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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
6.エスデスク王国
186/223

6-20


フランシスとは、町中で別れて、透明化し上空に飛び立つ。

夜だけど、町に明かりは無い・・・。

ほとんどの家で、ランプ用のオイルが切れているんだろう。


アリーヤからは連絡は無いので、今の所問題は発生してないと言う事なんだろう。


上空に上がってから、街道を見渡す。

街道自体は結構距離があり、ほぼまっすぐ100km以上あるんじゃないかな。


これって、どこから魔獣がいるんだろ?

もしも、ポスタリアの街道の方に出ていたら、

ポスタリアに行けないと言う話になるだろうから、そっちには出てないんだろう。

という事は、ポスタリアと、開拓村への分岐点よりも、開拓村側から始まってると思われる。


・・・多分。

もしも、ポスタリア側にも居るとまずそうだな。

片付けるとしたら、そっち側からやった方が、被害が減りそうだ。


街道の状態を確認しながら、分岐点に向かって進んでいく。

かなりの魔獣がひしめき合ってる感じだ。


やはり、前にも感じたが、普通ではないな・・・。

魔獣同士であろうとも、弱肉強食で食べるはずなのに、そんな素振りが見えない。

獣同士が食べるのは見た事あるけど、魔獣はそういえば見た事無いので、違うのかな?

まあ、種類的に肉食じゃないのばかりが居るのかも知れないが・・・。

どの種類の魔獣が、肉食なのか俺にはわからないんだよな。


カマキリとか分かりやすいのが居ればいいんだけど、見た事無いし。

セミとか、バッタって肉食じゃないよな?

