41.2つめの露店の話し合い
「2店舗ですか・・・いいですね。
露店申請は、後日でも大丈夫ですので、明日にでも私の方で出しておきますね。」
「2店舗目は、ケニー商会の前で出したいと思ってます。商品はネギ焼きを考えてます。」
「別の商品を出すのですか?」
「ええ。それぞれの店舗でそれぞれの商品とする事で、類似品を出すのも難しくなりますし、
いろんな店を回って、それぞれ食べ歩くなんて楽しみも出来ますしね。」
「そんな楽しみ方もあるのですね・・・。
まあうちの前なら気軽に出せますし、商品を変えるのも簡単ですからね。」
「それで値段設定の話がしたかったのです。
ネギ焼きですが、材料はオオカミの肉とネギ、それとライ麦粉、あとは調味料です。」
卵があれば、マヨネーズが作れるんだけど、まだ鶏は見つけてないからな。
ソースを作るにも、砂糖が無いので難しい。
「オオカミの肉って、大丈夫なんですか?」
「ええ。下ごしらえして柔らかくしておくし、臭みも抜くので、
味がしっかりしてておいしいですよ。
これを、銅貨5枚で考えています。」
「シカ肉の半額ですか・・・。出来れば同額くらいが、
いいんじゃないかと思うのですが・・・。」
「確かに、下ごしらえには時間がかかってますが、
気軽に食べれる感じにしたいんですよね。
手持ちでかじり付く感じなので、
高く設定してしまうと気軽な部分が無くなってしまうんですよ。
オオカミ肉なので、材料費はかなり安いですし・・・。」
「ハルトさんは・・・金額が全体的に安め設定されますよね。」
「安いかな・・・。露店での利益は、宣伝も兼ねているので安めでもいいと思うんですよね。」
「他の商売も含めた宣伝って事ですよね。
回復薬や装備なども今後売るとおっしゃってましたね。」
「ケニー商会はまだ知名度はそれほどありません。
ケニー商会の知名度を上げる為に多少薄利でも、
宣伝効果を狙って行かなければいけないと思ってます。
今後の露店側の戦略としては、数量を限定的にする事で、飽きるまでの時間を伸ばし、
徐々に新しい商品への切り替えを行っていきます。
金額を上げるのは、ターゲットが裕福になったり、
食事に価値を見出してからでも遅くないと考えてます。」
この世界での食事は、食べれればいい程度の考え方が多い。
旨い物を食べるのは贅沢なので、そんな余裕を持っている人の数は少ない。
ケニーさんが安いと言っているのは、俺の狙っているターゲットと、
ケニーさんの狙っているターゲットの違いであると思われる。
ケニーさんの狙っているターゲットは、残念ながら数が少ない。
売り上げは上がるだろうが、継続していかない可能性も高い。
要は飽きられる。
飲食業では、飽きられたからと言って、高い物を安くした時に、
物の価値だけでなく味まで落ちたと思わる。
それならば、当初から安目で出してソウルフード的な位置づけまで持っていければ、
継続する可能性が高くなる。
無くなると困る人が多い食事になればいい。
そして長い目で見て、「美味しい物が贅沢品ではない」と言う価値観を根付かせる事が出来れば、
安くてうまい物が当たり前になり、多くの工夫が生まれるだろう。
そうなれば、市場が変わる。
今回の食材である、モツやオオカミの肉なんかは、売られる事無く捨てられるような食材だ。
これらに価値がある事が分かる事で、需要が生まれ新たな商売も始まる。
この世界の食糧事情なんかも改善できるんじゃないかな。
単純に商売だけ考えるのなら、利益だけ追及して、
売れる所に売れるだけ売ると言うのが正しいんだろうけど、
継続そして、周りの環境も引っ張りながら進むつもりなら、
目先の利益だけでなく、その後に起こる環境の変化も想定していかないといけない。
特に、俺の商品は町の環境ごと変えるような影響を出しそうだしな。
「今考えている、露店の商品と販売場所です。」
俺は、木板に書き出していく。
1店舗(冒険者ギルド前)
・ヘビ肉肉団子の野菜スープ(銅貨3枚)
・シカモツ肉の野菜炒め(銅貨5枚)
2店舗(ケニー商会前)
・オオカミ肉の煮込みを使ったネギ焼き(銅貨5枚)
3店舗(南門前)
・シカ肉焼き(大銅貨1枚)
・ウサギ肉ステーキ(大銅貨6枚)
「なるほど。でもやはり、ウサギ肉については安すぎる気がしますね。」
「ウサギ肉は、小さめにしようと思ってますので、
1匹から10食程度取れると想定しています。」
「10食ですか・・・。なら、良さそうですね。
ですが、シカ肉との金額の違いが大きいですね。」
「そうですね。ウサギは完全にターゲットをお金持ちに絞った商品になります。
あまり出ないようでしたら、予約制にしてもいいかもしれませんね。」
「了解しました。金額についても私としてはもう少し上げても良いかとは思いますが、
ハルトさんの案でいきましょう。
まだハルトさんは、別の案があった上でこの金額設定をされてそうですので・・・。」
「すみませんが、お願いします。
今後の新メニューの値段設定については、ケニーさんにお任せしていきますので、
当初のみ俺の設定金額で行っていただければと思います。」
「了解です。では、明日からネギ焼の店舗は出される方向ですか?」
「ええ。今頃ファギーはネギ焼の特訓しているはずなんで・・・。」
「じゃあ、私は新しい人達に指示と、住み込みの2人には加工工場に案内してきますね。」
「はい。明日からケニー商店の前でも露店やるので、よろしくお願いします。」
「はい。」