47.旅立ち
冒険者ギルドに行って、いつものようにギルドマスターの秘書っぽい人に、
ギルドマスターへの面会をお願いして待合室で待つ。
ギルドマスターの部屋に1人人がいるようで、その人との面談している最中っぽい。
呼ばれて、ギルドマスターの部屋に入ろうと思ったが、まだ中にその人はいるみたいだ。
なんだろ?いつもは俺が入る時には、全員追い出してるはずなんだけど・・・。
扉に近い所インいるとか、襲って来る感じでも無いのでいつもの通りに入り挨拶する。
「こんにちは。」
「ああ。ハルト。」
様子が変だな・・・。
まあ、話だけして早々に帰るか・・・。
「明日、町を出ます。」
「明日か・・・。ポスタリアだったか?」
「ええ。その挨拶にきました。一応手土産です。」
ブラントさんの分もあったんだけど、そんな雰囲気でもなさそうなので、
ネギ焼を2つとも机の上に置く。
「新しい食い物か?」
「西門の所にも、露店が出来たのでそこで売ってる商品です。」
「・・・ありがとう。後でいただくよ。」
「じゃあ、俺は帰りますね。お世話になりました。」
「ああ。気を付けていくんだぞ。」
明らかに、よそよそしいし態度がおかしい。
後ろに居るのは、意にそぐわない相手って事だな・・・。
貴族絡みの人間なのかもしれないな。
俺の顔を見たいとか、そんな感じで居たのだろう。
早々に退散を決めて、俺は冒険者ギルドを出て倉庫に向かう。
さっきの奴が追いかけて来てる。
急いだ方が良さそうだ。
通りを早足で倉庫に向かう。
さっきの奴も、かなりの速度で追いかけてきているようだ。
これは・・・追い付かれるな。
路地に入り、見えない所に入って、追い風で一気に突き放してしまおうと、
路地に入りかけた所で、後ろから違和感を感じて振り返る。
「魔法か!」
こうなったら、もうバレないようにとかなんて言ってられない。
魔法を弾いてしまって、反撃をしようと思ったが、魔法を放った相手を確認すると騎士団だ。
騎士団に攻撃したとなるとまずい。
王国と敵対するのは、覚悟もしているが可能なら、敵対せずに不可侵くらいに持って行きたい。
俺は反撃せずに、当初の想定通りに逃げる事にする。
路地に入り、すぐさま追い風を使い高速移動を開始する。
魔法の触手はまだ追いかけてきており、曲がっても追従してくる。
俺に放たれた魔法は、通常の触手ではなく、弾のようになって追いかけてくる。
なんだこれ?こんな事出来るのか?
どっちにしても、こんな事が出来るのは・・・魔術師か!
このまま逃げているだけでは、路地を抜けて通りに出てしまう。
こんな速度で通りをかけ抜ける訳にもいかないので、周りに人が居ない事を確認し、
亜空間への入り口を出し、飛び込みすぐさま入り口を閉じる。
亜空間の中まで追いかけてくる事はなさそうだ。
あれに当たったら、どんな魔法が発動するのか分からないが、突然の攻撃か・・・。
王国なり、領主と言うのは、そういうつもりという事なんだろうか?
それとも、あの騎士の恰好をした魔術師が、独断で暴走しただけなのか?
どっちにしても、攻撃された事から、もう町に顔を出すのはやめた方が良さそうだな。
明日の朝に、町から出るって話を聞かれたので、門は監視もしくは、封鎖されるだろう。
ロベルトさんには申し訳ないが、明日は門からも出ずに失踪する感じになるな。
ほとぼりが冷めてから、出発した風を装おう。
でも、騎士団の恰好だったのに、魔術師なのか・・・。
鎧とかも着ていたし、帯剣もして居たっぽいので、魔法剣士って感じなんだな。
まさか、こんな不意打ちで襲って来るとは思ってなかった。
しかも、俺が冒険者ギルドに行ったのは偶然なので、その機会に襲うと言うのは、
突発的な感じなんだよな・・・。
これは、みんなにも少し警戒して貰った方がよさそうだな。
もしも関係がばれているのであれば、クシェル達や、ケニーさんがさっきの奴に、
襲われる可能性があるって事だからな。
すぐに危険って事は無いだろうから、今晩にでも対策をしよう。
俺は家に戻り、家に居たリルには事情を話し、町に戻れなくなった事を伝える。
町に出る時には、必ずクシェル達と一緒に行くようにする事を話しておく。
その後、ケニー商会にも顔を出すがケニーさんは出かけてしまっているようで、
探しに行く訳にもいかず、そのまま戻って来る。
とんだ町からの出立になってしまったけど、まあそれはそれで仕方ない。
町に出入り出来なくなった所で生活が変わる訳でもない。
表立って、動くのがケニーさんやクシェル達になるだけで、後は何も変わらない。
警戒対象が少し増えるだけで、いままで通りではある。
この世界に来てからほぼ3か月・・・。
帰る手段よりも、安全で安定した生活を求めていろいろやって来たけど、
当初の目的は大体達成できたはずだ。
俺の事は貴族達に、バレてしまったけど、俺から動かない限りは見つかる事も無いだろう。
少し仲間が心配ではあるけど、その辺りは準備をしておけば何とかなる。
獣人に接した事で、この国もなんだかいろいろ裏がありそうな気もするし、
情報集めも含めて、いろんな町に行って拠点を作ったり、
ケニー商会の普及をしたりしてみよっかな。
研究や検証をしないといけない事もいろいろ残ってるので、これらも片付けて行きたいな。