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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
4.港町ウィダス
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アリーヤ視点(2)


男たちの乱暴もやまない生活が半年以上も続いた。

あたしたちは、ただの生ある人形だった。

何人もの女達が、死んでいった。

数が減ると、またどこからか補充が来た。

もう、限界だった。


そんな時だった。

ハルト様が来てくれたのは。


最初は、何が起こったのか分からなかった。

あたしの足は、もう二度と歩けるはずはなかった。

折れた足が、ゆがんでつながったからだ。

もう、戻せないのも分かってた。

助けが来るなんて事が、無いのも分かってた。

後は、今まで死んでいった女達と同じように、死ぬだけだと分かってた。

死ぬまでここで生きているだけだと分かってた。


でも、歩けるようになった。

清潔な服を用意してくれて、体も洗って貰って、ベッドで寝て、

お腹いっぱいの食事が食べれた。

もう死ぬだけだと分かってたはずなのに、すべてが分らなくなった。

クシェルは、みんなに「助かったんだ」って説明してるけど、

何を言ってるのは分からなかった。


あれから、なんだか分からないうちに2番目の宿場に行って、

そこからアイカの町に戻って来た。

旅の途中で、盗賊達が全滅したのを聞いた。

あの子達の仇はもう打たれた事を知ったんだ。

クシェルも唇を噛んでいた。悔しかったはずだ。


冒険者ギルドで、お目にかかる事なんて無いだろうと思ってた、

ギルドマスターにお会いする事が出来た。

お話をしてくださり、何があったのか聞かれた。

ハルト様の言ってた事をお話したのだが、話半分だったのになぜか納得されてた。


クシェルと、ファギーと3人で、これからどうするか話し合った。

クシェルが、

「ハルト様もこの町にいるという話です。ハルト様にお会いしよう。」

と言った。


それには賛成だ、ハルト様がいなかったらあたしらが生きてる事なんてない。

ちゃんとお礼が出来るならしたい。

でも、クシェルの考えてるのは違ったようだ。


「ハルト様にお仕えしたいと思ってる。

これはあたしだけの気持ちかもしれないけど、あたしはあそこでもう死んでいた。

それを救ってくれたハルト様にすべてを捧げたいと思ってる。」

「あたしも気持ちも同じだな。それに、もう冒険者として戦う事なんて出来ないよ。」

あたしが同意するとファギーも、

「うん、あたしもだ・・・それに、もしもハルト様にお仕え出来ればすごい事だよね。」


確かに、魔法使い様にお仕えするなんてとんでもない事だ。

それに思い至ったたら、とんでもない望みを話してるんだと気が付いた。


「・・・それは望み過ぎなのかもしれないわね。

でも、なにかのお役立ちたいという気持ちはお伝え出来ればと思うの。」

クシェルも思い至ったようで、そんな事を言った。

「ギルドマスターにハルト様と連絡を付ける方法を聞いてみるね。」


ギルドマスターに話を聞くと、ハルト様は露店の店員を募集しているとの事だった。

それならば、あたしらにも出来る事がある!

ギルドマスターに、応募したい事を伝え、またハルト様にお会いする事ができた。

そして、ハルト様にお話しをさせていただき、そばにお仕えする事を許可いただいた。


ハルト様の家には、あの時にあたしが囮にし、

一緒に盗賊の所に捕まっていたリルとも再開する事が出来た。

リルも、マディもハルト様を、心から信頼しているようだった。

2か月ほど前に救われたそうだ。


リルの話を聞くと、すっごい贅沢な暮らしをしているらしい。

あたし達にも個室が与えられ、ハルト様と同じご飯を食べ、新しい事を教えてもらっている。

今まで覚えたかった、文字も教えてもらう事が出来た。

難しいけど、計算も教えてもらっている。


料理も思ってたよりもずっと楽しい事が分った。

あれはマディが楽しんでるからだろうな。

マディは料理だけ作ってれば幸せって感じの人だ。

でも、すごい研究熱心でハルト様からの信頼も厚い。


アリスやジャック、ミーアもすっごいいい子だ。

ジャックはいろいろやり過ぎてて見ててほほえましいが、相当やんちゃだな。

でも、ミーアの事を本当に大事にしてるのが良く分る。

ミーアはハルト様の事をジャックよりも信用してそうなので、ジャックも救われないわね。


・・・クシェルが妹をかわいがっていたのを思い出すな。

クシェルも、見ていて思うんだろうな。

ジャックの事は、特に目をかけているようで、良く叱っている。

クシェルとしては、ほっておけない弟のように思ってるんだろうな。

いえ・・あたしらの年齢なら子供かな。


アリスは、お姉さん気質の小さなクシェルみたい。

ハルト様の事が大好きなのがよく分る。

解体の事を一番知ってるので、あたしらよりも解体がうまい。

あたしらが狩った獣なんて全部で数えるくらいだから、

1日10匹近い数の解体している、アリスとは比べるのもおこがましいな。


とうとう、ハルト様に護衛の仕事をを仰せつかった。

戦闘は無いという事だったが、あたしは震えた・・怖くって。


それに気が付いたのか、ハルト様はあたし達にすごい剣を用意してくれた。

ここで使ってた包丁や解体で使っててたナイフもすごかったけど、

作っていただいた剣は格別だった。


しかも、あたしの要望を聞いていただいて、短く軽くしていただいた。

この剣は引いても押してもないのに、触れるだけで切れるんだ。

細身なのに硬さもすごく、どんなに振ってもしなる事さえない。

ハルト様が言うには、エストックって剣の種類に似ているそうだ。


この剣があれば、獣でも人でも当たれば、力を入れなくても切り落とせる。

あたしは力はないけど、当てるのだけは得意だから・・・。

それに、投てき用の武器迄作ってくれた。


ハルト様に心配をかけてるんだと思うと申し訳ない。

恐ろしいが、護衛任務しっかりさせていただこう。


護衛任務という事で同行したのだが、実際にはまったく戦闘もなく、

常にハルト様はあたし達を気遣ってくれ、守ってくれている。


それに、お休みの海は楽しかった。

バーベキューも美味しかったし、あのジュースのなんておいしい事か!

でも、ハルト様が作ってくださるので、お代わりを言い出せずに1杯しか飲めなかった。

ハルト様に、マディが作り方を教えて貰ってたから、マディが覚えたら作って貰おう。


ウィダスの食材を使ったら、今の食事もさらにおいしくなるって話だったんだけど、

今よりおいしくなるってなに!?今よりおいしい物があるの!?


あたし本当に、生きてるのかな?

あの足を折った時に本当は死んでしまったのかもしれない。

そして、夢を見てるんだ。でも、この夢は幸せな夢だな。


この幸せな夢が覚めないようにに、夢の中で努力しよう。

出来る事ならなんでもしよう。


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