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これくらいかな・・・。
まあ、ある程度蓄えておきたいと言うのもある。
俺が、もしも何らかの拍子に、日本に帰ってしまったら、
アリス達が生活に困らないようにしておいてあげたいしな。
まあ、今ならケニーさんが面倒見てくれるとは思うんだけどね。
露店の方は順調で、どの店も毎日売切れている状態だ。
それぞれの商品は400食限定にしていて、それが売り切れているので、
売り上げはかなりの金額になっている。
1日の売り上げは、大体銀貨332枚。
日本円にして、332万円だ。
半額はケニーさんの所に行っているので、俺の所に入るのは166万。
素材をそのまま納品していた時には、1日7万円だった事を考えると、各段に上がった。
マディは下ごしらえにはもう入ってないので、クシェル達の手が離れたら、
素材だけでこの金額が上がる事になる。
まあ、ハーブの粉末を作ったり、細かい塩を作ったり、
肉を熟成したり、獲物狩りと、多少俺がやらないといけない物もあるし、
解体はアリス達が頑張ってくれているので、
まったく手間がかかってない訳ではないが・・・。
ケニーさんも売り上げに、かなり興奮していて、商人魂全開で働いているようだ。
加工工場には16人揃って、その内2人はリルの手伝いを行ってくれている。
受注生産の魔法の回復薬も、ケニーさんの商会で販売を開始しており、
日持ちする事で徐々に人気が出始めている。
話を聞きつけて、わざわざ買いに来てくれる人も出て来た。
こちらの売り上げは安定しないが、利益が大きいので悪くない売り上げだ。
軟膏については、開発は壁に当たっている所だ。
蜜蝋を取って、軟膏を作る所まではうまくいったのだが、魔法薬自体に水分が多すぎて、
軟膏にすると硬さが保てなくなる。
魔法で水分を抜けば出来るのだが、それだと俺にしか作れない物になってしまう。
その為、方法を検討していたが、俺の作った遠心分離機によって解決した。
防具の販売もケニー商会にて始めている。
と言っても、まだ始めたばかりで全身鎧は1つ、手足のみが1つ売れただけだ。
ケニーさんとの相談で、元々販売している防具屋と敵対してしまう事になるので、
当初はあまり需要は見込めないが、女性専用の防具のみの販売としている。
クシェル達の装備を見て、欲しがる客が少なからず居たと言うのも、
女性のみにした理由の一つだ。
販売している鎧は、クシェル達の鎧とそれほど形は変わらないのだが、
いくつか違いを設けている。
まずは、素材はアリを使い、圧縮はほぼしていない。
その為、それほどの硬度は無いし、少しごついのだが、
魔獣に殴られても少し欠ける程度で防げるはずだ。
刃の付いていない、一般的な剣では鎧を切る事は出来ないだろう。
ただ、突かれると欠けるくらいはするかもしれない。
あとは、耐衝撃性能は低い。
革を内側に当てているだけで、低反発的な物は付けていない。
殴られると、それなりに痛い。
それでも、今までの胸当てだけの装備に比べれば、各段に死ににくくなっているし、
重さも動きにくさもそれほど変わらない。
武器の販売については、今の所やってない。
武器は、なかなかいい感じに、弱めの物を作るのが難しい。
鋼にするだけで、武器としてはかなり強くなってしまう。
だからと言って、鉄のままで刃を付けるのも、強くなる。
鏡面ピカピカな、見た目だけ武器って言うのも考えたけどこれじゃあ売れない。
変わり種の変わった武器も同様だ。
という事で、武器については良いアイデアが出るまでは、販売しない方向で考えている。
ケニー商会としても、5人ほど雇ったようだ。
その為、ケニーさん本人は余裕が出て来たようで、
ウィダスにも露店を作ろうという話になってきている。
開店には、ケニーさんもウィダスに行って、加工工場を借りたり、
露店許可なんかを取らないといけないそうだ。
ケニーさんはほぼ欠かさず、朝晩の食事は家でしている。
マディの料理がかなりお気に入りだし、薬剤の知識をリルに教えて貰ったりして、
なかなかに家に馴染んでいる。
そういえば、全員文字も計算も覚えたので、ケニーさんには教材を返した。
今は、俺の作った教材で算数の勉強をみんなでやる事がある。
九九を暗記したり、掛け算、割り算の筆算を教えて上げている。
これには、ケニーさんも興味があり一緒に勉強している。
一応、小数や分数、グラフや面積の求め方くらいまではやって行こうかと思ってる。
そこまで理解出来れば、いろいろと役に立つはずだ。
獣人の村では、畑の作付けを始めた所だ。
家はすべて完成して、新しい村での生活にも慣れてきている。
水牛は数匹確保してきて、牛舎を作って育てて貰っている。
子供を産んでいるメスも居るので、乳を搾って生乳を手に入れている。
こちらも、生乳を遠心分離器にかけて、生クリームと牛乳に分けて使っている。
畜産が出来るように、今後いろいろ検討もしてもらっている。
子供を産ませて、小さな頃から育てれば、今みたいに暴れないので、
乳も絞りやすいだろう。
それに乳を絞る為にも、子供を産ませ続けないといけないので、
子作りの方法なんかも考えて貰わないといけない。
牛と言っても、獣なので暴れられると普通の人ではひとたまりもないからだ。
乳しぼりはまだしも、交尾させる時にはすっごい暴れそうだ。
アイカを出てから1か月経つが、まだ他の町へは行ってない。
別にこれと言った理由がある訳ではなく、いろいろな雑用をこなしていたら、
他の町に行く時間がなかなか取れなかったと言うだけだ。
もちろん急ぐわけでも無いので、先に雑用周りを片付けてから、ゆっくり行こうと思う。
時間が空けば空くほど、王国側からの手配も緩くなるだろうしな。
俺個人の成果としては、まずはいろいろ作成する為の、専用工房を作った。
今までは、物作りはリビングかアイカの倉庫でやっていたんだが、
アイカの倉庫は騎士団とかに、乗り込まれたらとか考えると集中できないし、
リビングでは、手狭になってしまったのだ。