19.露店襲撃(3)
「昨日、ケニーが居た事で、ケニー商会絡みってバレたんじゃないかな。」
「え~と、露店の前に掲げてた旗が、ケニー商会の紋章なんです。」
「!!・・・なるほど、そりゃ分かるか。
でも、それじゃあレスリーに狙ってくれと言ってるようなもんじゃないか?」
「まあ、狙いとしてそれもあったんですが・・・。
でも、ウィダスの雑魚男爵から俺の事聞いてると思うのに、
なんでそんな無謀な事してるんだろ?」
「・・・たしかにな。しかも、銅ランクの下っ端をわざわざ・・・。」
ブラントさんが何かに気が付いたようで、
「!!もしかして、お前をおびき出して狙ってるとかか?」
「俺をおびき出してどうするんです?」
「捉えるか、殺すか・・・。
そして、自分の陣営に取り込むか、領主様なんかに引き渡して功績にする・・・。って所か。」
「俺を捉えるのは、かなり至難の業だと思うんですけど・・・。」
「・・・魔法使い対策をしている可能性があるな。」
「なんです?魔法使い対策って。」
「ん?知らないのか?」
「うん。知らない。教えてください。」
そんなのあったら、いろいろやばいよ!
「魔法を無効化する魔道具がある。」
「ええ!」
「と言っても、1回だけの使い捨てだが・・・。
それ以外にも、相手の視覚を奪ったり、物理攻撃を反射する物なんかもある。」
「1回だけ無効にするとか、いやらしいですね。10個とか持たれたらかなり面倒だ。」
「さすがに、高価なのでそこまで持ってるやつはいないだろうが、
魔法使い対策は常に研究されているそうだ。
獣人国との戦争でも必要だったし、王国でもクーデターなんかを起こされる事を、
危惧する派閥もあるからな。」
「なるほど・・・。」
「後は、魔法使いを用意してると言うのも考えられるな。」
「そっちは、それほど危惧していません。」
魔法は、先制が格段に有利だ。
俺が敵を見つけるよりも先に、敵が俺を見つけるのは、
俺以上の索敵能力がないといけないが、それは多分いないと思いたい。
それに魔力が見えるので、そうそう遅れをとる事は無いだろう。
まあ、油断はしないけどな・・・。
「ただ、ブラントさんの言うような、俺をおびき出すって言うのが目的なら、
もう少し違う呼び方がありそうなんですよね。
わざわざ敵対しなくても、普通に呼び出すとか、
敵対したいなら、警告したようにケニーさんを狙うなりって、手があるはずなんですよ。」
「たしかにそうだな・・・。」
「そうなると、レスリーの今回の動きの目的がはっきりしないですね・・・。
俺に敵対したいというのは分かりますが、
わざわざ意思表示と言う訳ではないでしょうしね・・・。」
「そうだな・・・。今回の件は、お前に対してと言うよりも、
ケニーに対してと考えた方が正しいだろうな。」
「純粋に、露店に対しての牽制と脅迫って所ですか・・・?」
「それだけじゃなくって、これが定期的にされるなら、
営業妨害って意味合いもあるのかもな。」
「なるほど・・・。定期的に襲われる露店に客は着かないでしょうしね。
でも、それなら捕まった犯人からレスリーの名前が出れば、それで終わりじゃないです?」
「いや・・・レスリーの名前が出ても、
レスリーに対して直接どうこうする事は難しいだろうな。
冒険者ごときの話で、攻める事さえ難しいだろうからな。」
「という事は、レスリーとしてはノンリスクで邪魔し放題って事?」
「手ごまは減っては行くだろうが・・・冒険者なんて何万人もいるからな・・・。」
う~ん。どうするかな~。
封建制度で、貴族の後ろ盾がある商人は、なんでもやり放題なんだろうな。
貴族とのルートを切るのが一番効果は高いが・・・。
貴族側に手を出すと、大事になりすぎるな・・・。
ドウェイン子爵が手を出して来たと言うならいざ知らず、レスリーの露店襲撃程度で、
貴族に絡むと言うのも大げさなんだろうな。
レスリー側も、今回はどう反撃されるかの様子見の部分もあるだろうから、
何もしないってのはなしだな・・・。
だからと言って、大きく手を出し過ぎるのもまずい・・・。
直接顔を合わせない程度に、相手にも損失を出させる感じか・・・。
報復合戦にならないように、次に手を出す気は無くし、大事に出来ないようなのがいいな。
それに付いては、ちょっとケニーさんに確認してみようかな。
「そういえば、あいつらはどうなるんです?」
「そうだな。一応レスリーとの関連を吐かせてしまって、
後は衛兵に渡して強制労働か処刑だな。」
「あと、うちの露店壊した弁償も・・・。」
「ああ。そうだったな。いくらだ?」
「銀貨35枚ほど。」
日本円で35万円くらいだ。
「・・・それは無理だろう。一応装備なんかは取り上げて、
それを売った金額はそっちに回すようにするが。」
「・・・そうですよね。そこはレスリーに請求するかな。」
「おい!直接レスリーの所に乗り込むつもりか!?」
「どうしようか悩んでる所ですが、多分直接はないと思います。」
「直接はやめておけよ。確実に貴族様が出てくるからな。」
「・・・了解です。あと、護衛が雇えるまでしばらくお店は休みます。」
「ああ。そうだな。その方がいいかもしれん。」
「じゃあそういう事で、よろしくお願いします。」
「ああ。」
俺は、冒険者ギルドを出て、ケニー商会に向かう。
「ケニーさん。」
「ハルトさん。なにか分かりましたが?」
「レスリー絡みっぽいですね。」
「はぁ。そうですか・・・申し訳ないです。」
「いえ。今回は、レスリー側の様子見じゃないかと思ってます。」
「様子見ですか?」