31.ブラントさんの武器作成(1)
次にファギーを見て、
「ファギーは、なかなかな体力だな・・・。一撃の力も悪くない。
バランスを崩してもなかなか倒れないし粘りもある。
だが、一つずつの動作が重いな。
もう少しその棒の使い方を覚えれば伸びるだろう。
その武器は、力任せの武器じゃないから、技ももう少し覚えるべきだな。」
「え・・・?殴るだけの武器じゃなかったんですか?」
「もちろんだろう!
1撃の威力があるとは言え、当てれなかったら意味がない。
フェイントや多少トリキーな動きも混ぜて、相手に隙を作らせて当てないとな。」
「なるほど・・・。」
「お前たちの実力が見れてよかったよ。
根性もあるし素養も悪くない。
楽しみが増えたな。」
「ブラントさんのお眼鏡にはかないましたか?」
「ああ。しっかりと鍛えてやる。」
「よろしくお願いします。」
「じゃあ、3人は休んでて。」
「はい。分かりました。」
「ブラントさん。報酬の話をしましょう。」
「報酬だと?」
「ええ。」
「武器、貸してください。」
ここは、ブラントさんの個人練習場なので、他には誰もいない。
ここでやってしまおう。
「あ?俺の剣か?」
そう言いながら、ブラントさんは武器を渡してくれた。
「さっき見せて貰った時に気になったんですが、
なんかこの辺り少し歪んでる感じがするんですけど・・。」
「ああ・・この間の盗賊狩りで調子乗って石を叩いちまって、歪んだんだよ・・。
良い剣なのに勿体ない事しちまった。」
「という事は、それは直しちゃって良いって事ですね?」
「直せるのか?」
「はい。あと、重さとか長さとか変わると困りますよね。」
「重さが変わるのは勘弁だな。長さも変えられると感覚が狂っちまう。」
「まあ、出来上がったら振って貰った感覚で調整しますね。」
「おいおい。この剣持って行かれると困るんだが。」
「大丈夫です、ここでやりますから。」
元々の物があると、使い勝手を変えてはいけないので、ちょっと手間だな。
まず、確認しないといけないのはバランスだ。
重心の位置が変わると使いにくくなるだろうしな。
重心は、刃の一番手元になる様に調整されているみたいだ。
なので、刃だけの重さを増やすとバランスが刃先に行ってしまう。
柄の部分にもバランスよく重さを配分しないといけなさそうだな。
柄は、鉄製の物に革紐を巻き付けているだけの柄に、左右に2本の鍔がついていて、
刃を下にして立てると、十字架の形になる感じだ。
巻き付けている革紐を取り去り、鉄の部分だけにしてしまう。
俺は剣に魔力を込めて、剣の炭素を抜きながら圧縮していく。
剣から炭素が出てきた事で、表面は真っ黒に染まり、禍々しい感じの刀になった。
長さは変えてないが、圧縮した事で全体的に細くなり、
剣の見た目としても、大分変わってしまったので戻さないと。
次に刀身をきれいに成形して、歪みを無くし直刀の形にしていく。
元々は、剣先はひし形の角ばった印象の刀身だったんだけど、これを流線型の形にする。
流線型にする事で、刺す時の抵抗が少し減るんじゃないかと思う。
あと、風の抵抗も少しは減ると思われる。
柄の部分も炭素を抜いて圧縮したので細くなってしまっている。
ただ、柄の一番手前に重りが付いていたので、それを柄に回して柄の太さを確保する。
それでも前よりも細くなるので、内部に空間を作って前よりも少しだけ太めにしておいて、
持ちやすいように、指の形のへこみを付けて、滑りにくくしてみた。
鍔も十字になっているだけだったので、どの位置でも刃を止めれるように、
短めの丸い鍔も併せて作る。
元の十字はそのまま健在だ。
こちらも、炭素を抜いて圧縮しているので足りなくなった分は、内部を空洞にしている。
鍔は、剣同士の戦いの時に、剣で剣を受けた場合、刃を滑らせて手を狙う技がある。
これを避ける機能として鍔があるので、
元の鍔では場合によっては手を狙われる可能性もある。
それ以外に、この鍔部分で相手を殴ったりとトリッキーな技にも使えるそうだが、
元々の鍔は、そっちがメインの物だったのかな。
刀身も細くなってしまったので、
刀身の中心部分をへこませて、血抜き溝を作り出す。
それでもまだ細いので、血抜き溝を表裏両方に先端近くまで大きく深く彫っていく。
まだ、細くなってるな。
先端部分の血抜き溝の中心に穴を開け、その分を幅に持って行く。
さらに、刀身を薄くしてさらに幅を確保する。
穴の周りのバリを綺麗にして、危なくないようにしてバランスの確認をする。
うん・・・大丈夫そうだな。
刃の部分は砥がずに、元のままにしておく。
刃を付けると、あまりに強力になりすぎて、
ブラントさんの実力的に、そして立場的に俺達が危険になり得るのでやめておく。
う~ん。でも思ったよりも、元の形から違う物になってしまったな・・・。
まあ聞いてみて、ダメそうだったら修正しよう。
「こんなもんかな」
ブラントさんは出来上がった剣を見て、
「呪われてるのか!」
「呪ってなんかいませんよ!なんて事を・・・。」
って、でも客観的にみると、穴あきの血溝が付いた真っ黒な刀身・・・呪われたな・・・。