表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
12/223

8.今日の戦利品


俺は、ロベルトさんの家から出たあと、すぐに誰も居なさそうな路地に入った。

この当たりは、裕福とは言えないが国もしくは領主に雇われたような人達が住む住宅地だ。

こんな所に俺みたいな浮浪児が1人でうろついていて、衛兵にでも見つかったら路地に放り込まれるだけでは住まない可能性もある。お金を持っている事から、どこかに盗みに入ったと疑われて最悪殺されかねない。

お金の入った袋は、マントで隠しているとは言えどこの道を歩いたとしても安全ではないだろう。

まずはこれをなんとかしようと思って、路地に入り込んだ。


お金を何とかする為には、リーゼに教えて貰った亜空間の魔法を使おうと思っている。

路地とは家住宅地の路地なので、家の窓なんかから見られたりすると厄介だ。

なので路地にまとめて置かれている壺の陰に隠れて、検証をはじめる。

「うあ。ここすっごいトイレ臭い。」

‥‥まあでも少しの辛抱だ。


まずは、小さな亜空間の入り口を作る。

俺の手のひらと同じくらいの大きさだ。

その向こうにこれも小さな空間を作る。大きさとしては手首まで手が入るくらいの大きさで。

そこに、拾った小石を入れる。そして空間を残したまま入り口を閉じる。

その亜空間への入り口をもう一度作り、手を突っ込んでみると、先ほどの小石があるのが確認できた。

「いけそうだ。」


さらにもう1つ同じような亜空間を作り、そっちにはその辺りの雑草をちぎって入れる。

両方共入り口を閉じる。「小石の方」と意識しながら入り口を開けて手を突っ込んで小石がある事を確認。

また、閉じて同じ場所に「雑草の方」と意識しながら入り口を開けて雑草がある事を確認。

雑草を取り出して、銅貨を全部入れ込み、小石の方には大銅貨を全部入れ込む。

もう1つバッグ程度の大きさの亜空間も作って、そこにはお金を入れていた袋と、数字を書いてくれた木札を突っ込む。

それぞれ、開けたり閉めたり取りだしたりを繰り返し、問題なく収納されているのを確認する。


これで、アイテムボックス的な使い方ができそうだ。

身軽になったしね。


あと確認しておかないといけないのは、マントの中かから取り出した時に、魔法が見えるかどうか‥‥丸見えだな。

マントにしている布は、植物を縦横順番に編んだだけの物なので、ただでさえ隙間が多いのに、俺の服はいたるところに破けている。

服の中に手を突っ込んでもそれほど変わりはないようだ。

仕方ないので入り口を小さくして、マントと服で左手で隠しながら、右手でお金を取り出す感じかな。

服が買えるだけのお金がたまったら、服の中で亜空間を開いても見えないような、ゆったりした服を手に入れないとだな。


「よし!行こう。」

掛け声をかけても誰も居ないのだが、なんとなく気合を入れて道を歩いて行く。


改めてこの当たりを確認すると、一軒家ばかりだ。

日本の一軒家とは建物からして違うのだが、近い部分もある。家と家の感覚は狭く、どの家にも小さな庭はある。庭には、トイレと倉庫とキッチンがある。

庭の敷地部分には、壁とか敷居はないみたいで誰でも出入りできる。道路も土なのでそのままの延長に庭がある感じだな。道路は踏み固められているが、庭はそうでもないので雑草も多い。

