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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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14.ケニー


俺はそこから森に向かってサーチしながら進んで行く。

次の獲物は‥‥森に入ってすぐくらいの所に、ウサギがいそうだな。

ウサギなら銀貨1枚確定だし、軽いのでちょうどいい。


ウサギの反応があったのはこの辺りだな‥‥。

地下の巣穴っぽい所にいるのか。

入り口は‥‥あの木の下と、こっちの木の下にもつながっているのか。

2か所出口があるけど、片方は少し狭いから空気穴っぽいやつなのかな?

どうやって仕留めようか‥‥片方から脅かして、もう片方から出て来た所を酸欠して、ナイフで止めって感じがいいかな。

‥‥違うな。逃げてる最中だと、酸欠が効かない。止まってくれないと難しいから、先に酸欠にしないとダメだな。

と言う事は、酸欠にさせてから穴掘る感じかな。


魔法の触手を穴から中に入れて、巣穴全体から酸素を追い出していく。

10秒くらい待ってから、ウサギのいる所の真上に行き、魔法で穴を掘って行く。

穴は、さっき掘ったのと同じで、魔法の触手を地面に当てて、そこから土を追い出す感じだな。

1メートルほど掘った所で、気絶か死んでいるウサギを発見した。


「ん!!」

ウサギに気を取られ、完全に見落としてた!!人が近づいて来る!!

しかも、俺の方に向かって来ているのではなく、アリスに向かって行っている。

アリスの方も気が付いてないようだ。

「まずい!」


町の外で人が近づいて来る目的って、思いつくだけでろくなものはない。

獲物の横取り、誘拐、追いはぎ。

町中でさえ治安が悪いと言うのに、外で人に出会うなんてろくな事にならない、衛兵も居ないし、目撃者もいないのでやり放題だ。


ウサギは放置して、そのままアリスの方に駆け出す。

やばい‥‥俺がアリスの所にたどり着く前に、アリスに接触するぞ。

必死で走っても、子供の足ではたかが知れている。

こうなったら‥‥魔法で俺の後ろから風を送る。

追い風の状態になって、少し速度が上がる。

さらに、風を強くして速度を上げて行く。こけそうになるが、そんな事言ってられない!

これなら何とか。


「アリス!」

俺が、声をかけるのとほぼ同時に、向こう側から男が草を分けて入って来た。

アリスは人が来るのに気が付いてなかったようで、驚いて座ってた石からこけてまっている。

アリスの前まで移動して、俺はナイフを抜き戦えるように構える。

「なんのようだ!」


男はその場で立ち止まり、両手を上げて手のひらを見せながら、穏やかな口調で話出す。

「敵意はありません。私、ケニーといいます。ケニー商会というのをやっています。少し話を聞いていただきたいのですが‥‥。」


男は町でよく獣人を連れている商人のような恰好をしている。

俺達のような植物を編んだだけの服ではなく、ちゃんと糸を編んだ生地で丈も長く足元まである贅沢な服を着ている。

革を足に巻き付けた形の靴を履いており、ロベルトさんよりも裕福な人である事はまちがいなさそうだ。


町で腹いせに暴力を振るって来るような奴らとは違うが、金を持っているから傲慢になっている奴らもいるので一概には言えない。

サーチしても、この人1人のようだ。

見た目と状況としては、平和的な話のような気もするが、剣を腰に装備しているので油断は出来ない。


もしもあの剣で切りかかられた時には、相手よりも早く何らかの魔法を使って対応しないといけない。

俺は魔法の触手を俺と男との間に1本、相手の口元に1本伸ばして行く。

魔法は魔力視を使わないと見えないはずなので、俺の動きはわかっていないはず。


「驚かせてすみません。街道を通っていると、そちらの黒マダラヘビを血抜きしているのが見えまして、売っていただけないかとこちらに来たのです。」


ケニーと名乗った男は、30歳くらいで温和そうな顔をして笑顔で話をしているが、目は周りを観察して他に誰かいるかもしれないと警戒しているようだ。


「どういうことだ?」

「私のケニー商会では、黒マダラヘビを加工して商品にしています。

ただ最近は黒マダラヘビ中々手に入りませんで、商品を作成するにも困っている状況なんです。

そんな中、こちらで血抜きをしているのを見つけましたので、直接買い取りが出来ないか交渉お願い出来ればと思います。

この黒マダラヘビを狩った方はいらっしゃいますか?」


なるほど‥‥商品を見ての買い取りか。

昨日のロベルトさんの話でもあったが、ギルドから買うよりも狩った当人から買った方が格段に安く上がると言う話だったな。

ウサギの場合でも、ギルドは俺から銀貨1枚で買い取って、解体後に数倍の値段で売っているって話だったよな。

解体の作業代や、その他の手間もあるけど、かなりの差額があるはずだ。直接買い取りの機会があれば商人なら見逃さないか‥‥。


「俺が狩った。」

「え?君が‥‥ですか?」

「ああ。方法は言えないが、俺が狩った。」

「なるほど‥‥。頭の部分のみで、大銅貨3枚で売っていただけないでしょうか?」


大銅貨3枚って3,000円か‥‥きっとかなり安目に言われているな。

子供相手だと思われているだろうしな。

「‥‥最近仕入れが少ないという割には、安すぎないか?」


「‥‥そうですね。あなたが子供だと思って商売しては、信用も無くしますね。

大銅貨5枚でいかがでしょうか?冒険者ギルドに買い取りしてもらっても、全身で大銅貨5枚のはずです。頭だけで大銅貨5枚ならお得だと思うのですが。」


5,000円か。

10,000円くらいを予想してたんだけど‥‥思ってたけど安いな。

重い思いをして、5,000円か。

単純に考えて、ヘビからは、ヘビ皮が取れるだろう。それと身が食べられると思うから、肉もウサギよりも量が取れるはず。

それでも、ウサギよりも安い‥‥のか?

