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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
6.エスデスク王国
187/223

6-21


騎士達の、装備を荷車に乗せる作業が一通り終わると、荷車に残っていた食料を、

みんなで分けて休憩を始めた。


隊長格の人が、俺に近寄って来た。

「わたくしは、エルオドール子爵の3男で、エスカ=エルオドール男爵です。

ご助力ありがとうございます。お名前をお聞かせいただいてよろしいでしょうか?」


エスカと名乗った、騎士は結構な年齢のようだ。

ブラントさんよりも上じゃないかな。

白髪の混じった黒髪で、瞳の色も黒だ。

落ち着いた雰囲気の、老練な騎士って感じだな。


「俺は、魔法使いのハルトだ。」

「その名は・・・。アイカ侯爵が探してらっしゃる、魔法使いが、お前という事か。」

「知らないな・・・。」

「そうか・・・。アイカ侯爵がお前に会って話がしたいとおっしゃってた。」

俺は、別に用はないんだけどな。


「今回の助力、本当に助かった・・・。

あのままだと、我々も全滅する所だった。

しかも、こいつら迄連れて帰って来てくれるとは・・・。」

「たまたま、襲われてるのを見つけただけだ。

ところで、これはどういう事なのか、何か知ってるか?」


「お前!平民の癖に貴族に、なんて口をきくんだ!」

横から、隊長に付き従ってた騎士が口をはさんできた。


「よい!平民こそ口のきき方など知らないもんだ。

その平民に助けて貰っておいて、そんな口を利く貴族があるか!」

う~ん。この人まともな人かも。

怒られた騎士は、大人しくなったが、俺をにらんでいる。


「すまない。話を戻そう。どういう事と言うのは、魔獣の事でよいのか?」

「ああ。」

「判らんのだよ。突如現れたようだ。

我々も開拓村への道が通れなくなったとの事で討伐にきたのだ。」

「そうか、騎士団の方も原因は掴んでないのか・・・。

未開の大森林の近所では、よくある事って訳でもないって事か?」

「そうだな。魔獣が魔獣の森から出てくるなんて話は聞いた事がない。」

やっぱり何らかの、異常事態みたいだな。

未開の大森林に入ってみて調査しないと分からないって事か・・・。


「お前は、開拓村がどうなったか知ってるのか?」

「開拓村は無事だ。」

「それは朗報だな。だがどのみち、街道が通れないと、近い内には全滅するか・・・。」

「畑も無事なので、食料の問題はなんとかなってるはず。」

「そうか、食料も何とかなっているなら、本格的に騎士団を準備する時間はありそうだな。」

「ただ、備品や生活品などの物資が足りなくなってるので、かなり厳しい状態ではある。」

「なるほど。援軍は要請する。

ただ急いだとしても援軍が来るのに、20日以上はかかるだろう。」


俺が街道の魔獣を狩るにしても、来てもらう事に問題は無いだろう。

森の中や、街道に関係ない所の奴は狩らない予定だしな。


「休憩が終わったら、すぐポスタリアに移動する。

お前には、一緒に来てもらいたいのだが・・・。」

「それはお断りします。俺もまだやる事あるので。」


エスカ男爵は少し考えてから、

「・・・そうか。礼もしたいし、ポスタリアに来た時には訪ねてくれ。」

「礼はいいよ。その代わり、あまり俺の事を広めないようにして欲しい。

面倒ごとが増えるのは嫌なんでね。」

「これだけの功績があれば、騎士団に入る事も可能かもしれんのに・・・。良いのか?」

「貴族に興味は無いし、俺は誰にも仕える気は無い。」

「・・・それは貴族に言うべき言葉ではないな。王国の敵として認識されかねんぞ。」

「なるほど・・・。忠告感謝だ。」


あれか・・・。

宗教を信じきってる人に、俺は信じないって言ったら、切れるやつか。

自分だけ信じてたらいいのに、人が信じないと否定すると、

我慢が出来なくなる感じなんだな。


この世界では、それが顕著だ。

それに、貴族って言うのは政治家で、騎士団って言うのは軍隊だ。

政治家と軍隊が、王ってトップの意思で動く。

民主制なんて無いもんだから、良いか悪いかのすべては王の認識が基準だ。

神様、同然の扱いなんだろうな。


もちろんすべての人が、王を信じきってる訳では無いだろうが、

表には出したりはしないだろう。

それを表に出したりすると、王国として排除対象になるって事だろう。

それが、さっきの俺の言葉って事だ。


元の世界でも同じような事は多々あるからな。

自分の信じる物を否定もしくは、共感されなかったら怒る人は多い。

それが、力を持っている人なら、より感情的にになるんだろう。

しかも、それが自分よりも身分が下だとしたらなおさらだ。


エスカ男爵は、それが危険な言動だと注意してくれた。

感情的になるのではなく、注意出来る人と言うのはきっと貴重だ。

ここは素直に従っておくのが正しいだろう。

ただ、そんな王国にも貴族にも絡む気はないけどね。


同じ男爵でも、精力増強の魔道具を付けて、暗殺者に会ってるような、

どこかの雑魚男爵とはえらい違いだ。


もう、いい時間だし戻るかな。

「俺はもう行く事にするよ、」

「魔法使いハルト、今回の恩は忘れない。」

朝になったら、拠点を確保しに行く予定だし、アリーヤから連絡はないけど心配だし。

俺は透明化した亜空間を出して、宿泊所の部屋に戻る。

魔法使いハルトが亜空間移動するのは、もうバレてるみたいだしね。


クシェルとファギーは、もう寝ているがアリーヤはまだ帰って来てないようだ。

騎士団を助けたのは、成り行きだけど・・・。

魔獣の情報を何か持ってるかを確認したかったとは言え、

名乗ったのは蛇足だったかもしれないな。

素知らぬ顔して、すぐに戻っても良かったかもしれない。


結局その部分での収穫はなかったしな・・・。

ただ、エスカ男爵に会ったのは、悪くないつながりかもしれない。

ポスタリアの騎士団の隊長さんなんで、それなりに情報もってるかもしれないし、

なかなか良さそうな人だった。


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