トンボは肉食だった気もするけど・・・何かを食ってるところなんて見た事無いしな。

アリも肉食か・・・。でも、誰も戦ったりはしてなさそうだ。


街道の分岐点が見えて来た。

魔獣は、分岐点よりも10kmくらい手前から発生しているようだ。

発生個所になにかあるのか、少し雰囲気が違う。


「あれは・・・。」

大量の死体だ・・・。

クシェルが言ってた、騎士団か。

かなりの数、死んでる・・・40人以上いるな・・・。

いや・・・もっとだな。


街道に沿うように、魔獣の死体と、騎士団の死体が折り重なるように、続いている。

さらに辿って行くと、まだ戦ってるようだ。

20人ほどで、アリの魔獣を5匹ほど相手にしている。


これを見捨てる訳にはいかないな。

状況としては、アリ5匹に相対しているのは、10人ほどだ。

2人で、1匹を相手にしている形だ。

狩っていると言うよりも、アリが後ろに行かないように、守ってるって感じの戦い方だ。

徐々に下がって、撤退をしているようだ。

残りの10人は、撤退中に横から出てくる魔獣が居ないか警戒しながら、

前衛が戦えなくなったら、交代するって感じみたいだな。

それに、明かりを照らして、前衛が敵を見る事が出来るようにしている。


俺は高度を下げて、騎士団の少し後ろくらいに降り立つ。

透明化しているし、ここは暗いので誰も気が付いてない。

透明化を解除して、魔法で声が響くようにして、大声で叫ぶ。

「手を貸す!」


俺は、前衛の後ろからアリだけを選んで風で後ろに吹き飛ばす。

10mくらい吹き飛んだら、体勢も崩してひっくり返る。

騎士団は、何が起こったのか分からない風で、こっちを振り向いて警戒するが、

とりあえずは魔獣が先だ。


すぐに範囲酸欠を行う。

10mほど吹き飛ばしたので、騎士団にまで影響は与えないだろうと思ってたのだが、

騎士団って・・・血気盛ん過ぎ。

騎士団の何人かは、10mを走って、アリに切りかかってる・・・。


仕方ないから、範囲酸欠を止めて、単体酸欠をそれぞれのアリに行う。

もう、ほぼ気絶していたので、魔法が見えても逃げられる事もない。

気絶したアリの止めは、騎士団の方でやってくれるだろう。

素材はボロボロにされるけど、まあ仕方ないだろうな。


気絶だけさせたら、俺は周りを警戒する。

騎士団の後ろ詰めの人達も、俺を見て警戒している。

う~ん。警戒されないように声かけたんだけどな・・・。

まあ、攻撃されなかっただけ、効果はあったのかな。


「魔術師様か?」

「今ので全部か?」

名乗る前に、とりあえず指示したいので、質問は無視しておく。


「はい。とりあえず、襲って来てたのは・・・。」

「では、急いで撤退だ。ケガ人を忘れるな!」

「は!全員撤退だ!」

騎士団は、急いで撤退を開始した。


この場所でも、犠牲は出ていたようで、数人分の死体がある。

ケガ人もいる様で、肩を貸して撤退を開始している。


騎士団の生き残りは20人ほどで、ここまでの道のりで、

50~60人くらいは犠牲になっていたようなので、元は100人規模だったのかもしれないな。

2割しか生き残れなかったようだ。

一番奥で40人ほど死んでいたので、そこからは撤退戦だったんだろうな。


急いで撤退しているようだが、ケガ人が多くそれに合わせているので、歩みは早くない。

腕を無くしている人はいるが、足に大きなケガをしている人はいないようだ。

と言うか、きっと逃げ切れなかったんだろうな。


騎士団の、武器はそれぞれで得意な物を持っているようだが、装備は統一しており、

全員アリの胸当てと、背中当てを装備している。

ただ、隊長クラスは、装備は少し違うようで、アリとは違う甲羅を使っているようだ。


サーチすると、帰りの道にも所々に、魔獣が居る事が分かった。

「俺は先行して、魔獣を狩っておくから、出来るだけ急いで撤退しろ。」


それだけ言い捨てると、追い風で先行して魔獣狩りを行って行く。

元々、かなりの数の魔獣が居た所を、騎士団で切り開いてここまで進んできたので、

打ち漏らしも結構いるようだ。

こんな状態で襲われると、それほど数が居ないとは言え、全滅しかねない。


せっかく助けたのに、全滅されるのもだしな・・・。

俺は、道を分岐点側に向かいながら、街道の近辺にいる魔獣を狩って行く。


魔獣の発生地点の切れ目くらいの場所まで来たので、

これで騎士団の撤退は問題なさそうだな。


魔獣の発生地点から、5kmくらいは進んでたんだと思われる。

あれだけの密度の魔獣を5kmも狩るとは、さすが騎士団と言った所か。

冒険者だと、20人がかりで1匹がやっとだと聞いていたのに、

100人弱でずいぶんと進んでいたようだ。


ここは、分岐点までまだ30分くらいはあるだろうから、

被害は北の開拓村だけだったみたいだな。

魔獣発生の原因になるような物は、見当たらない。

原因は、やはり森の奥を調べないと分からないだろうな・・・。


まだ、ここに騎士団が来るまで時間がかかるだろうから、もう一仕事しておく。

透明化し、上空に上がる。

街道を開拓村側に移動していく。

騎士団が撤退しているが、さっきの場所までまだまだかかりそうだ。

騎士団を通り過ぎ、さっき騎士団が襲われていた場所くらいまで戻った。

騎士の亡骸や、撤退するのに置いて行った装備品などが捨てられている。

俺は、それらをすべて亜空間に収納しながら、開拓村側に進んで良く。

やっぱり生き残っている人はいないようだ。


魔獣もほぼ倒されているので、亡骸が食われてる感じもない。

進んで行くと、徐々に亡骸も増え、死体の損傷もひどくなって行く。

それらも、すべて亜空間に収納して行く。


40人くらいの騎士が無くなっている場所に着いた。

ここには、魔獣もまだ生きており、亡骸はもう人間の形はしていない。

俺は、残っている魔獣を狩ってしまい、その後、亡骸を含めて、

装備品などを亜空間に収納して行く。

荷車が10台ほどあった。

2台には、食料が載っていたようだが、もうほとんど残っていなかったが、

木箱に入れられた、硬いパンなどは、まだ食べれそうだ。

残りは、元々空荷だったのか、魔獣の残骸が載っている物と、

ケガ人・・・今は死体が乗せられている。


完全にグロの世界だな・・・。

俺が吐いてしまわないうちに、すべて亜空間に収納していく。


流れを見ると、ここまでは順調に進んでいたんだろう。

ここに来て、魔獣の数が増えたのか、キーマン的な人が倒れたのか、一気に崩れたようだな。

その結果、かなりの犠牲を出し、撤退を決めたんだろう。

すべての荷物を置いて、撤退を始めたけど、来る時に打ち漏らした魔獣に襲われて、

何人も無くなって行って、最終的に20人で、アリに襲われてたって感じか・・・。


一通りの、遺体と遺品を回収したら、荷車も回収しておく。

魔獣の残骸などは、そこに捨てて置く。


そのまま上空に飛んで、分岐点間際の魔獣の切れ目まで移動してから、

回収した物を、出して行く。


まずは、装備と一緒に遺体を並べていく。

と言っても、遺体の一部と装備言う表現かもしれないが・・・。


それと、荷馬車も置いておく。

生き残ったメンバーでも、ケガでしっかり歩けない物なども居たので、

荷車があれば助かるだろうし、遺品などを持って帰るのにも使えるだろう。

並べ終わり、しばらくすると騎士団の先頭が見えて来た。


「これは・・・。」

「亡くなっていた方々を運んでおいた。

亡骸は難しいだろうけど、装備は遺族に持って帰れるだろう。」

騎士達は、遺体と装備を確認し、うつむき歯を食いしばり食いしばり、

泣くのを我慢している者や、装備品を抱きしめて、黙っている者など、さまざまだ。


しばらくすると、隊長格の人の指示で、装備を外し、荷車に乗せる作業を始めた。


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