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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
4.港町ウィダス
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フランシス視点


ハルト様に解放されてから俺は走った。冒険者村に向かって。


ハルト様の言ってる事は間違いない。このままでは、冒険者村は討伐されるだろう。

薄々分かっていたんだ、もうそんなに長く持たないだろうと。

近いうちに、討伐隊が出されるんじゃないかと。


それにハルト様なら、直接村を潰すなんて造作もないだろう。

最強に近いと言われた、俺が・・大銀が抵抗なんて許されなかった。

逃げる事も許されず、あっという間に捕まった。


それに、魔力感知のブレスレットが、焼けて腕が燃えるんじゃないかと思うほどの魔力。

あんなのバケモンじゃないか。

魔獣でさえ、ちょっと温かくなる程度なんだぞ!

あの人に逆らう選択肢だけはないと感じさせる魔力だった。


俺は、村に帰ったらすぐに、各部隊の代表者を集合させた。

俺は全部隊長の前で、この村への討伐が確定してしまった事を伝えた。

期限は、10日程度と思われる事。

そして、まずは盗賊行為にかかわっていなくて、

指名手配や護衛として行方不明になってない奴を、アイカの町に移動させるように指示した。


「レスリーさんに頼んだら、貴族様が討伐隊を止めてくれるんじゃないのか?」

「いや、もうレスリーに止めれるような話では無くなった。討伐隊は確実に来るぞ。」

「どういう事だ?」

「確実な情報として、冒険者ギルドや貴族の上層部にも話が通りそうなんだ。」

「なんて事だ・・・。

「でも、レスリーさんに相談せずに、そんな事決めてしまっていいのか!?」

「もしも、レスリーの手に負えないようになったら、

きっとレスリーは関係無いと言って俺達を見捨てるぞ。」


「・・・いや、レスリーさんもかなり俺達に儲けさせてもらっているはずだ、

相談もせずに解散なんてせずに、相談して打開策を打つべきだ。」

「レスリーは本当に、俺達で儲けてるのか?昔は確かに儲けてただろう。

でも今はお荷物になってるんじゃないか?維持に資金はかかるし、借金は返済しない。

依頼をこなさせる為に囲ってるだけじゃないか?」

「・・・」


俺は、返事を待たずに、指示を続ける。

「非合法な行為を行い、お尋ね者になっている者達には、

俺と一緒に北の開拓村に行ってもらう。」

「開拓村だと!そんなの捕まったのと一緒じゃないか!好き好んで強制労働かよ。」

「だが、他に生き残る方法はない。」

「いや・・。盗賊を続けるって手があるぜ。」

「そんなの生き残れる訳無いだろうが。討伐隊も出るんだぞ。」

「討伐隊は、この村に来るんだろ?

この村から離れちまえば、どこにいるかなんてわからないだろう?」

「それでも、残りの一生を追われ続けるぞ。

それに討伐隊はここにしか来ないとは限らないからな。」


「いや、盗賊になってもレスリーさんならなんとかしてくれるはずだ。」

「いや、レスリーはもう当てに出来ない。」

「そんな事はねえ!そういえば、レスリーさんの依頼はどうなったんだ?」

「依頼は、2番目の宿場に行ったがケニーの殺害には失敗した。」

「そっちの方がまずいじゃねえか!

レスリーさんの依頼をこなしてないってなったら、後ろ盾もなにもないじゃないか!」

「もうこの村は放棄する、レスリーを当てにする必要なんてない。」

「納得できねえな・・・。お前がレスリーとうまく言ってないのは知ってるが、

レスリーさんになんの相談もなくそんなのを決めてしまうのはいただけねえ。

レスリーさんなら依頼さえこなせば、きっと貴族様にお願いして討伐隊も止めてくれる。」


代表している人間の大半は俺の方の意見に従うが、一部レスリー派がおり、

レスリー至上主義と言うが、崇めてやがる。


確かに、最初の頃のレスリーはいろいろと助けてくれた。

貴族への口利きも、足りない資金を提供してくれて、そのおかげで、

ケガしても食っていけるような環境になっている。

食料にしてもそうだ、行商に来てくれなかったら、生活もままならねえ。

だが、それでも非合法の依頼だけは受けちゃあダメだったんだ。


それに、冒険者を増やすって指示もダメだった。

そのせいで、最近は冒険者達の中に言う事を聞かない奴も多くなってきて、

盗賊行為もかなり頻繁に行われてる。


そりゃあ、すぐに討伐隊って話になるわな。

他の商人に頼る事も出来なくなって、孤立してレスリーにしか頼れなくなった。

俺達がもう追い詰められている事に気が付いてないのか?


