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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
6.エスデスク王国
210/223

6-44


もう、亜人関係ないじゃない・・・。

まあ、それで北への開発を辞めれないと言うのは、何となく理解出来た。

それをどうしようともしていない王国に、手を貸す気にはなれないけどな・・・。


「もう一つ確認しておきたいんですけど、マトスさんもそうだったんですけど、

ノアール侯爵も、亜人の存在を確信してますよね?」


「ああ。その通りだ。亜人が居る事に確証を持っている。

そしてとんでもない魔力を持っている事にも。」

「と言う事は、亜人を見た事があるという事ですか?」

「俺も、父上も見た事は無い。だが、俺のひい爺様が亜人と会った事があったそうだ。

その話を何回も聞いた。」


「なるほど。」

「ひい爺様が、騎士団の精鋭を連れて、アイカの東の森林の探索を行っていた時の話だ。

その時に、亜人のパーティーに出会ったらしい。

亜人の見た目は、人間とそれほど変わらなかったので、気付かずに話しかけたそうだ。

なぜか、そのまま仲良くなったらしく、一緒に飯を食ったり、酒を飲んだりとしたらしい。

魔獣に見つからない方法や、魔獣を魔法で狩るのを見せてもらったそうだ。」

「魔法まで見せて貰ったんだ。それなら魔力が高いのも、

戦闘力が高いのも知ってるって事か。」


「もう一つ思ってたんですが、北側に向かうと言うのに、大森林だけでなく、

ポスタリアから獣人の居る、アルスデスに領地を広げる事も出来るでしょう?」

「アルスデスと言うのは、獣人が言う獣人の島の事か。

獣人の島の領地はに魅力はあまりない。

土地が肥えている訳でもないし、獣人と言う脅威もある。

魔獣などと違い、獣人はどこにでもいるし、フードでも被れば獣人かどうか分からなくなる。

海を隔てていると言うのも問題で、海にも魔獣がおり運が悪いと船は沈む。

さらに、開発が進み獣人の数を減らすと、奴隷が居なくなると言う問題もあるのだ。」


う~ん。獣人の奴隷も、人間の奴隷も変わらないんだけどな・・・。

見た目差別ってやつか・・・。

「獣人が元は人間の犯罪者達で、魔法で獣人にされてると言うのは知ってるんですよね?」

「・・・ああ、知っている。わしも、父上に聞かされるまでは、思いもしなかったがな。

上位の貴族ならば、知っておる者も多いだろうが、あまり知られている話ではない。

王国としても、公にしたい情報でも無いからな。」

「なるほど。」


俺としては、犯罪者に刑として獣人にすると言う罰は有りだと思う。

島流しするのも、仕方ないとは思う。

刑務所に入れると言うか、犯罪者を隔離したい気持ちも分かる。


ただ、その子供も獣人にするとか、島流しされやっと生活出来るようになった、

その子孫を、奴隷として狩るとか、その考え方は理解できない。


この世界では・・・犯罪を犯した子孫も犯罪者って考えなんだろうな。

昔の日本にも、犯罪者の一族を根絶やしにすると言う考えがあるから、

現代日本人のように、子供に罪は無いなんて価値観は、受け入れられないのだろう。

子孫であるなら、犯罪者なので奴隷として扱っても問題無いなんて考えなんだろうな。


「ここまで聞いた話では・・・俺が手を貸す理由が見つかりません。」

「だが、父上には手を貸すと約束してくれたのではないのか?」

「いえ。依頼があれば受けるかどうか、その都度判断すると話ただけです。」

「なるほど・・・そう言う事か。」


「わしは、もしも亜人との戦争が始まってしまったら、

適度な所で戦争は終わらないだろうと思っている。

亜人は、降伏など求めないだろう。

圧倒的な戦力があるのだとしたら、人間を生かしておく必要も無いと、

判断するのではないかと危惧しているのだ。」

「確かに、生かしておく必要はないでしょうね。

共生している訳でもなく、ただお互いに、かかわらないようにしているだけであれば・・・。

逆にわざわざ全部殺して回る必要が無かったから、

今は共存出来ているだけなのかもしれないですしね。」


「わしとしては、まずは戦争の回避、そして起きてしまった場合には、

勝てるのなら良いのだが・・・ダメだった場合の保険として、

手伝ってもらえないだろうか?」

「戦争の回避については、依頼内容次第で手を貸しましょう。

ただ、戦争になっても手は出さないです。

騎士団が全滅したら、さすがに手を出すかもですが・・・。

その時点では戦争ではなく虐殺になってるでしょうしね。」

「それでいい。頼む。」


楽観論で、戦争なんて起こしてはダメだ。

リスクのある問題は、常に最悪を考えて動かないと・・・。

そんな所に、ポジティブシンキングなんて必要ない。

勝って得る利益をモチベーションにするのは良いが、負けるリスクを考えられない人間は、

他人を巻き込むだけ巻き込んで失敗する。

戦争が始まったら、状況次第では亜人に付くのもありかも知れないな・・・。

これで聞きたい事は聞けたな。


「では、まずは・・・ケニーさんの持って来た商品の説明から始めましょうか。」

ケニーさんが話題の突然の変更にびっくりしている。

「いや、今回俺の依頼は、それなんで・・・。

それに、元々の予定は先に、ケニー商会の商品を渡して、機嫌が良くなった所で、

話をしようと言う事だったのに、ちょっと予定狂っちゃったし。」

「ははは。それは悪い事をしたな。分かった、商品を見せて貰おう。」

「はい。かしこまりました。」

ケニーさんは、扉に向かい荷物を取りに行く。

「ケニーさん、クシェル達も一緒にきてください。紹介しておきたいので。」

「分かりました。」


俺は、部屋に残ってもう少し、ノアール侯爵と話をする。

「実際の所、戦争を回避する方法って、具体的に何かあるんですか?」

「・・・大きく分けると3つか。

1つ目は、北側への開発を辞めさせる事。

2つ目は、亜人と交渉し事前に、取り決めをし直す事。

3つ目は、亜人でも、王国でもない第3の勢力が出る事。

と言っても、3つは今考えられるのは獣人くらいだが、それほどの勢力になる事は無いので、

考える事も無いのだろうけどな。」


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