪ったのかと思ったが、よく見ると右足の付け根部分から血が出ている。

‥‥アリスが刺したのか‥‥それで殴られたって事か。

子供を誘拐するという事は、誰かに売る為なのに顔を殴るなんておかしいと思ったら‥‥。

でもおかげで追い付いたという事かもしれないな。


殺すにしても、装備や衣服は剥いでしまおう。

血で汚れる前に、脱がすのがいいな。

金も持っているかもしれないし‥‥。

アリスが助かった事で、少し余裕ができたのかもしれない。


重かったので、追い風の応用で風で持ち上げたりもしながら、武器を外し、靴や服を脱がせ、装飾品を外し、下着も脱がして丸裸にした。

はぎ取ったらとりあえず亜空間に収納していく。整理は後だ。

冒険者ギルドの物だろうか、ドッグタグのようなものを付けていた。

タグは木製なので使いようがないし、死んだ後に誰が死んだのかわからないのは衛兵が困るだろうからそのままだ。


殺すよりも悲惨な状況を思いついた。

殺さずに部位を欠損させる。

暴力の世界で、暴力で生きて来た強者が、弱者になった時、生きながら絶望するんじゃないだろうか。


例えば目を潰すのはどうだろう。

顔を見られているからな。‥‥でもそれってすっごいグロだよな。

それに騒ぎになりそうだ。


手足を切断‥‥いや、神経だけ切ってしまえばいいか。

下手に欠損すれば、義手や義足がつけられるが、そのまま残っていればそっちの方が動きにくくなる。

それに血が出ないのでグロくない。

さっき回復した時に思ったが、神経だけ切るのは出来そうだ。


死んでしまった仲間は諦めるが、手足が不自由になった仲間は、足手まといとして生きてくれる。

まあ仲間意識があるのならばだが‥‥。

やったらやり返されると学習し、仲間に伝えてくれるのならばそれもいいかもしれない。


‥‥ちょっと待てよ‥‥。

手も足も動かせなければ、後は完全介護生活だ。

それって仲間でも、介護してくれるか?

食事さえ一人で取れないような仲間は、死んだとして見捨てられそうだ。

片手残すか‥‥。


う~ん。1回整理。

目的は修復不可能な状態で弱くする事。

ただし仲間に見捨てられない程度にしないと絶望にならない。


手潰すと言うのは、自由に歩き回れるが扉さえ満足に開けない。

足潰すと言うのは、自由に歩けまわれなくなるけど、手仕事は出来るし介護はあまり必要ない。

どっちも戦闘はまったくできなくなるし、役立たず扱いされるだろう。


手が動かない人と戦うよりも、足が動かない人と戦う方が楽そうだ。

足が動けば、避けられるし体当たりもできる。

足が動かなければ、避けられないし方向転換さえ難しい。


手よりも足だな。

歩けないけど、自分の事はある程度できる程度。

獣とかにやられて歩けなくなる人は居そうだけど、どうやって生活しているのかな?

ハルトの記憶をたどっても、そういうのは知らないようだ。


まずは左足で試してみよう。左足の付け根くらいに魔法を通す。

アリスに回復魔法をかけた時のように、浸食するように徐々にしか魔法は通らない。

余り時間はかけられない‥‥なんかいい方法はないかな。

試してみるか‥‥魔法の触手を杭のように、尖らせて足の付け根部分に勢いをつけて刺す。すると思った通り勢いの分だけ中に一気に入り込んだ。回復やサーチするなら全身に巡らせないといけないのだろうが、今回はたった1本の神経を切断するだけの魔力でいい。

「見つけた。」

左足の神経を見つけたので、そこを熱の魔法で焼き切る!

「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

誘拐犯は意識が覚醒仕掛けてたのか、痛みで意識が戻ったのかわからないが、大声を上げてのたうち回りだした。


これは人が来そうだ。

「急いで離れないと!」


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