46.出発予定
ケニー商会の前の通りは、いつもよりも格段に人通りが無い。
おかしいと思いながら、露店まで行くとやはり露店は暇そうだ。
店内にケニーさんが居たので声をかける。
「なんか人通りがないですね。」
「ええ。そうなんです。今朝から騎士団が出る為に、西門が閉鎖されてたんです。」
「あら・・・。タイミング悪い開店だったんですね。」
「そうですね。昼から解放されたので、これから人が出るかも知れませんが、
今日はあまり見込めないかもしれませんね。」
一日ずらして開店すれば良かったかな?情報は仕入れてたのに、生かせないのは失敗だな。
まあ、これは仕方ないか・・・練習には丁度良かったとポジティブに捉えよう。
明日からが本番だ。
「さっき、冒険者ギルド前でも、こっちの宣伝してもらうように話してきましたので、
もう少し人が流れてくるかもしれません。」
「それは助かります。」
「お願いがあるのですが。作物の種と苗を手に入れて貰ってもいいですか?」
「種と苗ですか?」
「ええ。獣人達に育てて貰おうと思ってるんです。」
「なるほど・・・。了解しました。今晩にはお持ちするようにしますね。」
「ありがとうございます。」
そういえば・・・サーチしてみても、レスリーの間者が居なくなっている。
「レスリーの間者は居なくなってますね。」
「そうですね。連絡が行ったのかもしれないですね。」
「まあ、亜空間出来たので俺はこっちで出入りするから、関係ないですけどね。
それに、町を出てポスタリアに行くので、町に顔を出す訳にはいかなくなりますから。」
「いつくらいに出ますか?」
「う~ん。ケニーさんに後はお任せ出来そうですので、
もう、いつ行ってもよさそうな気はしてるんです。
領主側からの追及が来るのが面倒なので、明日にでも出てもいいですね。」
「分かりました。」
「あと、お借りしていた倉庫なのですが、返却してもいいですか?」
「返却ですか?」
「ええ。ケニーさんと俺のつながりを少しでも減らしておきたいのです。
と言っても、レスリーやドウェイン子爵にはばれてますが・・・。」
「そうですね。了解しました。」
「あと、町を出てほかの町に行った時に、拠点を作っていきたいんですけど、
ケニー商会の名前で借りてもいいですか?」
「もちろん大丈夫です。でも、ハルトさんでは難しいのでは?」
「クシェル達に頼んで、借りて貰います。
もしくはケニーさんにご足労願うのも有りかと・・・。」
「そうですね。ケニー商会名義なら私が出向いた方がいいでしょう。
いつでもおっしゃってください。」
「あと一つ心配なのは、俺が町を出た後に、ドメイン子爵から領主へ話が行っていれば、
ケニーさんの所に俺を探しに来るんじゃないか、と言うのがあるのです。」
「そうですね。確かにその可能性は高いですね。
ですが、ただ雇ったってだけではまずいのでしょうか?」
「う~ん。それでも良さそうな気もしますけど、それだけでは追及されそうな気がします。」
「そうですね・・・。そうだ!報酬として、倉庫を渡したと言うのはどうでしょう?」
「倉庫ってあの倉庫ですか?」
「ええ。それだけの報酬を出してでも、今回の貿易は成功させたかった。
って話なら信憑性はないでしょうか?」
「確かに、それだけの報酬で雇ったのなら、護衛外の事もやってくれそうな感じですね。」
「ええ。ですので、先ほどの倉庫の返却の件は無かった事にしましょう。
名義変更の手続きは明日にでもやっておきますね。」
「いいんですか?これから忙しくなるから、倉庫は必要じゃないです?」
「いえ。倉庫以上の利益を貰えそうですので、必要ならまた確保します。」
「なるほど、了解です。加工工場がありますので、
しばらくは使う事は無いので閉鎖する予定ですが、ありがたくいただいておきます。」
「では、町を出る為に、挨拶だけ回ってきます。」
「はい。では、今日の夕飯におじゃましますね。」
「お待ちしてます。」
俺は、ケニー商会を表から出て露店に寄り、ネギ焼を4つ購入した。
一応自分の店だが、半分はケニーさんに売り上げになるので、ちゃんとお金は払ってる。
まずは、ハーリさんの所だ。
ハーリさんも、ロベルトさんも家にいたようだ。
「こんにちは。」
「おお!ハルトじゃないか。」
「町を出る事にしたので、ご挨拶にきました。」
「町を出るのか?どこに?」
「ポスタリアに行こうと思ってます。ほかにもいろいろ行くかも知れませんが・・・。」
「ポスタリアとは遠いな。」
「まあ、ふらっといろいろ放浪しようと思ってます。」
「・・・そうか。寂しくなるな。」
「そうだ、今日から露店でやってるんで、お土産です。」
「ん?なんだそれは?」
「ネギ焼きって食べ物です。肉とネギをライ麦粉でまとめた食べ物です。」
俺が机の上に置いた包みを、ロベルトさんはすぐさま取って口に運ぶ。
「うんまい!!」
ハーリさんも包みを受け取って、
「美味しい!あら?マディの味付けじゃないかしら?」
「さすが、ハーリさんですね。」
「やっぱり!分かるわよ~。こんなおいしい料理作れるのはマディくらいですもの。」
「露店でいつでも買えるようになってますので、良かったら買ってくださいね。」
「分かったわ!是非買いに行くわね。」
「じゃあ、俺は行きますね。ロベルトさん、明日朝に南門行きますのでよろしくです。」
「ああ。待ってるそ。お土産ありがとよ。」
俺は、ロベルトさんの家を出てから、冒険者ギルドに寄る。
露店は、もう撤収した後のようで、今日も順調だったみたいだな。