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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
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12.アリスと水浴び


街道の橋についたら、川に降り昨日の水浴び場所に移動する。

空気を圧縮・解放して大きな音を鳴らしてしまった場所だ。

まだ早朝なので、少し肌寒くはあるんだけど、先にアリスを洗ってあげたい。

髪の毛も切って、魔法の説明も合わせてここでしてしまう予定だ。


冒険者ギルドに行く為に、急いではいるけど時間次第では明日に回しても問題ない。

まだ食事代はそれなりに残っているからね。


周りにも獣なんかの危険な生き物はいなさそうだな。

「じゃあ、水浴びしよっか。」

「うん。」

「服全部脱いで、一緒に洗ってしまおう。」

「わかった。」


俺たちは、裸になって川に入っていく。

水の中に膝くらいまで入って、それぞれで体を水に濡らしながらきれいにしていく。

それと一緒に、着ていた服も洗って行く。

俺の服は、軽く洗うだけにして、アリスの服をしっかりと洗ってあげる。

しっかりと言っても、余りごしごしするとそれだけで穴が開くので、擦らないように水何回もさらして洗っていく。

搾っても破けるので、軽く水をはたいてから木の枝に掛けておく。


「背中も洗うね~。」

「うん。」

アリスの背中や、髪の毛も、紐を解いて洗ってあげる。

アリスの髪の毛を水につけながら、きれいになるまで水で洗い流していく。

やっぱり、ところどころ固まってしまってて、水では落ちない部分がある。

水に浸して、ぐりぐりしてみるが、取れないなぁ~。


「やっぱり髪の毛切らないとダメだね。」

「え!?このままでいいよ。」

「俺もそうだったんだけど、汚れが落ちなくて固まっちゃってる部分があるんで、1回切らないとだめなんだ。」

「‥‥そうなの‥‥わかった。」

「この辺とか固まってて取れそうにないんで、今回は少し短く切ってしまっていい?」

「そだね‥‥。うん、短くして。」

「俺も切って、すっごいすっきりしたから、短いのもなかなかいいよ。頭も軽くなるしね。」


川辺に服を脱いだ時に置いておいた、短剣を取って来てアリスの髪の毛を、肩くらいでバッサリと‥‥あれ?切れない。

短剣を見てみると、刃がついてないんですけど‥‥。

これじゃあ切れないのは当たり前だ、買う時に刃まで見てなかったな。


もしかして、騙された?

いや‥‥そういう物なのかもしれないな。

作りも全体的に適当な感じだし、手作りなのに量産品なので、刃を砥いでいないって事なんだろうな。

この世界の雰囲気的にも、いい品物が普通に売っている事はないだろうしなぁ~。

必要なら、自分で研いだり削ったりして使えよ!って感じなのかも。

石のナイフ作ったみたいに、魔法で何とかしてみるか。


「ちょっと買ったナイフがあんまりなので、少し待ってて。」

「うん。」


俺は裸のまま、川辺の石に座り短剣とにらめっこする。

魔法で、刃を研いでいく‥‥いや、研ぐと削れるから石の時みたいに圧縮して整形していく方がいいのかな?

石と違って、圧縮して折れる事はないだろう‥‥たぶん。


でも、どうせ加工するなら、形も変えて使いやすいように変えるのがいいな。

髪を切るのに理想はハサミなんだけど‥‥ナイフを挟みにってどう考えて無理っぽい。

ならば、ナイフのままでいい感じと言えば、サバイバルナイフかな。

サバイバルナイフって、片刃は少し反り気味に刃がついてて、逆の刃はギザギザになってて、布やロープが切りやすい感じになっているやつ。

これなら、解体とかでも使いやすそうなので良さそうだね。

鞘があるので、持ち手の部分や刃の長さが変わらないよう気を付けないといけないな。


あ‥‥ついでに不純な成分を除去すれば、鉄も硬くなるので良いのかも。

鉄を使ってた古い時代は、炉の温度が余り上げられなくて、不純物が多かったって話を聞いた事がある。

とくに炭素が多くなってしまったせいで脆く、折れやすかったって話だから、炭素や不純物と言うかごみのような物も混ざっているのでこれも除去してしまおう。ただ、炭素は減らし過ぎると柔らかくなるのである程度残すように注意だな。


