2.魔法の学習
「魔法‥‥使えるようになったのかな?」
「もちろん!」
「どうしたらいいんですか?」
「じゃあ、早速使ってみようか!
とりあえず安全で分かりやすいやつからね。
1つ石を拾って、手のひらの上に置いてみて。」
ここは河原なので、足元には小石がいっぱい落ちている。
俺は言われた通りに、手ごろな丸石を1つ拾って手の平に置く。
「じゃあ、その石の形を変える感じでイメージしてみて」
パキン
「割れた‥‥。」
小石は、真ん中できれいに割れた。
え!?‥‥どうなってんの?
「あ‥‥。そっか‥‥。
じゃあ、ほかの石拾って、今度は少しずつ削って形を変えるようにイメージしてみて。」
俺は割れた石を捨てて、また他の小石を手のひらの上に置いて、言われた通りにイメージしてみる。
すると今度は、小石は割れずに徐々に削れてどんどん小さくなっていく。
え!?これもどうなってるの!
「あ‥‥。え?粉になった‥‥。」
なんだこれ?
どういうトリック使ったら、こんな事ができるんだ!?
確かに俺がイメージした通りに、削れてるんだ。
なんて言うか、速く削ろうと思ったら、速くなるし、ゆっくりとか止めたりとかも俺のイメージした通りになる。
感覚的に、俺が削ってるのに間違いなさそうなんだ。
「いやいや‥‥。削るしか考えなかったでしょ。でき上がる形も考えて削ってほしいな。
そうだなぁ~。削ったら飛ばしてみたいから、尖った感じに削ってみてよ。」
混乱しながら、言う通りにしてみる。
なんかの仕掛けなら、言われた通りにしない方が良いんだろうけど、トリックが思いつかないと言うか信じ始めてる。
これ本物の魔法じゃない?
俺って、疑い深いと言うか、それなりにいろんな技術の勉強はしてきているし、マジックのトリックなんかも一時ハマったのでいろいろ知っている。
俺って、そんなにチョロくないと思ってたんだけど‥‥。
手の上粉になった石を払って、別の小石を拾い手のひらの上に置く。
飛ばすって言ったな。なら銃弾かな。
イメージすると、徐々に石が削れて銃弾の形になる。
細部はよく知らないけど、まあ先がちょっと尖がる感じでいいんだよね。
「できた‥‥。」
いや‥‥やばい、これ魔法だ。
「じゃあ、それを飛ばしてみよう!」
「いや‥ちょっと待って‥‥。どうなってんの?もう1個作ってもいい?」
「いいよ~。」
また石を拾って、さっきと同じく銃弾のイメージで削って行く。
普通に削れたんだけど‥‥。
さらにもう1個石を拾って、今度は銃弾じゃなくて、ダイアモンドのような形をイメージして削って行く、石製のダイアモンドができ上がった。
「まじで‥‥?」
「まじで!」
「満足した?じゃあ、さっき作った尖った石を飛ばしてみよ~。
さっきのように手のひらに石を置いて、それを押し出す感じにするの。
勢いをつけたかったら、少し貯めて一気に叩きつける感じ。」
俺はダイアモンドは捨てて、さっきの銃弾に持ち替え、イメージして‥‥溜めて、溜めて、溜めて‥‥一気に叩きつけるように打ち出す!
はじかれた銃弾が、くるくると回りながら3~4mほど飛んで地面に落ちる。
「え~と‥‥。なんか大分想像と違う結果になったんですが‥‥。
ほんとに指ではじいたくらいしか飛ばないんですが‥‥。
普通に投げた方が飛距離出るけど‥‥。」
「それはね‥‥。もっと威力を出したかったら違う方法でやらないといけないの。
ただ相手に当てるだけとか、投げつけるだけとかなら、この方法で大丈夫なんだけど‥‥。
ちょっと複雑になるけど、空気を圧縮してその勢いで飛ばすって方法もある。
あ‥‥。勢いをつけるなら手の平に置いてやるとケガするので、少し銃弾を浮かせながらやらないとダメです。」
エアガン的な手法なんだ。
じゃあ、また小石を拾って銃弾型に成形して‥‥。
浮かせる?
持ち上げる感じでイメージするのかな?
イメージしたら、銃弾がふらふらとしながら少し持ち上がった。
削ったり、浮かせたりって、なんか魔法と言うよりも超能力っぽい?
