13.ヘビ狩り
「アリスこっちの、ナイフを持ってて」
石のナイフをアリスに差し出す。
狩をさせる気はないが、念の為に持たせておこう。
「うん」
アリスも、石のナイフを腰紐の内側に差し入れる。
獲物はなにかいるのか、サーチで探してみる。
ウサギではないが、近所にヘビがいるみたいだ。
「ここで待ってて。ヘビがいるみたいだから、狩ってしまう。」
「ヘビ!危なくないの?」
「大丈夫。気絶させてる間いに、狩ってしまうから。」
「うん。」
ヘビは、森ではなく待機場所にした、川から少し草原の中に入っていった所にいるようだ。
草原と言っても、俺よりも随分背の高い草が生えていて、視界はかなり悪いし前に進みにくい。
なので、持っているナイフで雑草を狩り道を進みながらヘビのいる所まで移動していく。
ヘビは、草原に生えている2メートルくらいの木の上で、獲物が下を通るのを待ち構えてじっとしている。
全体的に黒っぽいマダラ模様になっており腹の部分は真っ白だ。
体長は2~3メートルくらいあるんじゃないかな‥‥。
胴周りも俺の腕よりもよほど大きく、門番の筋肉質な腕くらいの大きさがあった。
TVでみたニシキヘビくらいの大きさだ。
毒があるのかどうかわかんないけど、あれだけ大きいのなら、締められて骨が折れるとかはされそう。
毒の有無って、確か頭が三角かどうかだっけ?あれってうそなんだっけ?まあ地球以外で適応する話かどうか分からないしな‥‥。
とりあえず、頭は三角っぽいので毒持っている前提で行こう。
周りには、他に危険な動物はいなさそうだ。
10メートルほど手前で見つけたので、魔法の触手を伸ばしてヘビを包み込み、酸素を追い出して酸欠させる。
しばらくは何も起こらないが、10秒くらいするとヘビは目を閉じ動かなくなった。
さらに10秒くらいそのままにしていると、木から地面に落ちて来た。
俺はすかさず近づき、ヘビの首?どこまでが首か分からないけどその辺りを切る。
刃の長さが足りないので、1回で首を落とすまでは行かなかったが、3回くらい切って完全に首を切断する。
「よし、今日の獲物1匹目。」
ギルドで売る時に値段下げられるかもしれないから、首も持って行かないとだな。
胴体の方は血がすごい勢いで出てるので、服に付かないようしないとさっきの水浴びが意味なくなってしまう。
‥‥これは‥‥重い。
なんとか引きずる事は出来そうだけど、アリスの所までは行けても、南門まで持って行けないな。
さらにギルドまで行かないといけないし‥‥。
重さにすると20Kg以上あるんじゃないだろうか。俺の体重よりも重いかも。
魔法でなんとかするしかないか。
いったん亜空間に入れて、アリスの所に戻るのが良さそうだな。
それから、血抜きの方法を考えよう。
ヘビの体が入りそうな亜空間を想像し、ヘビの体の近くに入り口を作る。
その入り口に自力でヘビの体を押し込んで行き、ヘビを亜空間に収納するのに成功する。
ついでに頭もその中に放り込む。頭だけでも結構重いんだ。
そのまま来た道をアリスのいる所まで戻ってきた。
「狩ったよ。」
「大丈夫だった?ケガしてない?」
「うん、大丈夫。」
血抜きどうするかな‥‥木の上に出せば引っかかって血抜きできそうかな?
俺は、近くの木に登るとアリスが不思議そうな顔をしながら近づいて来た。
俺は木に引っかかる様に、亜空間からヘビを取り出す。
「きゃ!お、おっきいヘビ!」
アリスは、腰をぬかしてへたり込んでしまった。
あ‥‥また説明せずに、先に出してしまった。
「驚かしてごめん。これがさっき狩ったヘビなんだ。血抜きしないと傷んでしまうので、ここに引っ掛けようと思って‥‥。」
「‥‥もう、死んでるんだよね?」
「うん、もう死んでる。動かないよ。」
でも、引っ掛けるだけじゃあ、上半分の血は抜けても、下半分に残りそうだな。
なんか魔法で持ち上げるとかの手が欲しいな。
できれば、尻尾をロープかなんかでくくって、吊り下げられるのが理想か‥‥。
ロープもないし、魔法で持ち上げられる重さでもないしどうするかな?
そうだ!さっき服を乾かしたみたいに、血を抜けないかな?
そしたら、吊り下げる必要すらないしな。
魔法の触手を伸ばして、ヘビの尻尾側から血液を押し出すように、頭側に少しずつ動かして行く。
俺の魔法に押し出されるように、切断された首の部分から血がドバッっと出る。
あ‥‥先に穴掘らないと。
ハーリさんに言われてたんだった。
もう遅いかもだけど、魔法を中断してから木を降りてヘビの血が流れている所に穴を掘る。
手でやると血だらけになりそうだったので、これも魔法で掘り起こす。
魔法の触手を、血だまりの所に持って行って直径30センチくらいに触手の先を膨らまし土を範囲から追い出す。
少しずつ下に向かって動かして行く事で、深さも30センチくらいの穴を作る。
さっきのヘビの尻尾側から、また血抜きの続きをしていくと、いい感じに穴に血が溜まって行く。
あ!内臓が少し潰れてしまったかも‥‥。
血液を強制的に押し上げてしまった事で、血液に圧縮されて内臓が潰れてしまったような感覚があった。
あんまり一気にやったらダメなのかも‥‥下半分からは血抜きできたので、後は自然に任せて放置しよう。
う~ん。これいくらで売れるんだろう。
昨日の計算で行くと、20kgくらいなので、血/内臓/骨を抜いた1/4が食肉にできるとして日本の安めの豚肉の値段として、100gで200円と予想すると、1万円程度なのかな。
こっちでいう所の銀貨1枚か‥‥。
ただ、問題は重すぎると言う事か。
切って運んでもいいのかも知れないけど、解体方法がわからないので売るならそのままがいいな。
切ったら、ヘビ革もウサギの皮同様に下手に切ると値段が下がる可能性もある。
今日は、昼まではここに居る予定だったし、もっと狩ってからどれを持って帰るか決めよう。
「他の獲物を狩って来るよ。アリスはもう少し待っててね。」
「うん。」
アリスは、ヘビの死骸が気になるようで、そっちを見つめたままうわの空で返事をしている。
確かに、町中でもヘビは見るけど、小さい奴だけだもんな。まあ、こんなデカいヘビ町中に居たら大騒ぎだろうけど‥‥。