ほとんどの家の横には路地があり抜けられるようになっている。

家は平屋で石と泥を固めた感じの家で、屋根もその延長な感じだ。

窓も付いているが、ガラスがハマっているような物ではなく、穴が開いているだけの所に木がハマっているだけだ。


今日、寝る所はあの路地だな。

路地に戻って待っていれば、アリスとも合流できるだろうしな。

そして、明日も狩りに行くか。

お金が手に入った事で、手に入れたいのは食事だな。

それと、ナイフも欲しいな。石で作った自作ナイフも悪くはないとは思うんだが、ちゃんと鉄のナイフが欲しい。

石はやはり信頼性に欠ける。硬いけど、重いし伸びがないので折れたり欠けたりしやすい。


それと服も欲しいけど‥‥これはもう少しお金を溜めてからかな。

今回の、大銅貨8枚と銅貨10枚は、日本円にして9,000円程度と予想している。

食事を1食500円で考えると、18食なので6日分だ。

服の相場はわからないけど‥‥日本で考えても子供服‥‥1揃えで1万円程度はいるんじゃないかな。

シャツ・パンツ・下着・靴下に靴、マント的な物も魔法を隠すのに欲しいので、やっぱり結構かかりそうな気がする。

下着も変えが欲しかったりもするしな。

そうなると、拠点がないと下着とかを置いておく事さえできない。

これは、先に住む所確保してからだな。


住む所は、今の手持ちでは難しいだろう。

小さくて安くても月で3万~5万くらいは必要だろうから、銀貨3~5枚を安定して手に入れないと家は借りられないという予想だ。


ナイフだけは今日中に手に入れたいので、金物屋に行こう。

ナイフや武器なんかが置いる店だ。

ハルトの記憶にもあるので場所はわかっている。今いる北東の区画のもう少しギルド寄りの場所だ。

俺の住んでる路地にも近いので少し遠回りになるだけで済む。


金物屋は、冒険者ギルドの裏手の通りにあり平屋で店の部分だけあとから増設されたのか、木で組まれた小屋のようになっている。

間口は広く、カウンターがありその奥に展示物として武器、農具、鍋や鉄製の日用品がある。

カウンターで目的と言って、物を見せてもらいながら購入する方式のようだ。


俺が店に入ると、無愛想そうなひげ面の店員が俺を見て、

「浮浪児のガキか。入ってくるな!」

「すみません。ナイフを売ってもらいたくて‥‥お金はあります。」

「見せて見ろ。」


俺は事前に出して置いた大銅貨を見せる。

「金あるなら‥‥まあいい。盗もうとしたら殺すぞ。俺から逃げられると思うなよ。」

‥‥いくら何でも、客に対して殺すって、ひどくない?

浮浪児がこの町でどんな扱いをされてるのかよくわかる。


「大銅貨1枚で、鉄製のナイフがほしいんですけど‥‥。」

カウンターの奥から、鉄製のナイフを出して見せてくれる。

ナイフ部分は鉄製で、持ち手は木製のようだ。

ナイフは分厚いくだものナイフ‥‥いや、鉄の板の片側を刃のように削っただけな感じかな。

中古品のようで、いろいろ傷が付いていたり、やすりのような物で削った跡がついている。

持ち手の部分も、いろんなシミや手垢の付いた感じで余り質の良い物でもない。

鞘のような物もないので、ナイフのみって感じだ。


「鞘はないのですか?」

「鞘付きなら大銅貨2枚必要だ。あるのか?」

「大銅貨2枚あります。」

そう言いながら、大銅貨をもう一枚見せる。


店員は先ほどのナイフを持って、店の奥に入り代わりに鞘付きの別のナイフを奥から取って来て渡してくれる。

こちらも、中古品ではあるのだが、先ほどのナイフよりもマシだ。

鉄の棒を削っただけと言うのはそれほど変わりがないのが、ナイフ部分に傷はほとんどないし、先が尖っている。

比較対象が無かったから気が付かなかったが、さっき渡された物は、先が折れて修復されていたのか丸まっていた。


鞘は木製で、革の紐が固定されておりその革紐を腰に巻いて固定する事ができる。

革紐と鞘はしっかり固定されてるようになっており、ズレたり外れたりはしないようになっている。

「革紐が付いているのは、便利そうですね。」

「ああ、それな。この店で買ったばかりのナイフを落としたと騒ぐ奴が居たんで、付けるようにしたんだ。」


この店思ったよりも親切なのかもしれない。

態度は悪いけど、浮浪児に対してお金を持っているのかと確認したり、付属品をケチったりしないのは珍しいのかも。

もしかして普通のお店ならこんなもんなのかな?

ハルトが買い物した事ないので、ただの被害妄想なだけかもしれない。


「これもらいます。」

そう言って、俺は大銅貨2枚をカウンターに置いて購入した。


購入したナイフはその場で装備して行く。

革紐を腰に巻いて、腰の右側にナイフがくるように調整する。

しっかりと固定して体を動かしても、落ちたり場所がずれたりしないかの確認しておく。

もう1本石のナイフもあるけど、これは予備にするので、あとで亜空間に収納しておこう。


「ありがとうございました。」

店を出る前に、店員にお礼を言って外に出た。

こう言う礼儀は、ちゃんとしておこう。

またお金が出来たら、いろいろ買うかもだしね。


金物屋を出たら、もう夕方だ。

金物屋からは、今朝行った水場にも近いのでそんなにかからずに路地に戻れそうだ。

そういえば、いろいろあって忘れてたが、腹も減ったな‥‥。

今朝、アリスの持って来てくれた野菜のヘタとか食べただけだしな。

この辺りの露店で何か買って、路地に戻るか。

アリスの分も買わないとだしな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