6-39
王都に行くのにまだ時間があるので、翌日からは魔法陣を使った家電作りを始める。
先日、水回りの改善をしたので、一気に家の環境は変わった。
やっぱり、蛇口を捻ると飲める綺麗な水が出る、と言う生活は全然違う。
手洗いの頻度も上がるし、料理も格段に楽に作れるようになっている。
トイレも水洗になっている事で、臭いも無くなったし快適生活だ。
冷蔵庫と、冷凍庫を作った。
前に、バーベキューで簡易版を作って持って行ったので、
作りに困る事は無いと思ってたんだけど、甘く見ていた。
冷気を密封するのとか、扉を閉めたら勝手に密封される作りとか、
冷気は下に向かうので、魔法陣を上に設置して、全体に冷気が回る様にするとか、
結構工夫が必要だった。
それに使える部材も、鉄と木と革だけだったので、中々に苦労した。
ほとんどの部分は、木で作ったので、見た目は扉付きの棚って感じだ。
鉄で作ろうとも思ったんだが、鉄で作ると全体に霜が張りそうだし、熱伝導が高いので、
冷気は全部外に出てしまうので、木で作る事にした。
冷蔵庫と冷凍庫は、別々に作り、日本の一般家庭にある背の高い冷蔵庫の大きさにした。
扉の部分は、締めたら締めっぱなしになる様に、磁石とバネで自動的に閉まるようにした。
磁石だけでも閉まるんだけど、冷気が漏れにくいように、シリコンの代わりに革を使ったので、
バネでも押さえないと、扉が勝手に開いたりする。
魔法陣の位置は、冷蔵庫の天井部分に作った。
その為、棚をしっかり作ってしまうと、上部の冷気が、下の方まで流れなくなってしまう。
なので、棚の端の方は穴を開けて、下に冷気が流れるように工夫してみた。
これが結構苦労した。
効率良く全体的に冷気を通すのは難しい。
この部分は、今後の工夫が必要そうだ。
結局鉄で作ったのは、取っ手とバネ、扉周りの磁石のみだ。
冷凍庫は2つに分けるようにして、下側は俺が魔法で作ったキューブ型の氷を、
いっぱいに入れている。
もう一つは、棚型にしてアイスクリーム作ったり、シャーベットを作る時に使う。
冷蔵庫は、バターと飲み物と、フルーツを冷やすのに使う。
いろいろ検討をしているうちに、あっという間に1週間が過ぎてしまった。
「ノワール家の現在の当主は、騎士団軍団長だそうです。
手紙もその方宛てですね。
マトス様が、ひ孫とおっしゃってたのは、亡くなった宰相補佐をやっていた方の娘だそうです。
息子も居るので、嫁に出るのだとは思いますが、今の所婚約はされていないようですね。
年齢は15歳で、騎士団に所属されているようです。」
「なるほど。」
話によると、騎士団軍団長と言うのは、軍の最高司令官の次の地位らしい。
10の軍団の内の1つの指揮官と言う立場らしく、1万人ほどの騎士が所属していると言う話だ。
平民からしたら、雲の上のさらに上の立場らしい。
「あと、先にケニー商会としての拠点と、ハルトさん用の拠点を確保しに、
店の店員を向かわせています。
3日前には着いているはずなので、多分確保出来ているのではないかと思います。」
「助かります。」
「では、向かいましょう。」
俺達は、王都近所に作った亜空間からみんなで出て、荷車を引いて歩いて行く。
今回のメンバーは、ケニーさんと、クシェル、アリーヤ、ファギーと俺だ。
今回は、防具やその他商売になりそうな荷物もあるので、荷車を引いている。
王国の入り口は、早朝なのに結構混んでいる。
ケニーさんが言うには、いつもの事らしい。
王国は、外からの出入りも多く、宿場も近いので早朝から入る人も多いらしい。
前日の遅くに着いた人が、門の前で野営して、
早朝の門が開くのを待つ事も珍しくないらしい。
アイカの町の南門にも、たまに居たのを見かけた事がある。
1時間ほど並んでやっと入る事が出来た。
街並みは、アイカに似ているのだが、さすが王都と言うべきか人の数が多い。
通りもにぎやかで、門から入ってすぐの所から店なども多い。
商人相手の、宿屋や商会の店がいくつか見る事が出来る。
俺達は、町の北側にある門から入ったのだが、北門から入るとすぐに、
貴族街に入る為の門がある。
こちらは、騎士が門番をしており、鋭い目線で近づく人達を監視している。
俺達は、荷車を引きながらそちらに向かい声をかける。
「おはようございます。ケニー商会のケニーと申します。
ノアール侯爵へのご面会をお願いにあがりました。」
「紹介状と、身分証を出せ。」
「はい。こちらになります。」
ケニーさんは、紹介状と商業ギルド発行の、ケニー商会の身分書を提出して確認してもらう。
「本日は、面会のお申込みだけですので、この者のみで結構です。」
クシェルが、前に出て冒険者ギルド証を出し、身分を証明する。
「分かった。確認するので少し待っていろ。」
門番は、紹介状やギルド証を見ながら、入門者の控えを取り、
「では、クシェル通って良いぞ。」
門番に、ノアール侯爵邸の場所を聞き、クシェルは貴族街に入って行った。
「では、私達は商業ギルドに向かいましょう。」
ケニーさんに案内されて、商業ギルドに着いた。
王都の商業ギルドは、敷地が広く受付の建物以外にも、いくつも建物が敷地内にあって、
事務用の建物や、商品仲介の建物などがあるそうだ。
俺とアリーヤは、ギルド前で待って、ケニーさんとファギーでギルドの中に入って行って、
手続きなどを行う事にする。
俺達2人は、荷物番だ。
商業ギルドに入って行く人達の多くは商人なんだろうが、それ以外の人達も居る。
商人に連れられた獣人奴隷も結構な数が居る。
商人に買われた、獣人奴隷は荷物運びと、護衛が主のようだ。
種族も多種あるが、男しかいないようだ。
女の獣人奴隷は、あまり用途がないとの事だった。
家事をやらせるにしても、毛の有る種族だと、余計に汚れるので敬遠されるし、
料理を作らせるのも、不潔と言う事で嫌われるそうだ。
なので女の獣人奴隷は、毛の無い爬虫類系の獣人の方が人気だという事だ。
と言っても、使い捨てにする人は、気にせずに使うそうだが・・・。




