バーナード視点
俺は、ケニーさんの所の護衛が休みの時には、冒険者ギルドの訓練場に来て、
訓練を行っている。
銀ランクになってからは、休みの度にここで訓練をするようにしている。
大銅ランクまでは、人と戦う事なんてなかったのだが、銀ランクになってからは、
盗賊退治や、護衛など人に対して戦う方が、仕事が多くなったからだ。
狩りの仕事が無いわけではないが、狩りでは人数を集めないといけないし、
指揮する人によって生存率が格段に違うのだが、
俺達のパーティーみたいに、良い指揮官とつながりが無いような奴は、
指揮なんてほとんど無しで、突っ込むだけの狩りに行かざる得ない。
護衛や盗賊退治に危険が無いわけではないが、どちらも人数を集めるのは、
依頼主側の仕事になるので、仕事としての面倒は少ない。
そして、自分たちの生存率を上げる為に、良いリーダーを一緒に雇ってくれる。
その為、そっちの仕事メインになっていた。
ケニーさんの所で雇って貰った事で、さらに人との闘いの可能性が高くなったので、
ここでの対人訓練の重要性は上がった。
ここには、クシェルと、アリーヤ、ファギー達も訓練に通っている。
露店で働いてた、ただの売り子や調理人と思っていたのだが、
あれから数か月で、今や訓練に来ている銀ランクの、中堅どころにいる。
それに、ブラントさんの直弟子と言う事だ。
他にも、数人の大銀が直接教えてるって話だし、かなり期待されているようだ。
ケニー商会絡みの仲間なので、よく話をする。
最初は、ケニーさんに雇われているのかと思ってたのだが、
ハルトさんの仲間?と言う事だ。
クシェルに言わせれば、仕えてるらしい。
ハルトさんには、俺も返せないような恩義があるので、
出来るだけ面倒を見るようにしている。
クシェルは、ブラントさんに経験と体力を付けろと言われているらしく、
いつも銀ランクの連中に交じって、戦闘訓練を行っている。
アリーヤは、変わった武器を持っているので、武器の訓練と、
斥候としての動きの訓練の為に、大銀ランクの斥候の人に付いて教えて貰っているそうだ。
何処に行ってるのか分からないが、訓練場に居る事はあまりない。
ファギーも変わった武器を使っているのだが、同じ武器を使っている、
大銀ランクの人が居るので、その人に鍛えられているようだ。
なかなか難しい武器らしく、大銀ランクの人が付きっ切りで修練している。
3人共本当に強くなった。
最初来た時は、大声で威嚇しただけですくんでいたんだが、
今や対峙しただけで、俺がすくみそうになるくらい強くなった。
1対1なら、クシェルには半分くらい勝てるかな。
アリーヤは分からないが、ファギーならまだ負けないだろう。
ただ・・・あの鎧が無かったら・・・だな。
あれは反則だ。
おとぎ話に出てくる、ゾンビを相手にするとあんな感じなのかもしれない。
殴っても、蹴っても、切っても、何事も無かったかのように向かって来る。
勝つためには、体力を奪って力尽きるまで、殴り続けるしかないって代物だ。
ブラントさんに、痛みを感じるのも修行だと言われて、
鎧なしで訓練をしている事もあるので、その時にしか俺に勝機はない・・・。
3人が、ここで訓練を始めた事で、女の冒険者が訓練に顔を出す事が多くなった。
ほとんどは大銅ランクの奴らばかりだが、銀ランクの奴や、
大銀ランクの女冒険者も来るようになった。
大銀ランクの女冒険者は、クシェルの事を気に入って、仲良くなっていたようだ。
数日後には、おそろいの鎧を着ていたからな。
あの鎧は、俺も欲しいと思ってケニーさんに聞いたんだが、金貨2枚もするそうだ。
それに、女性用のみの販売らしい。
大銀ランクにまでなると、金貨2枚を出せるようになるんだな・・・。
って、クシェルは・・・ハルトさんに出して貰ったんだろうな・・・。
そういえば、3人共男にも、女にも大人気だ。
3人共、他の冒険者と違って、肌は綺麗し、髪も美しく整っていて、
体つきもふっくらとして魅力的だ。
貴族の姫様かと思うほどに、整った身なりをしている。
そういう事を目的に近づいて来る奴らもいる。
ブラントさんの直弟子に手を出す冒険者は居ないが、商人なんかからも、
求婚されたらしいが断っているらしい。
ハルトさんの所以上に、裕福な家なんて貴族様の所くらいだから、そりゃ断るわな。
ハルトさんは、町を出てもう数か月経っているが、その後の話は聞いていない。
大銀のハルトが子供の容姿をしていて、魔法使いだと言う噂は、町に広がっている。
そして、領主様が探しているとの事だ。
その為、俺やケニーさんが知り合いだとばれて、面倒に巻き込まれないように、
ハルトさんの名前は出すなと、ケニーさんに止められている。
ハルトさんが、魔法使いだって噂を聞いて、俺はいろいろ腑に落ちた。
出会った時の、傷の無いグリズリーベアを戦いの跡がない場所で発見したのもそうだし、
フェルトの奴に、魔法の回復薬を惜しげもなく使ってくれるのもそうかもしれない。
ハルトさんとクシェル達の関係も良く判らないな。
クシェルが言うには、ハルトさんは命の恩人という事だそうだが、
じゃあなんで、ハルトさんはあそこ迄、いろいろ便宜を計ってるんだろう?
助けられたのは、クシェルの方だと言うのに。
ブラントさんへの口利きに、あの鎧もオーダーメイドなんだそうだ。
かなりの金をかけている。
ハルトさんは、子供だから妾や愛人目的って訳でもないだろうし・・・。
う~ん。クシェル達の忠義心は本物だ。
そう言う意味では、信用出来る部下なんだろう。
その部下を育ているって所なのかな?
それでも、ハルトさんの見る目は素晴らしかったって事だな。
あの3人は、強くなる。
大銀ランクまで行けるかは分からないが、銀ランクでも上位の実力者にはなるだろう。
今でも、クシェルは黒鎧って呼ばれてそれなりに敬意を払われるようになっている。
アリーヤやファギーは、今はまだまだだが、これから強くなっていくだろう。
俺も精進しないといけないな・・・。
その内あいつらに、ケニーさんの護衛の仕事を取られかねないしな。