32.ブラントさんの武器作成(2)
麻の布を出して、刀身を綺麗に拭いてあげる。
綺麗な鏡面仕上げの鋼の刀身が出て来た。
「!!」
「どうぞ。確認してみてください。」
ブラントさんは、恐る恐る両手剣を持ち上げ、刀身を眺める。
「・・・美しい。」
「俺の特別製両手剣ですよ。」
「・・・振ってもいいか?」
「もちろんです。バランスなんかも含めて試してみてください。」
ブラントさんは、剣を構えると型なのだろうか、一連の動作を始めた。
さすが、歴戦の戦士・・・最強と言われるだけはあるな、見てて飽きないきれいな動きだ。
「素晴らしい。軽くはなっていないが、振りが早くなっている・・・。
これは形状が変わったせいなのか・・・。
それに、硬くなったような感覚があるな。
持ち手にも改良が入っているようだし、少し慣れが必要だがこれは本当に素晴らしい。」
「そうですね。説明しておきますね。
まずは、硬度がかなり上がってるはずです。
石くらいなら、いくらぶっ叩いても歪まないです。
普通の剣と打ち合っても、刃こぼれもしないでしょう。
それと、血抜き溝って言うのを付けてます。
これは相手を刺した後に、抜けやすくする為の物です。
穴は剣の幅を維持する為に開けただけです。まあ、軽量化って事ですかね。
気になるのは、振った時に変な音が混ざらないか確認しておいてください。
あと、柄と鍔なんですが、鍔迫り合いの時に刃を滑らされて指を狙わても、
どの位置でも安全になる様に、周囲に小さく鍔を追加しています。
柄は、へこみを付けて持ち手が滑らないようにしています。
その上から、革紐を巻いてもらったら完成ですね。
デメリットは、構造が複雑になったので、錆びやすくなると思いますから、
手入れはしっかりやってください。」
「なるほど・・・。了解だ。」
ブラントさんは、何回か振ってみて音を確認しているが、問題ないそうだ。
「これが報酬ですので、今後ともよろしく願いしますね。」
「ああ。。これはすごい報酬だ・・・。
報酬無しでも、借りがあるって言うのに・・・。」
ブラントさんは、クシェル達を見て、
「ここまでして貰ったら、本格的に育てて行こうか・・・。銀を目標にしていたが・・・。
大銀に成れるくらいまではしっかりとしごいてやる。」
それを聞いた、クシェル達は固まってしまっている。
クシェル達の様子を気にする事無く、ブラントさんは新しい剣を振り回してる。
かかし的な試し切り用の藁束をサックリいっちゃってたりして、
刃はあんまり鋭くないはずなのに・・・。
テンションはかなり上がっているようだ、
「じゃあ、俺はもうそろそろ行きますね。剣の調子悪かったら言ってください。」
「ああ。ありがと!」
「クシェル達は、休んだら家に戻ってて。俺はケニーさんの所に寄ってから帰るから。」
俺はケニー商会に行くと、ケニーさんは待ち構えていたように、
「ちょっと来て下さい。」
俺は、ケニーさんに促されるまま、店の奥に入る。
「朝から、店にレスリーの監視が付いてます。一般客を装って貰っていいですか?」
「了解です。じゃあ、ちょっと奥に亜空間の入り口作らせてください。出直します。」
「はい。」
俺は奥の応接間に、亜空間の入り口を作り、小さめの塩を購入して店を出る。
一旦歩いて、倉庫に戻ってから、亜空間経由でケニーさんの店に出る。
「レスリーの監視ですか?」
俺はサーチで、ケニーの店を監視してそうな人員を探す。
通りでほとんど動かずに、ケニー商会を監視出来る位置にいるのは・・・。
「多いですね・・・。6人ほどが監視についてそうです。」
「ですよね。それに噂になってますよ。」
「噂ですか?」
「レスリーの奴隷商店で、なにかあったんじゃないかって程度ですけどね。
店舗に顔を出す事がない、レスリーが店舗に行ったり、
店員があわただしく動いているので、そんな噂が出てるんです。」
「なるほど・・・。衛兵とかを呼んだりはしてないって事ですか?」
「ええ。衛兵は呼んでなさそうですね。って、ハルトさんやっぱりやったんですか?」
「まあ。28人ほどいました。耳が横に大きくて、ふっさふさな獣人です。」
「牛族ですかね・・・。」
「牛だったんだ。言われてみれば面影が・・・。って、牛って動物はいるんですか?」
「ええ。牛と言う獣はいますよ。かなり凶暴な種類らしく、
群で行動して角もあるそうです。
獣人の牛族は、力は強いが従順だそうで、労働力として使うのにいいそうです。」
牛!牛肉に、牛乳に、チーズ!さらにヨーグルトまで!
「牛って、どの辺にいる獣なんですか!?」
「牛ですか?確か、ウィダスの冒険者が狩った事があるって話を聞いた事ありますね。
たしか・・・ウィダス北西の平地にいるんだったと思います。」
それは、是非捕まえに行って牛乳とか、牛肉になって貰わないといけないな。
と、そっちはともかくとして話を勧めよう。
「売る前の奴隷は、首輪してなかったようです。」
「ああ。言われてみれば・・・そうでしたね。首輪は別途購入になりますから・・・。
私は、奴隷を使わないのであまり詳しくないんです。申し訳ない。」
「いえ。知識として知っている分には有意義ですからね。
無かったおかげで楽だったですし問題なしです。」
「あの・・・。今回のレスリーの動きも含めて、気が付いた事があるんです。」
「なんです?」
「あの・・可能性の話なのですが・・。」
「はい。」