これらを先に除去すると、ごみが固まっていた部分が折れてしまいそうなので、圧縮しながら整形して同時に不純物を抜いて行くと言う作業をしないといけない。

いろいろ同時に意識して行かないといけないので、かなり集中してやらないと失敗してしまいそうだ。


やる事は決まったので、ナイフに魔力を纏わらせて、作業をはじめる。

形だけでなく、刃もしっかりと切れ味が出るように成形していく。

途中で折れたりしない事を祈りつつ‥‥成形を続けていく。

ナイフから不純物がポロポロとこぼれ、炭素が表面に浮き出て刀身は真っ黒になり、圧縮・整形されて徐々に俺のイメージしている形に変化して行く。

5分ほどで、大体思い通りのサバイバルナイフになった。

‥‥大体と言うのは、想像よりも細くなってしまった。

ごみとか、炭素とか抜いた事で思ったよりも、成分が抜けたのか元の半分くらいの細さになってしまった。

元も結構細かったのに‥‥元がくだものナイフとしたら、今は包丁セットとかのおまけで付いて来る、トマトスライサーや、ハサミの片側くらいの細さになってしまった。

強度の為に、厚みはこれ以上減らせないので仕方ないか。

切れて折れなければ太さはどうでもいいしな。

逆側にでこぼこ刃も付いているし、使い物にはなるだろう。


炭素を出した事で、刀身に煤が付いて汚れてしまっているので、近くの葉で刀身を綺麗に拭き取る。

刃は綺麗な鏡面になっており、刃もカミソリのように鋭くなっている。

そのあたりの雑草を軽く凪いで、切れ味を確認してみた。

うん‥‥素晴らしく切れるな。

狩りもいいけど、これを売るのもありかもしれない。

‥‥でも元のナイフの品質から考えて、ここまで品質を上げた物を売るとするとかなりの値段になってしまいそうだ。材質、切れ味、使い勝手とかなり向上してしまっている。いったん保留だな‥‥。


「お待たせ~。髪切れるようになったよ。」

「ん?さっきとナイフ違う?」

「ちょっと改良したの‥‥切ってくね。後ろ向いて。」

「うん。」

今度はサックリとというか、手ごたえもほとんどなく滑るように切れた。

「大体肩にかかるくらいまで切っちゃうね。」

そういいながら、腰まであった髪を肩くらいまでできれいにそろえてあげる

後ろだけでなく、前や横も綺麗にそろえて切ってあげる。


人の髪切るなんてはじめてだけど、思いのほか楽しいかもしれない。

元が長いから、失敗してもさらに切れば誤魔化せるし‥‥。

「良し。こんなもんかな。もう1回頭洗ってきて。」

「うん。」


「なんかへんな感じ‥‥。物足りないというか‥‥。」

そだよね~。ハルトもそうだけど、多分はじめての散髪だったんだよな。

俺は、日本の記憶があるから違和感ないけど、アリスは違和感多いのかもな。


「こっちに来て、ここに座って。」

今度は、魔法でドライヤーをやってみよう。

まずは、それほど熱くないくらいの熱の塊を作る。

そこに風を通して、俺の手に当てて温度を調整していく。

「髪の毛乾かすから、じっとしててね。」

「うん。」


魔法ドライヤーで、髪の毛を乾かそうと風を当てると、アリスがびっくりして飛び上がった。

まさに飛び上がった!

