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「それと、フェリス誤解をしておるようじゃがな・・・。
この子は、貴族では無いが、魔法使いじゃ。
しかも、強大な魔法を要しておる。
多分1人で軍団にも匹敵するほどの・・・。」
「嘘ですわ。そんな魔法使いなんて、聞いた事ないですもん。
しかも、子供じゃないですか。それこそ、伝説の亜人でもないかぎ・・・り?」
「本人は否定しておるのじゃがな・・・。」
「いや、ほんとに亜人じゃないんだけどね。
まあ、それでも仕方ないか・・・。
余り力を誇示するような事はしたく無いんだけど・・・。
侯爵、さっきの証拠ここでなら出してもいいですよね?」
「・・・なるほど、頼む。」
俺は、みんなから離れ壁際に進み、そこに亜空間を開き、入っている魔獣を大量に排出する。
ここにおける程度の数なので、千に満たない程度だが一気に出す。
「魔獣!どうやって!?」
「侯爵、まだ千くらいしか出してませんが、これで十分ですよね?」
「・・・ああ、もちろんだ。」
侯爵は、予想していたんだろうが、それでもあまりの数の魔獣に動揺を隠し切れていない。
それでも気丈に、魔獣に寄って行って、魔獣を見渡す。
「これほどの数の魔獣の死体を見た事は無いな・・・。
しかも必要な所に1か所だけ、傷が入っているだけで、他はほぼ無傷だ・・・。
これほどの、獲物の状態は見た事が無い。」
フェリスは、もう何もしゃべる事が出来ない状態で、地面に座っている。
クシェルも、ケニーさんの後ろに移動しているのだが、魔獣に目を奪われている。
ケニーさんも、同じような顔している。
そういえば、魔獣狩ってるのは話てるけど、こんなにも数を見せたのは初めてだった。
「素材はいろいろ使うので、出来るだけ気を付けて狩ってます。
もういいですか?収納しますね。」
「・・・ああ。」
俺は、出したのと同じように、一気に亜空間に収納する。
漏れ出した体液と、魔獣の死骸の臭いがあたりに充満する。
とりあえず、これで2人は納得してくれるだろう。
「じゃあ、フェリスさん。採寸はクシェル達がやってくれるので、準備が出来たら、
声をかけてください。
ケニーさん、後はお任せしてもいいですか?」
「はい。分かりました。」
俺が居ると、侯爵も、フェリスも委縮してしまうかもしれない。
力を見せると弊害に、怯えられる・・・。
これは逆に不利になる可能性もあるので、出来れば避けたいのだが、
この協力関係では、遅かれは早かれ、俺の力をどこかで見る事になるだろう。
それなら、自分達に向かないと思って貰うしか無いので、中途半端な噂なんかではなく、
明確に力がある事を見せた方がいい。
と・・・後付けの自分への言い訳なのかな。
だって、見せないと依頼を果たせそうになかったから・・・。
「では、侯爵。俺は戻らせてもらいます。」
「ああ。今後の連絡は、そのケニーにと言う事で良いのか?」
「そうですね。ケニー商会へ連絡して貰えれば、俺に伝わるので、それで結構です。」
「分かった。」
「アリーヤ。貴族門通らないとだから、一緒に来てもらっていい?」
「はい。」
俺は、アリーヤと一緒に、侯爵家を出て、貴族門を通り拠点に帰った。
後は、ケニーさんに任せておけば、何とかなるだろう。
問題があれば連絡来るだろうし、あれだけの魔獣を見せられたら、
変な事をしようとは思わないだろう。
拠点から家に戻ろうとした時に、アリーヤが、
「ハルト様、あたしは師匠に紹介してもらった、情報屋に会ってきます。
王都にも、情報網を作っておきたいですから。」
「今日は、夜じゃないんだ。何かあったらすぐに連絡してね。」
「はい。とりあえず顔合わせだけなので、そんなにかからないと思ってるんで、
すぐ戻ります。」
「了解。」
「は~い。じゃあ、いってきま~す。」
俺は一人で家に帰り、時間が出来たので、いつもの工房で作業を行う。
前回の検証で、スイッチが出来たので、通信機にスイッチを取り付けようと思う。
今は、しゃべったらみんなに聞こえるので、利便性が低い。
今日は、特に誰にとかって言うのがややこしかった。
なので、これをスイッチにする。
腕輪を拡張して、ボタン付きにしてみた。
対応したボタンを押せば、対象の人に通信出来るようになる。
ここまですると腕輪と言うよりも、腕全体を覆うような物になってしまった。
腕の内側に操作するボタンを付けてるけど、そのままじゃあ目立つので、
革でカバーも付けた。
あとは、人数分だけ量産だ。
マディ、リル、ケニーさん、クシェル、アリーヤ、ファギー、俺の7人分だ。
あとは、据え置き型を3台作った。
これは家のリビングと、解体場、それと獣人の村の集会場に設置した。
獣人村の物は、俺にしかつながらないようにして、緊急時のみと言う話をしている。
次に、また違う魔道具を作ろうと思ったけど、
そういえば鎧も作らないとダメだったのを思い出した。
解体済みのアリの素材を取り出して、加工して行く。
サイズは、さっきみたフェリスの体系を思い出しながら、大体を作って行く。
寸法が来たら、調整して最終は合わせて貰うのだが、
完成までには数回は着て貰って調整が必要だ。
鎧の骨格部分を作って行く。
アリの甲羅は、圧縮しないので結構な厚みがある、その割には軽いので、
イメージは強化プラスチックとか、アクリルって感じだ。
色合いは、アリの赤茶色の単色だ。
大体の形が出来れば、次は内部の緩衝材代わりの革張りを行う。
首元と肩から脇の部分、お腹から腰部分は、常に体に密着するようにしておかないと、
衝撃の吸収が悪くなるので、ここはしっかりと体に当たる様に、寸法の調整が必要だ。




