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倉庫は、アイカの工場とまったく同じ構造にしている。
地下も、同様で一番奥に俺の転送部屋も作っている。
と言っても、こっちは主に、ケニーさんが使う用だ。
俺達が王国に来る時には、別に確保した拠点側を使うつもりだ。
「随分立派な、店舗になりましたね。ありがとうございます。」
「店舗の改造は初めてだったので、ちょっと張り切っちゃいました。」
「ランプを付けなくても、こんなに明るいんですね。
それに、カウンターや棚まで作っていただけるとは・・・。」
「窓が多いので、締めるのは面倒ですけど、これだけ明るいと、商品も見えやすいし、
営業もしやすいでしょうから。」
「相変わらず、細かい所まで考えて作られてますよね・・・。
これを商売にしたいくらいです。」
「これは、いろんな意味で、売れません。」
「ですよね。残念です。」
その後、俺とアリーヤは、拠点として確保して貰った家の改装に向かい、
ケニーさんとファギーは、アイカの店舗と行き来して、
当面の商品を棚に補充しに動いている。
店員が明日出勤してきた時には、びっくりするだろうな・・・。
店舗が見違える感じになってて、商品まであるんだから。
どれだけ、荷車で引いて来たんだって感じだな。
まあ、その辺りはわきまえている店員だそうで、大丈夫との事だった。
クシェルから連絡が来た。
「ハルト様、ノアール侯爵から、今から会えないかと打診がありました。」
「今から!?」
「はい。手紙にも、早めにと書いていたそうで、今からなら都合がいいそうです。」
「了解。すぐに向かうので、貴族門の辺りで合流しよう。」
「分かりました。貴族門に入った所でお待ちしています。」
通信はみんなに聞こえてるので、
「ケニーさん、すぐに準備出来ますか?」
「はい。大丈夫です。侯爵の所に持って行く荷物は、
荷車に積んだままにしていますので、そのまま持って行けば大丈夫です。」
俺達は、急いで準備を済ませると、ケニーさん、アリーヤ、
ファギーと一緒に貴族門に向かう。
貴族門を通ると、すぐにクシェルが待っていた。
「なんか、急だね。あの手紙にそんな急ぎで会うように書いてたのか・・・。」
クシェルに案内して貰いながら、そんな話をしている。
「そうですね。手紙を渡してから、随分待たされましたが、
会う為の都合を付けてたのでしょうね。」
「平民の商人に会うのに、貴族がそんな都合付けたりはしないだろうから、
マトスさんが何か書いてたんだろうね。」
「ですね。何か書かれているとは思いましたが、
もう1通の手紙の方に書かれているのだと思ってました。」
「そっちは、面会の時に渡せって言われてた方だね。
多分、存分に俺の事が書かれてるんだろうな。」
そういえばまともに、貴族街を歩くのは初めてだ。
前にウィダスで少し、貴族街に入ったけどあの時は、夜だったし急いでいたしな。
ブルーノのように道路も石畳で、綺麗に舗装され側溝まである。
門の傍にある小さめの家も、庭はあるようで、
一番小さな物でも日本に住んでいたイメージで言うと、
ドラマとかに出てくる、アメリカの田舎の一般家庭って感じの家だ。
この辺りでは、家は2階建てが多いようだ。
遠くには、ひときわ大きな家も見える。
あれが、王城って事なんだろう。
城って感じの外見ではなく、階数の少ないデザイナーズマンションって感じのイメージだ。
形は、階段状になっているマンションって感じの形で、多分5階建てか6階建てって感じかな。
それが、3つくらい並んで建っているので、見た目としては結構派手だ。
あそこに、王様が住んでるんだな・・・。
そう思うと、観光気分で行ってみたいと言う気分になるのは、日本人の気質なのかも知れない。
まあ、実際に行ってしまうとろくなことにはならないだろうけど・・・。
今回は、王城手前の道を南に折れて、ノアール侯爵邸に向かう。
この辺りまで来ると、もう周りは豪邸だらけだ。
日本で考えても豪邸だらけだ、敷地は塀で囲われており、入れるのは門と裏門の2か所だけ。
双方に、門番が2人ずつ立っており、正面の門の側には、詰所みたいなのが、
門のを入った所にある。
建物は敷地の中にいくつかあるようで、メインの建物は3階建てだが、かなり横も広い。
学校の校舎を思い出す感じだ。
それ以外に、2階建ての建物が2つあり、中庭もあるようだ。
こちらも王城ほどでは無いが、大きな建物だ。
さすがに、侯爵邸と言った所か・・・。
正面の建物が、一番立派なので、そこにノアール侯爵が住んでいるのだろう。
門の前まで行くと、門番が立っており、紹介状を見せると案内してくれた。
門から建物までは、かなり立派な庭が続いている。
本当に豪邸だ。
建物に到着すると、入り口には案内をしてくれると思われる、執事の人が待っていた。
挨拶をして、建物の中に入れて貰う。
建物の中に入ると、床は石作り、壁は綺麗に塗られていて真っ白だ。
柱には数種類の石が使われているのか、色が違っている部分があり、
デザインになっている。
階段の手すりには、細かい細工までされているようだ。
ブルーノの侯爵邸もそれなりだったが、こっちの方がいろいろ細かい。
金かかってそうだな~。
そのまま2階の客室に案内された。
しばらくここで待つようにとの事だった。
俺達の持って来た荷物は、使用人によって運び込まれて、
この部屋まで持ってこられているので、ここで会うつもりなのかな?
「ケニー様、ハルト様、こちらの部屋になりますので、お2人だけでお越しください。」
しばらく待っていると、先ほどの執事の人が戻って来て、
ケニーさんと俺だけに会うと言う事だ。
別の部屋だったか・・・でも、護衛も許さないって・・・まあいいか。