ただそのヘビ皮も肉も無しで、5000円と言うのは、思っているよりも美味しい話なのかも知れない。

それだけ、毒腺部分が貴重なのかもしれないが‥‥これ以上、情報を持っていない状況での判断難しいな。


子供相手として、最初に3,000円で、本来5,000円と言うのであれば、子供相手でもそれなりに良心的な金額を提示していたと言う事になる。

もちろん5,000円が本当の話ならだが。


「仕入れが少ない理由があるのか?」

とりあえず理由を聞いて情報を貰われないと、俺には判断つかないからな。

「仕入れが少ないと言うのは、語弊があるのかもしれませんね。ギルドには今まで通りに入っているのですが、すべて買い占められているのですよ。」

「ほう。」


「黒マダラヘビの毒から、強力な麻痺薬を作る事ができるのですが、黒マダラヘビを買い占める事でこれを独占している商会があるのです。」

「ん?と言う事は、毒腺の部分が必要と言う事か?」

「そうですね。買い取る前にそちらが無事かどうかの確認はさせていただきたいと思っています。」

「ちょっと確認する。」


ヘビの頭の部分は、亜空間に入れっぱなしなのですぐに取り出す事は出来ない。

なので、アリスを連れてヘビを吊るしている木の陰に入り、ヘビの頭を取り出し確認をする。

ヘビの頭の中を覗いても、肉の切断面しか見えないし、他には傷もついてないのできっと大丈夫だろうと判断するけど、見せないと判断できそうにないな。

その間も、ケニーの方からは目を離さない。

サーチして応援とかが来ていない事も確認している。


アリスを、木の陰に残して俺は再度ケニーの前に立ち、ヘビの切断面を見せる。

「これでわかるか?」

「ええ、ええ。毒腺はもっと顔の部分ですので大丈夫そうですね。」


「直接買い取りまでして、わざわざ独占している商会に対抗して、麻痺薬を作るのか?」

「麻痺薬は、大型の獲物を狩る時などに使われる事が多いのです。その為需要はそれなりに高いのですが、その商会が独占している事で値段がその商会の言い値になってしまっている現状です。」

「なるほど。」

「私の商会は、薬剤、塩などを扱っている商会なので、こういった毒などの薬剤も取り扱うのですが、材料を仕入れられず困っていました。うちで取り扱う事が出来れば、独占をやめさせる事もできるかもしれませんので、こうやって機会があれば声をかけさせてもらっています。」


「なるほど‥‥と言う事は、俺はその独占している商会に持って行けば、もっと高く買い取って貰えると言う事だな。」

「確かに、買い取っていただけるとは思いますが‥‥それでも、この値段以上は難しいのではないかと思います。」

「どういう事だ?」

「なにかコネがあれば、ある程度の買い取って貰えるでしょうが‥‥。何もつながりの無い所に持って行っても、買い叩かれる事になるかと思います。良くて私の提示したギルドの買い取り金額で、全身と言う事になると思います。

私の場合には‥‥麻痺毒の独占を崩したいと言う思惑があって毒腺を欲しているので、他よりも条件の良い形で買い取らせていただきます。」


言っている事は正しそうだな。

子供相手に、丁寧に話してくれているのも好印象だな。

話している最中も、両手をこちらに見せ、敵対的な態度を取らないようにしているのも悪くない。

子供に説明するには、少し難しい話をしているが、それは子供相手に慣れてないだけだろう。


「わかった。売ろう。」

「ありがとうございます。」

「ただし、条件がある。」

「はい?」

「俺は、まだ他にもヘビを狩る予定なのだが、それも買い取ってほしい。」

「ええ、ええ、もちろんです。他にも黒マダラヘビが手に入るのでしたら、同じ条件で買い取りいたします。」

「同じ条件ではなく、冒険者ギルドでの黒マダラヘビ買い取り値段と同額で、頭だけを買い取ってほしい。」

「‥‥なるほど。黒マダラヘビの相場が上がったら追従すると言う事ですね。」

「ああ。その代わり下がった時にも同じく追従していい。」

「わかりました。その条件で買い取りいたします。ただし、毒腺が無事な物しか買い取れませんのでそこはご了承ください。」

「了解だ。」


これでもしもギルド販売よりも、余りにも安い値段だったのならもう売らない。

ただ話している感じ、大丈夫ではないかと思っている。

これで騙されているのなら、それは勉強代として諦めよう。

実はヘビの頭なんて大した値段にならないだろうから、捨てようかとも思ってたくらいだしな。


俺は構えてたナイフを鞘に納め、ヘビをケニーさんに渡す。

ケニーさんはヘビの切り口側から、中の毒腺の状態を確認して、

「はい、確かに。ではこちらをどうぞ。」

布袋から、大銅貨5枚を取り出し渡してくれる。


「西通りから、1本北側に入った所に私のケニー商会がありますので、黒マダラヘビを狩りましたらそちらにお持ちください。いくつでも買い取ります。冒険者ギルドでの買い取り金額についても、こちらで把握するようにしておきます。」

「こちらもいい商売ができたよ。」

「では、失礼しますね。今後ともよろしくお願いします。」

そういうと、ケニーさんは来た道を戻って行った。


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