「なにしてるの!」


「え?え~っと、アリスの髪の毛乾かそうとしてるの。」

「そうじゃなくて、魔法使ってるでしょ!」

「うん。」

「そんなの使っちゃダメ!魔法使うと気絶しちゃうでしょ!」


あ~そっか、先に魔法の説明した方がよかったか。

順番を間違えたのかも‥‥。

でも風邪引くから、先に乾かしてあげたいんだけど、仕方ないか。


「これが、昨日から外に出てた理由なんだよ。」

「どういう事?」

「ほかの人には秘密にしてないとダメなんだけど、昨日から魔法を使っても気絶しなくなったんだよ。」

「そんな事ない!」


そんな事あるんだけど‥‥。

アリスは、こっち向いて立っているんだけど、俺は、アリスの髪の毛をめがけてドライヤーの風を当て続けて見ている。

「ハルト!辞めなさい、気絶しちゃうでしょ!」


「大丈夫になったんだよ。昨日はこれでウサギを狩ったし、さっきのナイフも魔法で作り直したんだよ。」

「本当に?そんな事聞いたことないよ。」

「だから、秘密にしないとダメなんだ。魔法がいくらでも使えるようになったら、大人は悪い事に使えると思って、俺を攫いに来るから。」

「本当にそうなら、そうだけど‥‥。大丈夫なの?」

「うん。さっきからずっと魔法使ってるけど大丈夫だろ?」

「‥‥そうだね。」


「こっち来て、髪の毛乾かすから。じゃないと風邪引いちゃう。」

「うん。」


アリスは、さっきの所に座ってこっちに背を向けてくれたので、ドライヤーの風を当てて髪の毛を乾かして行く。

「こんな長い時間、魔法使えるなんてすごい‥‥。でも、孤児院でも魔法の才能のある子は、どこかに連れて行かれちゃってたから、見つからないようにしないいけないね。」

「そうだね。見つかっても魔法を使って、逃げるつもりだけどね。」

ああ。そういえば逃げる魔法なにか考えとかないといけないな。


アリスの髪を持ち上げながら、ドライヤーで髪の毛を乾かしていく。

「はい。乾いたよ。どうかな?」

「う~ん。やっぱりなんか変。背中が物足りない感じで、頭もすごい軽い。あと頭振ったら髪の毛が顔に当たってこそばい。」


アリスの正面に立って、じっと見て、

「うん。アリス、かわいくなったよ。」

アリスは、目を大きく見開いて、その後真っ赤になって、うつむいてしまった。


アリスの真っ赤なストレートな髪が、肩にかかるくらいのセミロングなっている。

アリスの目の色も真っ赤なので、すごく似合っている。

頬がコケ、体もガリガリで病的に見えるのが痛々しい。

多分、俺も似たような体形なんだろうな。

しっかりと食事ができるようにしていないといけないな。


後は、服を乾かして出発だ。

服は、そのあたりの木にかけてたけど、ドライヤーがあるならそれでやった方が乾くだろ。

ん?ちょっと待てよ‥‥。これも魔法で乾かす事ができるんじゃないだろうか?

水から不純物抜いたり、短剣から炭素抜いたりできるなら、濡れた服から水分抜くくらいはできそうな気がする。


服に魔力をまとわせて、水分だけ分離するイメージするときれいに乾いた。

これってもっと早く気付いていたら、裸でウロウロしなくてもよかったのに‥‥。

まあ、いっかこれからは楽できそうだしな。


「服乾いたよ。」

「これも魔法?」

「うん。服着たら、森に向かおう。」

服を着て、いざ森に出発です。


嬉しそうに笑うアリス。

いつもは気が強くて良く怒られるんだけど、今日は外に出てる事と、いつもと違う事をやっているからか機嫌がいいようだ。


アリスは、今住んでる町ではなく農村で育ったそうだけど盗賊に村が襲われて村を焼け出され、その時に両親も亡くしている。

そのまま町の孤児院に入ったって言ってた。

盗賊は、収穫後の農村や行商を襲って食料やお金を盗むのだが、村を焼いたり商人を殺したりはしない。

アリスの時には、農村側もかなりの抵抗をしたようで、盗賊を何人も殺しやけになった盗賊が村を焼いたそうだ。

子供は抵抗しないし、攫っても用途はないのでそのまま放置されるのだそうだ。

そういった話を孤児院の世話役の人が、アリスに話しているのを聞いた事がある。


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