6.露店準備(2)
後は、定着剤だったよな。
定着剤は、色落ちしにくくなるとか・・・。落ちてもまた染めればいいんだけど。
色も鮮やかになるとか言うしな。
確かに、今出来た布はそんなに鮮やかな感じではないけど、
淡い感じで悪くはないとは思うんだけど、リルが微妙な表情なので、
もうちょっと頑張らないと・・・。
まあ、やってみるだけやってみて、出来なかったらあきらめてこのままでいくかな。
確か銅を酸化させて、酸化銅をお酢で溶かすと、
染色の定着に使えるって話だったような気がする。
まずはマディの家にあった銅製のキッチン用品を使って酸化銅を作成する。
今は、俺の作った鉄製の鍋やフライパンを使っているので、
この銅は使ってしまっても問題ない。
マディにも確認済みだ。
酸化銅は、銅を粉にしてから加熱すると、綺麗な色を出しながら燃える。
花火とかに使われるやつだな。
その燃えカスが酸化銅だ。
真っ黒な酸化銅が出来たので、これをビネガーに入れて溶かす。
これが定着剤のになるはずなので、さっきと同じ浴槽を作り、
水でを張ってからこの定着剤を入れる。
分量とか判らないから適当だけど・・・。
これに、さっき染めた布を入れる。
入れた瞬間、布の色が鮮やかな黄色に!
「おお!やれば出来るもんだな。」
「ええ!一気に鮮やかな色になりましたね。おもしろい!」
後は、しばらく置いて綺麗に洗って乾燥して出来上がりだったか。
洗って、乾燥の魔法で乾かしたものをリルに見せると、
「これは、綺麗ですね!黄色の中に、紋章が浮き出ているようです。
でも・・やっぱり紋章の形が分かりにくいですね。」
「・・・確かに・・・。もう一回染めてみよっか。」
俺は、リルにも手伝ってもらって染め工程を何回か繰り返し、
かなり濃い目の茶色に近い黄色に染め上げる事に成功した。
これなら、紋章も見えるので悪くないかも。
これで、荷車の下のいろいろ魔改造した部分も隠せるし、
ケニー商会の紋章も入るので良い感じだな。
せっかく作った液が結構残っているので何枚か余分に作っておく。
さらに、服を使ってリルに絞り染めを見せてあげる。
服をぞうきんのように絞ってから糸で括る。
その状態で、色を染めたあと、糸を外して見せて上げると、
絞った部分には色が入らないので、綺麗な模様が付く。
「どう?」
「模様が出来るんですね。汚れも目立たなくなりそうだしいいかもしれませんね。」
・・・あ。。そういう感想なのね・・ちょっと寂しい感じだけど、
おしゃれとかの概念なさそうだしな。
「使う草の種類で、いろんな色が出るはずなので、研究してみたら面白いかもだよ。
例えば、俺だったら青の服とか、
リルだったら黄色の服とか色分け出来たりする事も出来るし。」
「それおもしろそうですね!」
「うん。ローブも、俺のには青いラインが入ってるし、最近着てないけど、アリスのには、
赤いラインが入ってるんだ。」
「そうなんですね。という事は、それもこの草木染で染めてるんですか?」
「多分そうだと思うけど、この青をどうやって出してるのかは分かんないな。」
「いろいろ研究が必要そうですね。」
「そうだね。」
後は、看板部分には、色は入れれないけど木で文字を作って釘で打ち付け、
上から炭を塗り、黒で「シカ肉焼き」って入れておく。
思いのほか立体的に出来てていい感じだ。
あれ?これでケニーさんの紋章もやったら楽だった?
・・・まあ過ぎた事は忘れよう。
染料や定着剤は亜空間に収納しておき、倉庫を元の状態に戻したら、
リルと一緒に家に戻り器と、串の大量作成に入る。
器は、お試しの時に使った、木を薄く切って折りたたむ船皿ってやつだ。
俺が薄い木を作るので、リルに折って貰っている。
この世界は、手で食べる文化だけど、串を作ってそれで食べて貰うようにしたい。
手が汚いまま食べて、食中毒になってうちの商品のせいだってなるのはいやだからな。
串と言っても、焼き鳥のような串にすると、慣れないここの人達には危ないので、
箸のような物にしてみた。
これくらい先が丸かったら危なくないし、焼けた肉なら刺さるだろう。
1日目の目標は、200食なのでそれほどの準備はいらないはずだ。
なにかあっても、おれの魔法で何とかできるんじゃないかと思ってるし。
あ。。そうだ。
ジャックの所に行って、浮浪児の友達で仕事してくれそうな子って誰かいないか聞いてみる。
「う~ん。何人かいるけど・・・。あいつなら大丈夫かな。」
「一緒に来てもらってもいいかな?」
「何させるんだ?」
「値段を叫んで貰って、文字読めない人や、
そこらを通ってる人に宣伝をしてもらいたいんだ。」
叫んでくれる子がいれば、露店まで来て「高!」って言ってトラブルになるのも防止できる。
叫ぶだけの簡単な仕事なので、子供で十分だし、救済にもなる。
それに浮浪児は安い。
「叫ぶだけの仕事か?」
「そうだね、それだけ。
報酬は朝ご飯と、店閉める時にもご飯を上げる感じかな。」
「う~ん。それだけあれば喜んでやってくれると思うよ。」
「じゃあ、行こうか。」