「ふう。やはりお前らとは平行線か。すきにすればいい。

だが、この村を俺は放棄するからな。そして俺の方針に従ってくれる奴はすぐに動いてくれ。」

「は!何が大銀ランクだ!依頼も途中で放り出して逃げ打つなんて!」


俺は、言われるままに反論もせず無視して、すぐに移動の準備に取り掛かる。

きっとあいつらは勝手に動くんだろう。

どんなに動いても、ハルト様がいらっしゃるからなにも出来ないはずだけどな。


俺は、部隊長の賛同者達とすぐに村への連絡に走る事にする。

全員に周知させるのがまずは大切だ。

その後、アイカやウィダスに行けるものには、そこまでの食料だけ渡して、

順次出発して行ってもらう。

それくらいの食料ならまだ備蓄はあるはずだ。

けが人も出来る限り、一緒に運んで貰うようにする。


俺達も、北の開拓村への移動の行程を調べたり、実際の人数の調査を行う。

レスリーを頼って、俺達と行動を共にしない奴らはついてこないだろうが、

前提としては、全員連れて行く方向で考えておこう。


翌日には、穴から救出された俺の部下達も合流し、一緒に村を回り説得を繰り返していく。

日の浅いやつらは、すぐに納得して移動を始めてくれるが、長いやつらほど思い入れもあり、

なかなか移動してくれない。

家族を連れて来てるやつらもいるし、ここで商売を始めたやつもいる。

ここでの冒険者の仕事はランクに影響しないので、いまだ銅ランクの奴らもいる。

銅ランクの奴らは、町に入るのに身分証がいるので移動を渋っている。


そういったお尋ね者ではないが、町に戻れないようなやつらも含めて、

俺達は北の開拓村に移動する為の人数の把握と食料の確保に動く。


そうこうしている内に、ケニー討伐に向かったやつらが帰って来た。

今度は、レスリーが討伐隊を止めると言っていると言う話が上がってくる。

移動を開始した奴らまで、その話を聞いて戻ってきたりしやがる。

村はレスリー派のせいでさらに混乱して、遅々として作業が進まない。


俺の説得で、一部はアイカに向かったものの、まだまだ人数は村に多い。

可能な限り、説得を続けるしかないのだが、俺達は6日後にはここを出発しなければ、

討伐隊と鉢合わせしてしまうので、ぎりぎりまでの説得を覚悟するしかなかった。


そんな時に、ハルト様がやってきてくれた。

冒険者ギルドからの正式な指名依頼で、

めぼしい冒険者を連れて開拓村の開拓の手伝いを行えとの依頼だ。

この依頼さえあれば、俺達は正規の指名依頼として、冒険者ギルドの後ろ盾があるような物だ。


ハルト様には、感謝しかない!

そして・・・ハルト様は、師匠を連れて来てくれた。

後ろめたかったし、会えないと思ってた、思いっきり殴られたが当たり前だな。

すべて、俺の招いた結果だ。

師匠に怒られて、俺の見通しの甘さを痛感した。


俺は、さらに気合を入れ直し、指名依頼を受け取った事で、

正式な冒険者ギルドからの依頼だという大義名分のもと、村人の説得に走る。

効果は絶大だった。

レスリー派のやつらも、冒険者ギルドからの正式依頼である事と、

冒険者ギルドがこの村を把握してしまっている事を認識したので、

俺達を邪魔するような事はなかった。


4日目で、なんとかアイカに向かう人達の大半は出発する事が出来た。

後は、開拓村に移動する人員と、まだ出発に戸惑っているアイカに向かう人員だ。。


7日目になっても、レスリーからの連絡が無い事で、

レスリー派もそれほど大きく活動はしていない。

一部は俺達についていく事に決めたようだ。


俺達は出発するが、最後までレスリーを信じているやつらについてこないか聞いたが、

レスリーを信じて待つそうだ。

俺達は、荷車をいくつも使って食料を運び出し北の開拓村に出発する。

結局村に残ったのは、150人程度だった。

俺達は、200人強くらいの人数で北を目指す。


俺達が出発したら、農民達も1週間ほど村を離れるように指示を出している。

ハルト様の指示だ。

討伐隊が来ると、農民も無事では済まない可能性もあるので、

一旦退避させておくようにとのご指示だった。


俺は、いままで世話になった、冒険者村を見ながら、もう戻って来れない。

今回の過ちを繰り返さないように、開拓村での生活を考える。

この村には、最後にこんな事になってしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


俺達は、アイカ側には向かわず、直接北上し農業地帯を突っ切る行程で進んで行く。

一緒に移動しているのは、ほとんどが冒険者なので、野営になっても問題ない事、

早めに、アイカからの討伐隊が出ていた場合には、鉢合わせが怖い事などが理由だ。


北の開拓村まで、アイカから1週間ほどだが、

俺達の村からでも同じくらいの行程になるだろう。

北の開拓村でどのような事になるのか分らないし、

強制労働と同じような扱いを受ける事になるかもしれない。

それでも、俺達は向かうしか生き残る方法はないのだろう。


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