次は、銃弾の真後ろに空気を集める‥‥。ってどうやるんだろ?
「空気集めるイメージって、なんだろ?」
「小石を飛ばそうと思ったらかなり圧縮した空気がいるかも。
集めるほど威力も増すしね。」
なるほど‥‥。ということは周りの空気を集めるってイメージなのかな?
じゃあ、この辺一帯の空気を銃弾の後ろに集めて圧縮して、また集めてそれも圧縮して、さらに広範囲の空気も集めて、さらに圧縮して‥‥。
打ち出す方向に向かってに向かって一気に解放!
「タァーン!」
爆発音にも似たすごい音が鳴って、銃弾が見えない速さで飛んで行った‥‥。
「え!」
見ると50mほど向こうにある土の傾斜に当たったっぽくて‥‥
1mほど土の傾斜が円形にえぐれている‥‥。
「なにこれ!?やばい‥‥。エアガンかと思ったら、大砲みたいになったよ!」
「空気集めすぎ!弾よりも空気の威力で、削っちゃってるじゃないの!まあその辺は使いながら、ちょうどいい所を調整して行けばいいよ。」
これは‥‥すごい事になってるんじゃないのか?
俺って、超能力使えるようになって、石削れるって事はセルフ3Dプリンターみたいな事ができて、セルフ大砲も打てるって事か。
これは‥‥すっごいワクワクしてきた。
たとえなんかの仕掛けであったとしても、もうこうなったらいっそどっちでもいいや‥‥楽しいし。
「この魔法ってやつはなんでもできちゃう的なもの?」
「多くの事ができるけど、もちろんできない事も制限もあるよ。その辺も含めて、教えておきますね。
小石を手で拾わずに、地面から浮かせて拾ってみて。その時に目を凝らしてどうやって浮かせてるか見てみて。イメージは目に魔力を集めて見るって感じ。」
俺は言われたとおりに、その辺の小石を浮かせて‥‥目を凝らしてみる。
よく見ると、小石の下に紫色のモヤのような物が見え、その紫いろのモヤは、
俺の体から出てて‥‥って俺の体も全体的に紫のモヤに覆われてた。
「おお~。これが魔力ってやつか!」
「そうそう。目に集中して魔力を見ると、そうやって見えるの。
それをイメージで操作して、火を出したり、物を持ち上げたり、空気から水を作ったりするのよ。」
俺は、イメージでその紫のモヤを動かしてみる。
触手のように、俺のイメージ通りに右に行ったり、左に行ったりと自由に動く。
手を動かすような感覚?でもないな、意識したら動くので、視線を感知して動くロボットアームって感じの方が近いかも。
でも、触った感覚とかがある訳ではないので、石を持ち上げてるって感じではない。
その上、結構細かい操作なんかもできる。
石を2つ持ち上げたり、放り投げたり、受け止めたり。
でも紫の部分には実体がないので、受け止めようと意識しなかったらすり抜ける。
「なるほど‥‥。って火も出せるの?」
「正確には火じゃなくて熱だけどね。何かを燃やせば火は出るけど。」
なるほど、火は何かを燃やさないと出ないよな。
火が出た方が魔法っぽいけど、そういうものなんだろう。
「となると、空気から水って言うのも、水蒸気を集めるだけって事?」
「すごいね。良く判ったね!」
ちょっと分かって来た。
もうここまで来ると、魔法の存在を疑ってない。と言うか楽しくって仕方がない。
魔法使えるこれからの生活を考えると、ワクワクが止まらない感じだ。
早速試してみる。
触手の先から、熱を出すようにイメージする。‥‥多分、熱出てると思う。
モヤってしてるし、手を近付けたら熱感じるし。
水の方も試してみる。
周りの空気を集めて、水分だけを分離したら次の空気を集めてと数回すると、コップ1杯分くらいの水分が集まった感じだ。
こっちは、さっきのエア大砲でもやったけど、魔力的には空気を吸引する感じだ。
掃除機で空気を集めて圧縮しているって感じの動きだ。
でき上がった水は球体状にして浮かせている。
これは魔力で包み込むようにして、こぼれないようにしている。
「君、魔法使うのはじめてだよね‥‥。」
「うん。もちろん。」
「そうだよね‥‥魔力無かったから当たり前か‥‥と言う事は、才能があるって事なのかな?まあいっか。」