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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
5.魔法使いのお店
148/223

34.獣人の真実(1)


1人の高齢の男が前に出て来て、

「はい。この度はありがとうございました。」

「あなたが、代表という事でいいのですか?」

「はい。私はここにいる皆が住んでいた、村の村長をしておりました。」

「なるほど村長ですか。という事は、全員同じ村の出身って事でいいのでしょうか?」

「はい。全員同じ村に住んでいましたが、人間達の奴隷狩りに襲われ、

村ごと全滅させられました。

そして、我々は捕まり連れてこられました。」

「それはどれくらい前の話なんですか?」

「半年くらい前の事です。」


「獣人国に住んでいたんですよね?獣人国で人間が奴隷狩りをしているって事ですか?」

「はい。」

あれ?戦争は終わってるはずなのに、なんで人間が獣人の国にいるんだろ?

小競り合いはやってるって事だったから、それで行ってるって事なのかな?

それとも、占領している町なんかがあるって事なのかな?


「人間は、獣人国の町かなんかを占領しているって事なのですか?」

「あなたは人間ではないのですか?」

「そうですね。あまり事情を知らないんです。」

「そうですか・・・。獣人国なんて国はありません。」

「え?」


「人間が、獣人国という場所は、我々はアルスデスと言う名前で呼んでいます。

我々獣人と呼ばれる人は、アルスデス島に集落を作って住んでいます。

それらをまとめて、国という組織にはなっていません。

人口の多い集落や、複数の集落が共同で暮らしているような物はありますが、

国とは言えないような集落の複合です。

ただ、その中でも戦闘を好む集落や、人間に対して復讐に燃える集落が、

人間と戦う事はありました。

我々の村は、人間達と戦う気などなく自分たちの集落で、ただただ暮らしていただけです。」


村長は疲れた顔で、先を続ける。

「人間達は、昔から奴隷確保の為に、獣人狩りを行っていました。

集落を襲い、村人を根こそぎ連れて行くのです。

多くの獣人達が連れて行かれ、奴隷として売られて行きました。

そんな中、30年ほど前でしょうか。

あまりにも人間達の非道に耐えられなくなり、

いくつかの集落で協力して王国の町を攻めたのです。


これが、こちらで言われている、獣人国との戦争だと思います。

でも、実情は一時的に占拠しただけで、王国の軍隊が出た時には、

すぐさま町は取り返され、戦闘に行った物達は皆殺しにされ、

アルスデス島にも拠点を作られました。

多くの集落が潰される事になりました。


王国軍は、撤退したのですが、その時の拠点が現在の奴隷狩りの拠点として使われ、

さらに奴隷狩りは加速しています。」


アイカの町で俺が聞いた話では、獣人国は存在しており、

そこと戦争があったという話になっている。

そして小競り合いは続いているという事で、そこで確保した獣人を奴隷としている。

と言うのが一般的に流れている話だ。


だが、村長の話ではアルスデス島に王国の拠点が作られて、奴隷狩りを行っていると言う。

王国にとっては、そこが奴隷資源の採掘場と言う事か・・・。

獣人国と言うのがある事にして、仮想敵国扱いで王国をまとめるにしても、

魔獣などが居るのでそんな必要も無いだろうし、

実情は隠すほどでも無いが、周知している訳でもないって感じなので、

それぞれ噂程度の話として伝わって、少し話が変わってるって感じかな。


「獣人とは、どういった存在なんですか?」

話をしていて、気になった・・・。あまりに普通にしゃべれ過ぎる。

俺らとの違和感もほとんどない。


「我々に伝わっている話では、我々も元々は人間だったそうです。」

やっぱりそうだったんだな。

「魔法とかですか?」

「そうではないかと言われています。大昔の王国では、犯罪者の烙印として、

獣と合成すると言う罰を与えていたそうです。

その後、アルスデス島に流されていたそうです。」


元々が人間である事は、アイカには伝わってない。

まあ、伝わったとしても差別意識から黙認されてるのかもだがな。


「あなたは村長と言ってましたけど・・・。

村長と言うのは、いろいろと事情を知っているという事なんでしょうか?」

「私の立場と言うよりも、我々の集落が少し特殊なのです。

我々の祖先は、現在あった事を書き記して後世に伝える事を、

集落の決まり事として守って来ました。

その為、他の集落と違い過去の事にも比較的詳しいのです。

残念ながら、書き記した物は襲われた時にすべて焼失してしまいましたが・・・。

ただ、大まかな事は口伝でも伝えられていて、集落の子供でも知っている事です。

他の集落では、自分達が元々、人間であったという事さえ知らない者達もいます。」


なるほど。文字もちゃんとあるんだ・・・。

獣人と言うから、野性的なイメージだけど、普通に人間なんだから当たりまえか・・・。


「あとは、獣人を作る、獣と人間を合成する魔法っていうのは?」

「魔法とは思われているのですが良く判ってません。

もしかしたら魔法でも無くて、そういう薬品なのかもしれませんし、

肉体的に切ってつなげてるのかもしれません。」

「新しく獣人になった犯罪者が流されるって事は、無いって事ですか?」

「ええ。そういった刑が無くなったのか、その技術が失われてしまったのか、

新しい種類の獣人の話は聞いた事はありません。」


そういう事なら、魔法っぽいな・・・。呪いって言ってもいい物な気がするな。

子々孫々、獣人として生きなければならない呪いって事か・・・。

例え罪人に対しても、ひどい仕打ちだな。


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