1.冒険者ギルドへの報告(1)
ウィダスから帰って来た俺達は、まずはケニーさんの商会に荷物を置き一旦分かれる。
ロベルトさんとの約束で、ハーリさんの所に行ってお土産を渡しに寄る。
「こんにちは!」
「あら!ハルト!久しぶりじゃない。」
ハーリさんは今日も元気そうだ。
「お久しぶりです。ちょっとウィダスに行ってたのでお土産持ってきました。」
「あら。ウィダスになんのようで?」
「ケニーさんって言う、ヘビの頭の買い取りしてくれてた商人さんの、
護衛に行ってました。」
「あら・・。ハルトに護衛させるなんて、贅沢な商人さんなのね。」
「まあ、いろいろやってもらうし、ケニーさんがウィダスの出身だったので、
案内して貰うついでです。
あ・・これお土産です。」
俺は、塩の壺を1つと、干した貝類や海藻類を机の上に置いた。
「あら、ウィダスの海産物ね!これはなにかしら?真っ白できれいね。」
「なんだと思います?少し舐めてみてください。」
ハーリさんは、壺から少し手に取って舐めてみる。
「!!しょっぱい!塩なの?こんな真っ白で粒が細かいの初めて見たわ!」
この世界の塩は、不純物が多いのか結構黄色・・・茶色っぽいんだ。
それに、塩はかなり大きな粒になっており、使う時の使い勝手があまり良くない。
なので煮物に入れるか、一度砕いてから振りかける使い方をする。
その為、真っ白で細かい粒子の塩は珍しいのだ。
「これなら、そのまま振りかけても使えるので使い勝手いいですよ。」
「そうね。出来上がった料理の味を濃くしたいときにも使えそうね。
ありがと!うれしいわ。」
俺は、ハーリさんに挨拶して、冒険者ギルドに向かう。
ギルドマスターは部屋にいるようなので、マスターの秘書のような人に、
マスターにつないでもらい、マスターの部屋に入る。
「帰ったか。」
「はい。ウィダスは良い所でした。
景色も良くて、海も気持ち良くってなかなか楽しい所でした。」
「それはよかったな。俺は、あそこの潮の香ってやつが苦手でな。」
「あら。。海産物も美味しいのに。」
「・・・そんな事より情報を待ってるんだが・・。」
ギルドマスターは、ちょっとイラついた感じでそう言った。
「そうですね。実態は掴んできました。ある程度の対応もしています。
お話したいのですが、その前にブラントさん呼んで貰ってもいいですか?」
ギルドマスターは、いぶかしげに、
「ブラントがなにか関係しているのか?」
「ブラントさん自体は関係してないんですが、盗賊のリーダーがフランシスさんでした。」
「!!・・・なるほど。」
ギルドマスターは扉の外で待機している秘書的な人に、
ブラントさんを呼びだすように伝えて戻ってきた。
「ブラントさんが来るまでに、やばい方の話しておきますね。」
「なんだ?それは。」
「ドウェイン子爵でした。」
「!!」
「ウィダスの男爵に命じて、俺達の命も狙ってきました。そしてレスリー商会です。」
「・・・なるほど。」
大分端追ったけど、大体事情は分かってるっぽいな。
「で、そっちはともかくとして、男爵には名乗っちゃたんですよね。
ドウェイン子爵にも話は行くと思いますので、
ここに対してもなんらかの動きが出ると思います。」
「・・・なんて事だ。」
「俺の事を、魔法使いハルトとして探しにくるはずです。」
「!!おまえ!」
「ええ。貴族を抑えるのには仕方ないとは言え、
名乗ってしまってるのでいろいろ話も回っちゃうでしょうね。」
「く!・・・やはり、魔法使い・・・だったんだな。」
「ええ。」
「・・・王国との関係は?」
「まったく関係ないですね・・。あ・・ついでに他国とも関係ありません。」
「・・・それは朗報だな。」
ギルドマスターは全く朗報とは思ってない、苦虫をかみつぶしたような顔で肯定した。
「いろいろ衝撃的な話だな。」
「まあ、遅かれ早かれとはマスターも思ってたでしょ?」
「・・・そうだな。」
扉はが開いて、ブラントさんが入って来た。
「おお、ハルト!帰ったのか。で、俺に用事ってなんだ?」
「フランシスさんの事です。」
「ん?なんでハルトがフランシスの事知ってるんだ?」
「西の盗賊のリーダーしてました。」
「なんだと!」
「実際には少し違うんですが、詳しく話ます。」
「ああ。頼む。」
そう言って、傍にあった椅子に座る。
「西の街道から少し外れた場所に、冒険者村が出来ていました。
南西の森での、狩りの拠点として使ってたそうです。
この村のリーダーがフランシスさんです。
ここに、レスリー商会が手を出して、経済面で乗っ取った。
そして、非合法の依頼をこなす冒険者集団が出来上がったって訳です。
敵対する商会を盗賊として襲わせたり、自分たちの商会の安全を確保させたり、
税を払わずに、品物の売買をしたりして、儲けを出していたようですね。
あと、ノルマを課して無茶な狩りなんかもさせてたそうです。」
「・・・フランシスのあほたれめ!」
「冒険者村の規模は、2000人ほどでした。」
「2000!!」
「ええ。盗賊団とかのレベルじゃないですね。
ただ、半分の1000人ほどはただの農民です。
残り600人ほども盗賊に関係の無い冒険者でした。
あと残り400が実質の盗賊ですね。」
「400か・・それでもかなり多いな。」