6-36
「大昔、この亜人と王国とで戦争を行っていたそうだ。
その戦争がどのような経緯を辿ったのかは判明していないのだが、
最終的には条約を結んだ事で終了したようだ。
その条約は、不可侵条約だ。
お互いに関わらず、お互いの領域を犯ささないと言う物だ。
それから長い年月が経ち、亜人と言う存在自体が人間から忘れられた。
亜人の存在を知っているのは、一部の貴族のみだ。」
「そのようなお話を、私にされてもよろしかったのでしょうか?」
「・・・あれは、亜人ではないのか?」
「・・・。」
「わしは、ちと特殊でな。大きな魔力を持っている物が近づけば、
感覚的に分かってしまうのじゃよ。
昨日、そこにいるクシェルと言ったか、その後ろに隠れていた子供だな。」
「彼は、ただの人間でございます。
その亜人と言われる者は、なにか確かめる術はあるのでしょうか?
例えば、身体的に特徴があるとか?」
「うむ。亜人にもいろいろな種族があるそうじゃが、
人間とは見た目が違う部分があるそうじゃ。」
「でしたら、マトス様も見た通り、普通の人間でございます。」
「あの魔力で、ただの人間は無いじゃろう。正直に話してはくれんか?
お前達を害したいと言う事では無い。
少し話をしてみたいと思っておるだけじゃ。」
「・・・少し相談をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「良いが・・・お前達、今日にも出るのではないのか?」
「いえ、すぐに済みますので、少しどこかのお部屋をお借り出来ましたらと思います。」
「分かった。」
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「と言う流れです。ハルトさんは、亜人って知ってましたか?」
「いえ。イヌサヌの書いた中に出て来てはいましたが、
その条約や、どんな種族なのかなんかは知らなかったです。」
なるほど、
亜人って言うので、ギルドの噂とかで聞いていた、
南の海の向こうから来る悪魔の事かと思ってたけど、全然別件だったんだね。
亜人は大森林の北に居るのか・・・。
という事は、北の開拓村に魔獣が出て来たのと、関係してそうだな。
北の大森林に不可侵と言う事だから、開拓村が出来たので、
怒って仕掛けたとかありえそうだな。
という事は、魔獣を操るとか、追い立てるとかが出来るって事か・・・危険だな。
まあ、元宰相と話せるなら、詳しそうだしは聞いてみよう。
「では、いきましょうか。」
「いいんですか?」
「俺も聞きたい事ありますし、
このまま貴族を避け続ける訳にもいかないって気もしてるんです。」
「それはどういう事です?」
「もう、俺の事を知ってしまっている貴族も何人かいる事だし、
変な噂だけ回って暗躍されるよりも、
俺の意思を伝えて行った方が、良いのかもしれないと思ってます。
それに、亜人の事もそうですが、情報もほしいですしね。」
「なるほど。」
「それに・・・ケニーさんの後ろ盾になってくれるなら、
俺も顔合わせして、釘は刺しておきたいですからね。」
「了解です。」
ケニーさんは、外で待機している護衛達に、マトスとの面会を申し出る。
護衛が戻って来て、面会の許可が貰えたので、俺も部屋から出てマトスの元に向かう。
部屋から、俺が出て来た事で、護衛は驚いていたようだが、何か聞いていたのか、
それ以上の詮索はしてこなかった。
「昨日会いましたが、名乗ってなかったので・・・。俺はハルトと言います。」
「その名前は!アイカ侯爵の言ってた、魔法使いか。」
「う~ん・・・アイカ侯爵は、俺の事を探してるみたいですね。」
「確か、冒険者で大銀ランクまで上がったとか。」
「ええ、良くご存じですね。」
「一般的に、出生不明の魔法使いは、どこぞの貴族が、遊んだ結果だったり、
没落した魔術師の子供など、いろいろ面倒なのでな。
情報は、出来るだけ公開するようにしておるのじゃよ。」
なるほど・・・。
そりゃ、魔力が遺伝なら、原因はそうなるだろうな。
「ただ、ハルトよ。お前はそう言った血族ではないな?」
「ええ。孤児とは言え、そう言った血族では無いでしょうね。」
「・・・亜人ではないのか?」
「人間です。亜人については、ケニーさんからは少し聞きましたが、
もう少し教えて貰えますか?」
「ふむ。本当に亜人ではないのか・・・。
亜人と一括りで言うが、亜人にはいくつか種族があるらしい。
らしいと言うのは、わしも残っている資料や、聞いた話でしか知らぬからだ。
今の王国でも、つながりなどは一切ないのじゃ。
分かっている種族は、2種類ほどか。
・小さく小柄でがっしりしていて、腕が長い種族
・同じく耳は尖っているが、背が非常に高い種族
他にも様々な種類がいて、見た目で人間との違いが分かるそうだが、
特徴が記載はされて無い物が多くてな。
ただ、どの亜人も共通的に、魔獣よりも魔力があるとの事だった。」
さすがにファンタジー過ぎて居ないと思ってたけど、
エルフとかドワーフとかそっち系も居そうだな。
魔法は使える事を除けば、この世界はそれほどファンタジーでは無いと、
思ってたんだけどな・・・。




