23.新しい防具(1)
こっちで一般的なのは、胸当てと背中当てが別れた形で、それぞれを革紐でつなげて着る。
でも、これだと刃は通らないんだけど、衝撃はモロに受けてしまう。
なので、胸当ても背中当ても一体にした形の鎧にしてみる。
こうする事で、前から受けた衝撃を全体で受けるので、衝撃に強くなる。
甲羅部分は、圧縮して薄く成形しておく。
厚さとしては、5ミリ程度だ。
圧縮しているので、かなりの硬度で通常の剣では刃が立たない。
重さが重いな・・・。硬度は足りてるので脇部分を網目状にして軽量化する。
攻撃受けにくい所だし、通気性も良くなるだろう。
女性用という事で、胸の部分は膨らますように成形する。
多分、あまり意味なさそうな気もするが、デザイン的な・・・こだわり?
まあ、ゆとりのある着心地ってやつで・・・。
あとは、鎧の端の部分の角が当たったら痛そうなので、
これを綺麗に丸くして触り心地を良くしておく。
あと、ウエストの部分から太ももくらいまでの部分は短冊状に切った、
カブトムシの甲羅をつなげていく。
こうする事で、しゃがんだり、前屈したりしてもストレスなく動けそう。
衝撃はあまり抑えられないけど、刃は通らないだろう。
この短冊状の物も、網目状にして軽くしておく。
上腕、二の腕、太もも、ふくらはぎ部分は、前後から挟んで留め金で止める形の物を作る。
関節部分は、腹部分に使ったようなうろこで覆う。
靴も作って、全身防具になった。
盗賊などから奪った、装備では、体に接触する部分を革で覆っているので同じように、
するつもりだが、これだけでは弱いので、今回は革を大量に使って、
ウレタンのような構造にする。
低反発の緩衝材のイメージだ。
これを、鎧が体に接触する部分すべてに付けて行く。
これでさらに、衝撃を体で受けれる面が増えさらに反発によって、
かなりの衝撃からも守られるだろう。
鎧を着る感じになってしまって、脱着はちょっと不便だけど安全になったかな。
カブトムシで作ったので、全身真っ黒になってしまうのでかなり厳つい。
黒騎士って感じで、かっこいいんだけどな。
後は調整かな。
「クシェル!ちょっと来てくれるかな?」
「はい。」
「鎧を作ったので、着てほしいんだけど。」
「鎧ですか?」
クシェルは、鎧を見て、
「すごい・・・。これが鎧ですか・・・。」
「うん。着てみて。大きさとか調整するから。」
「はい。」
クシェルは、かなりてこずってだが、全身を装備してくれた。
俺は、クシェルの体に合わせて、鎧を調整していく。
体にフィットする感じで調整し、余計な部分を可能な限り削り軽量化を行う。
「どうかな?」
「それほど重くないですね・・・。しかも動きを阻害される部分がない。」
クシェルは、そのまま体をいろいろ動かしながら確認する。
「うん。良い感じだと思います。鎧としての強さは分かりませんが・・・。」
「多分、俺の作った剣や名剣的な物じゃなかったら、痛いとも感じないくらいじゃないかな。」
「!そんなにですか?」
「う~ん。ファギーちょっと来て~。」
「はい~。」
俺は、木で剣を作りファギーに渡す。
「これで、クシェルの鎧叩いてみて。」
「はい。」
ファギーはクシェルの鎧を木剣で叩く。
「全然。」
さらに、叩く。
「全然。」
思いっきり叩くと、木の剣の方が折れてしまった。
「全然ですね。」
「じゃあ、こっちで。」
俺は、盗賊達から奪った片手剣を出して、ファギーに渡す。
「え!さすかにこれは・・・。」
「まあ、最初は軽めで・・・。」
「はい。」
ファギーは、軽めに鎧を叩く。
「全然ですね。」
さらに叩く。
「全然。」
結構振りかぶって叩く。
「全然です。」
かなり本気で叩く。
「全然・・・痛くも、なんともない・・・。」
「すごい・・・刃傷もつかないなんて・・・。」
「うん。うまく出来てるみたいだね。じゃあ、ファギーとアリーヤの分も作っていくね。」
とりあえず、ファギー分を作って、ファギーに着せて調整する。
「いいですね~これ。黒いし、かっこいい!」
「かなり厳ついので怖がられそうだけどね。」
「それがいいんです!しかも、こんなに強いなんて!」
じゃあ、次はアリーヤかな。
「ハルト様・・・あたしは鎧じゃない方がうれしいです。」
「ん?どういう事?」
「あたし斥候なので、鎧の重さが邪魔になっちゃうんです。」
「なるほど・・・。じゃあ・・・もっと軽い物って事だね・・・。」
フルメッシュにするだけじゃダメなんだろうな・・・。
どうするかな。