6-1
俺が町を出た事にした日から、1か月ほど経った。
貴族が俺を探している件だが、ケニーさんの方にはなんの連絡もない。
ただ、俺の倉庫には何度か騎士団が集まっていたと言う話だそうだが、
倉庫の中に踏み入ったりはしていないそうだ。
アリーヤに倉庫の近所まで行って貰い、確認して貰った所、監視は付いているそうだ。
倉庫に踏み込まない所を見ると、敵対したい訳ではない様子なんだけど・・・。
やはり、あの騎士の突発的な行動な気がする。
ロベルトさんの所にリルに行って貰い、俺の話がどう出ているのかも確認してもらった。
大銀のハルトが、門から出ようとした場合、「領主様からの呼び出しがあるので、
すぐさま連絡し、待って貰うように」との達しが出ているそうだ。
ただ、貴族同様に接しろと言明されているそうで、やはり敵意は無さそうだ。
ただ、この命令が出てしまっているので、俺はいまだアイカの門はくぐれていない。
ギルドマスターからの話は、ブラントさん経由でクシェル達が聞いて来た。
やはり、騎士団所属の警備本隊長が、ギルドマスターの部屋に居たとの事だ。
警備本隊長は、アイカの町の警備の最高責任者だそうだ。
あの日、ギルドマスターの所に来た目的は、盗賊村のリストを受け取るのと、
俺の事の情報収集だったそうだ。
呼び出し自体は、1週間後くらいの予定になっていたそうだ。
ただ、俺を見て何かを感じた様子だったそうで、明日出るとの話と相まって、
何らかの実力行使に出たのかもしれない。
そして、その行動に対して口止めまでしていたので、独断の話っぽいとの事だった。
攻撃するような話は聞いてなかったどころか、
協力を要請するくらいの対応で行くとの話だったし、
その話は、警備本隊長自身の口から言われた事だそうだ。
警備本隊長が、魔術師かどうかについても分からないらしい。
けれど俺を見て態度が急変したって事は、
やはり魔術師だったんじゃないかな。
魔力視が出来るんじゃないかと思われる。
しかも、俺同様に相手の魔力が分かるやつ。
なんの魔法もやってなかったら目立たないんだけど、
あの時は、反射の魔法で体を包んでたから、魔力視で見れば魔法張り続けてる事は、
一目瞭然だったんだろうな。
今後の為にも、対策を考えないといけないな・・・。
その後、ギルドマスターにはなんの情報も降りて来ていないそうだ。
露店の方にも、騎士団からなにかあったりはしていない。
結局、貴族側は紳士的に俺に会いたいって事で、
ただ、その意に反して警備本隊長が要らない事をしたって感じかな。
どっちにしても、貴族とはあまり関りになりたくないので、無視するけどね。
冒険者村の討伐については、無事討伐は完了して騎士団が帰って来ているらしい。
完全に殲滅戦だったそうで、逃げ切れた盗賊は居ないという事だ。
ただ、一緒に近隣の農村も殲滅の対象となったそうで、
周囲の農村の農民達もかなりの数が殺されたそうだ。
冒険者村から農民は離れるようにと指示していたが、無事ではないのだろうな。
逆に退避を指示していた事で、周りの農村の殲滅もされたのかもしれない。
俺はまだ、この世界を甘く見てたのかな・・・。
逃げるならもっと遠くまでと指示すべきだったのか・・・それも難しかったか。
そして、なぜか騎士団にレスリーの私兵が参加していたようだ。
レスリーはなにかしようと思ってたのかは分からないな。
結局殲滅されてるので、何も出来なかっただけなのかもしれないけど・・・。
露店の方はと言うと、3店舗目もオープンし、予定通りに冒険者ギルド前の商品を、
野菜炒めとスープに変えた。
南門前の、シカ肉もかなり売れており、予想を外してウサギ肉も連日売り切れている。
ケニーさんが言うには、うまいので好評と言うのもあるのだが、
王都に行くような商人の意地と言うか、高い商品と安いのがあったら、
高い方を選ぶ習性があるそうだ。
要は、見栄なのかもな。
冒険者ギルド側の新しい商品も、大人気だそうで、
目論み通りに、客層が冒険者に移って行っているそうだ。
現在、露店は5人体制で行っている。
護衛と呼子の2人と、売り子1人に、調理担当を2人にしている。
人が雇えた事で、調理をクシェル達から雇った子に引き継ごうとしている。
ケニーさんが雇った人間である方がいい事と、
クシェル達にはほかにもいろいろやってほしいからだ。
そういえば、クシェル達には給料は払ってない。
マディやリルにもそうだ。
アリス達にも払ってない。
食事には困らないし、住む所も困らないという事で支払ってない。
生活費は、俺というか、みんなで稼いだお金でやってる。
町に行く時には、ある程度お金は持って行って貰ってるし、
ある程度、好きにに使っていいと許可は出してるんだけど使う事もないし、
多分使う事自体がないんだろうね。
食材と衣服、あとは少しの消耗品と、足りない野菜の補充以外は、
今の所購入の必要もない。
武器や、装備は俺が作った方がいいし、料理はマディの方がいい。
おしゃれに興味は無いみたいだし、お酒を飲む訳でもない。
後は賭博とか、施しくらいだけどそんな趣味も無いので、使う事が無いんだろう。
たまに、日々外に出ている、クシェル達が使うのは、
冒険者ギルドでランクを上げる為の手数料を取られるのと、
消耗品や野菜を買って帰る時くらいだ。
倉庫の家賃もいらなくなったし、お金を使ってやれる事を増やすのもいいかもしれないな。
例えば、奴隷を買うとか、魔道具を買い漁るとか、制服の作成とかかな。
後は、なめした皮も、使い勝手が良いのでまとめ買いしておくのもありだな。
他にも、陶器の食器も余裕ほしいし、
貴族が着ている服の、染め方を知っている人を雇いたい。