21.新しい武器(1)
「とりあえず、明日はこっちに出勤して貰う事にしてます。」
「あと、露店用の護衛が雇えるまで、露店は一旦休もうと思ってます。
バーナードさん達は、ケニーさんの専属護衛なので、回す訳にもいきませんからね。」
「・・・そうですね。それでいいと思います。
露店用の護衛は多分、明後日くらいまでには雇えると思うので、
明日はお休みという事ですね。」
「ええ。」
「あと、今日の売り上げなのですが、想定よりもかなり少ないですが、
一旦半金はお渡ししておきますね。」
「了解です。こういう想定外の事態はこれからもあるかもしれませんので、
ある程度は覚悟して行かないとですね。」
銀貨5枚の売り上げだったので、銀貨2枚と大銅貨5枚をケニーさんに渡す。
俺はケニー商会を出て家に帰る。
お昼ご飯をしながら、みんなに状況を話して、しばらく露店は休業する事にするとの話をする。
「安全が確保出来なかったら、無理して露店する事もないからね。」
「本当にすみませんでした。」
アリーヤとファギーは、かなり気にしてるみたいだ。
「ケガも無く無事だったからよかったよ。
それに想定出来た事だったのに、護衛を雇う前に始めてしまった俺の失敗でもあるからね。」
「いえ。そんな事は・・・。」
「実はね。こういった事が起こる可能性は考えてたんだ。
そして、今後も同じような事が起きる可能性は高い。
俺が魔法使いである限り、みんなにもいろんな危険が付きまとう。
もちろん、俺はみんなを守るつもりだけど、
それぞれも自分の身を守る力を手に入れてほしいとも思ってる。
戦うのは怖いけど、怖くても状況は待ってくれない。
怖い状況は、出来るだけ回避しないといけないけど、
そういう状況になった時に対処が出来るようになれば、少し安心できるからね。
そして、戦うすべを持ってるクシェル達には、
アリスやジャック、ミーア、マディやリルを守ってほしいと思ってる。」
クシェルは真剣な顔で、
「はい。ハルト様の負担を少しでも減らし、お役に立てるようになりたいです。
そして・・・私自身の為にも、強くなりたいと思ってます。」
アリーヤも続けて、
「わたしも、今回の事で怖くて、動けなくて、それがすごい悔しくて・・・。
あたしも強くなりたい・・・強くなりたいです。」
ファギーも、
「わたしも、みんなを守れるように、そして・・・こんな悔しい思いをしないように、
強くなりたいです。」
「実はね。大銀のブラントさんに稽古を付けて貰えるように話はつけてるんだ。」
「ブラントさんほどの方に、直接稽古を付けていただけるって。でも私達の実力では。」
「そこは大丈夫だよ。ブラントさんに勝てるくらいの装備を用意してあげるから。」
「!!」
「まあ、それでも実力も付けて貰わないと使いこなせないので、その辺は頑張ってね。」
「はい!」
「じゃあ、武器から作っていくね。前に話してたやつ作るので出来たら試してみて。」
まずは、ファギー専用武器の六角棒だな。
これは、単純に鉄の棒を作っていき、鋼にして圧縮する。
圧縮すると、結構細い棒になったけど、重さはかなりある。
丸い棒ではなくて、6角形にするのは丸のままだと、当たった時に接触する部分が線なので、
鎧を破壊するというよりも切るに近い、けど六角形にして面で当たると
範囲が大きくなり破壊には向く。
もちろん、当たる面積が小さい方がその部分のみに対しての威力は上がるのだが、
威力が十分な場合には、面の方が破壊範囲が上がるのでメリットが出るという事だ。
バランスは全体で均等になっていて、重心は中心にしている。
中心部分を持つことが多いので、中心部分に持ちやすいようにへこみを付けておく。
後は、この重さをファギーが持てるかどうかだな。
「ファギーどうかな?」
ファギーは、六角棒を持ち上げようとするが、思ってたのと大分重量が違ったみたいで、
「重!」
それでも、持ち上げる事は出来たみたいだ。
「お、重いですね。こんなに細いのにこんなに重いのですね。」
「重すぎたかな?」
「いえ。」
ファギーは、六角棒を振り回して感じを確認すると、
「ちょっと外で試して来ていいですか?」
「ああ。改善出来そうなところがあったら言ってね。」
次はアリーヤ用の、短めの日本刀・・・脇差だな。
長さは、腕の長さよりも少し短いくらいの長さの日本刀を作っていく。
軽量化をする為に、刀身を細くして柄は木で作る。
バランスの調整の為にも、柄側に出来るだけ重心が行くように、血抜き溝も彫っておく。
鍔は小さめの物を付けて、邪魔にならないようにする。
切れ味は、カミソリよりも切れるくらいまでにしておく。
それでも、圧縮した鋼なので、簡単に折れたり欠けたりは無いと思われる。
同じ鋼や、鉄鉱石とか殴らなければきっと大丈夫だろう。
ファギーの六角棒とやり合ったら欠けるかもだけどな。
「アリーヤ、どう?」
アリーヤに刀2本を見せる。
「これ2本をそれぞれ腰に差して装備するんだよ。そして両手それぞれに持って戦える。」
「両手でそれぞれ片手剣を持つのですか!?珍しいですね。」
「手数は、普通の倍になるので当てるのは楽になるんじゃないかな。」
「難しそうですね。」
アリーヤは、装備して刀を抜く。
「軽い・・・。この軽さはいいですね。今までの半分くらいの重さです。」
アリーヤは両方の刀をそれぞれに抜き試している。