20.奴隷の状況
「ええ。俺がいるのは分かってるはずなのに、露店を襲って、
俺がどのような反応をするのかを、見てみたいって所でしょう。
たぶん、露店を襲った程度なので、自分が襲われるなんて事は無いだろうと踏んでるんです。」
「!!もしかして!」
「いえ~。やらないです。でも、報復はします。」
「どのような?」
「ケニーさんは、レスリーの店舗は把握していますか?あと、倉庫のような所も・・。」
「ええ。一通りは・・・。」
「それ教えて貰ってもいいですか?」
「何されるんでしょう?」
「レスリーのどこかの店舗を潰してみようかと思ってます。」
「!!」
「これが、様子見の返答って感じですね。
全滅させてもいいんですけど・・・そこまでやると、さすがに何か出て来そうですからね。」
「完全に敵対ですね・・・。」
「うちの露店を襲った時点で、もう敵対ですよ。
で、どの店舗を潰すのが、レスリーにとって痛いのかなと思って・・・。」
「う~ん。痛いのは、貴族向けの店舗でしょうか・・・。」
「貴族向けの所は、その後に貴族が出て来たりすると、面倒そうですね・・・。
一般向けで、痛そうな店舗はないですか?」
「それでしたら・・・。奴隷商店ですかね・・・。
今は奴隷が少なくなっていて、値段が上がってるので高級品になっていますし、
今後も値段が下がる目途も立ってませんからね。」
「なるほど、奴隷商店か・・・。それなら少し準備も必要そうですね。」
「準備ですか?」
「ええ。奴隷をどこかに退避させないとですので、場所の確保が必要ですからね。」
「奴隷の退避ですか?奴隷って獣人なんで、生かしておく必要はないですよ・・・。」
「珍しいですね。ケニーさんがそんな強い言葉を言うのは・・・。
獣人と言うのは、そこまで嫌われているって事ですか?」
「・・・そういえば、そうですね。あなたは獣人との戦争を知らないんでしたね。」
「ええ。俺自身が浮浪児だったって事もあって、獣人への偏見はありません。
俺も同程度の扱いでしたから・・・。」
「・・・なるほど。」
ケニーさんは少し考え、そして俺を見て、
「多分、ハルトさんの考えの方が正しいのかもしれませんね。
私も獣人を憎んでいます。
親戚を殺された過去もありますので・・・。
だからと言って、自分の恨みを晴らすために、奴隷を買う気はありませんでしたけどね。」
「自分の恨みを晴らす為に買うって言うのは・・・。」
「ええ・・・買った奴隷を虐待したり、殺害して気分を晴らすと言う事ですね・・・。」
「そんな事に使われてるのか・・・。」
「ええ。獣人奴隷の主な用途は、肉体労働用と、魔道具を持たせて強制的に使わせるか、
虐待用です。」
「・・・なるほど。」
なんて世界だ・・・。
元々ろくな世界だとは思ってなかったが・・・ひどいな。
奴隷なんて、人権が無いとはイメージしていたが・・・殺す為に買うとか、
気晴らしに買って殺すとか・・・。
ただの労働とか護衛に使われるのかと思ってたが・・・。
確かに戦争での奴隷の扱い・・・しかも、見た目が違うとなったら、
そんな扱いもあり得るのか・・・。
いや・・・それだけじゃないな・・・。
女の攫う盗賊も、子供を虐待するやつも、奴隷をこんな扱いする奴もいる・・・。
この世界は弱い奴に徹底的に厳しく出来ている。
それを聞いてしまうと、獣人奴隷全部解放したくなってしまうな・・・。
同情なんかも無くはないが、それよりも勿体ないって思ってしまうんだよな。
獣人とは言え、人間を無駄遣いするなんて・・・。
どんなに弱い立場の人間だって、役に立てる方法があるはずなんだけどな・・・。
「奴隷商店の襲撃にしますね。」
「・・・分かりました。ただ、生かして連れ去るのでしたら、首輪を外さないといけません。」
「首輪?拘束具って事ですか?」
「ええ。魔道具になってます。契約した相手の指示に従わなければ締まるんです。」
「魔道具なんだ・・・。高そうですね。」
「そうですね・・・。それなりの金額しますが、付け替えも利くので最初だけですね。」
「なるほど。で、それの外し方が特殊だったりするんですか?」
「はい。契約者なら普通に外せるんですが、契約者以外が外そうとすると、
魔道具が発動して、締まってしまうのです。」
「じゃあ、どうやって・・・。」
「首輪は、革製ですので締まる前に切ってしまえば大丈夫ですが、かなり頑丈ですので、
何か手を考えなければいけないかもしれません。」
「切る方法か・・・。どんな頑丈でも、革なんだから俺のナイフで行けそうな気がするな。」
「でも閉まってしまうと、それで死んでしまうので、気を付けてください。」
それは、実際の物を見て検討してみるしかなさそうだな。
あとは、奴隷を助けた後、どうするかな・・・。
とりあえず、どこかに地下部屋を作って、そっちに移動してもらうけど、その後だな・・・。
希望する人は、獣人の国に返してあげたいけど、行けないしな・・・。
しばらく囲う感じになるのかな・・・。
「今晩にも実行しておきます。」
「分かりました。気を付けてください。
あ・・・そうだ。
話は変わりますが、先ほどバーナード達が来ました。
そこで、お話をしてバーナード達パーティーを一括で雇う事にしました。」
「え?」
「ケガをされているフェルトは、売り子として働いてもらいますが、
私の護衛として、バーナードのパーティの2人を雇う事にしたんです。」
「なるほど・・・銀ランクだし、信用出来るって事ですね。」
「ええ。ケガしたフェルトを雇った事で、裏切るなんて事もなさそうですし、
ハルトさんに、ずいぶんと恩義も感じてるようですしね。」
「ああ。実験でフェルトさんのケガに魔法薬使ったのですかね。」
「!!。どおりで・・・そんな事してるんですね。」
「いい護衛だと思いますよ。」