6-13
読んでは戻って、違う資料を読んで、さらに読み返して、
やってみて失敗して、少しずつ理解すると言う形になってしまった。
それでも、この資料が無ければ取っ付きも出来なかったので、
十分この資料はありがたかった。
それに、魔法とかイメージとかって言う概念的な物が多かったのも手こずった理由だ。
理解だけすると言うのなら、読めばなんとかなるんだけど、
使えるようになるにはまた別の話だからな。
それでも、何とか魔法陣を自分で書いて動かせるくらいまでは行った。
俺の理解では、魔法陣と魔法は、ほぼ別物と言うくらい魔法陣が便利過ぎる事が分かった。
魔法は、魔法陣の簡易版なんじゃないかと言えるほど、
魔法陣の方が細かく動作するし応用力が高い。
その上、発動にほとんど魔力が必要ないので、誰でも使う事が出来る。
魔法と違って、魔法陣でなら他人に魔法を掛けやすい。
と言うと、少し表現として違うのだが、魔法陣を発動を本人がすれば、
本人の魔法として発動されるので、効きやすいと言う意味だ。
例えば、回復の魔法陣を書いて、回復してほしい人が自分で発動すれば、
そのまま自分の魔法のように効果が発揮される。
他人が発動させると、他人が魔法を使ったのと同じく効きが悪い。
ただ、回復を魔法陣にする場合には、かなり良い魔核が必要だし、
症状によって処置も変わるので、回復の魔道具はあまり現実的ではないようだが・・・。
いろいろ便利そうなんだが、デメリットが大きすぎて使い勝手がそんなに良くない。
使う魔核によって、魔力量が大幅に違う為、良い魔核を使わないといけないのだが、
やはりというか、良い魔核ほど手に入れるのが難しい。
程度の低い魔核だと、書いて5分で切れて魔力の補充が必要になる。
魔力の補充は、俺の魔力で補充出来るんだけど、
補充しても元の5分よりも長く使えたりはしない。
程度の良い魔核だと、数週間動かしっぱなしも出来るようだ。
魔核は魔獣狩りを日々行っていた事で、かなりの数持っているが、
持っている魔核と言えば、ここにある壺で言えば、魔力2が一番良い物だ。
魔力2って言うのも、女王蜂からの奴だから2個しか持ってない。
俺って、思ってたよりも強いのは倒してないんだな・・・。
俺が、日本にいる時に思っていた魔法陣ってやつと、一番違うと思った部分は、
実は書かれている文字に、意味は無いという事だ。
イメージさえ出来るのであれば、どんな文字を書いてもいいらしい。
そのイメージを補完する為に、どんな効果で、範囲はどれくらいで、
どれくらいの強さで、魔力もどれくらい使うのかなんかを具体的に記載するんだそうだ、
そこまで具体的に動きをイメージする為に書かれるのが魔法陣らしい。
極端な話、具体的なイメージが出来るのであれば、丸書いてるだけでも動くんだそうだ。
慣れてくればそんな事も出来るようになるのかもしれないが、
今は全部書かないとイメージは出来ない。
いくつか書いてみて動くのを確認したが、これを使っていろいろやっていくには、
まだまだ研究が必要そうだ。
イヌサヌが研究してた情報だけでは、制限が多くて使い勝手はあまり良くなさそうだ。
あと、少し工夫したら便利になりそうなんだけどな・・・。
魔法陣の方は、これからも研究を続けて行く事にして、もうそろそろ結構時間も経ったので、
町に向かおうと思う。
クシェル達も露店から離れて、訓練のみの生活をしているので、時間的にも余裕がある。
その為、3人と一緒にポスタリアの町に向かう事にした。
ポスタリア近所の、亜空間から出て門に向かって歩いて行く。
そういえば、最近はこのメンバーで移動するのはあまりなかったかもしれない。
「訓練はどう?」
「毎日、かなり勉強させてもらってます。」
「あたしは、戦いよりも斥候の修業の方が多くなってしまってます。」
「わたしは師匠が、なかなか厳しいです・・・。」
3人共、それなりに鍛えて貰っているようだ。
「そういえば、ハルト様もうそろそろ、3人共銀ランクに上がりそうです。」
「おお!もうそんなに納品したんだ。」
「はい。銀ランクに上がる時の、試験で本気で戦えるのを楽しみにしていると、
ブラントさんに言われました・・・。」
「・・・そりゃ、頑張らないとだね。」
「あたしは、それが気が重いです・・・。ブラントさんは怖い・・・。」
「わたしは、この武器にずいぶん慣れましたから、
次こそはブラントさんに1撃は入れたいです。」
「そうだね~。ブラントさんには、かわいがってもらってるし、
お礼に倒してあげると喜んでくれるんだけどね。それに、大銀に一気に上がれるし。」
クシェルは、驚いたように声を上げる。
「そんな事出来るのは、ハルト様くらいです。
訓練で手合わせさせていただいてますけど、あの方は本当に最強と言う名の通り、
技術、速度、体力のすべてで桁違いです。」
確かに、ブラントさんは強いけど、
クシェル達も大分いい所まで来てるんだと思うんだけどな。
まあ、見に行けないのが残念だけど、頑張って貰おう。
話ているうちに、ポスタリアの門までたどり着いた。
事前に打ち合わせしていて、クシェルの子供と言う事でポスタリアには入る事にしている。
名前は、こっちの世界では変わってるんだけど、「ユースケ」としてもらう事にしている。
クシェル達は、冒険者のパーティでポスタリアの仕事をしに来たと言う話にする。
しばらく、ポスタリアにいるつもりなので、子供も連れて来たって感じだ。
ポスタリアの門に入り、門番に冒険者ギルド証を見せ中に入る。
町に入る入町税と、子供を含めて大銅貨1枚だった。
アイカよりも少し高いくらいかな。