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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
4.港町ウィダス
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アリーヤ視点(1)


あの足を折られた瞬間、あたしは死んだんだと思った。


あいつら、元々冒険者としてさえない、あたしらを狙っていたんだ。

おかしいと思ったんだ、あたしらみたいに冒険者としての実力の無いパーティーに、

声をかけてくるなんて。


農村を襲って、収穫した物を奪うって話だった。

盗賊なんてやりたくなかったが、あたしらもかなり切羽詰まってた。

獲物は取れないし、採取しても1日分の食事代にもなりはしない。

パンだけを分け合う食事にはもう飽き飽きだ。

それで、乗っちゃったんだよね。


東の街道沿いの農村なら、盗賊しても騎士団が出る事なんてないって話だったし、

報酬だけ山分けしたら現地ですぐに解散するって話でもあったから。

腹いっぱい食べたかったってだけで参加したんだ。


でも、行ってみたらそんな甘いもんじゃなかった。

最初から、農作物を脅し取るつもりなんてなくって、殺して略奪するつもりだったんだ。


農村の代表が話し合いに来たんだが、一言も話す事なく切り捨て農村を襲い始めた。

盗賊達は、そのまま農村に入り、手当たり次第に農民を切って行く。

あたしらパーティは怖くなって、すぐに農村から離れて逃げ出そうとしたんだが、

あたしらを見張ってたやつらがいて「殺さないなら、お前らが死ぬか?」って。


あたしらは、怖くなって農村の方に逃げるように移動したんだ。

もちろん、農民を殺す気なんて全くなかった。


農村は、惨劇だった。

子供を抱えた父親が、子供ごと串刺しにされている。

恋人なのか、夫婦なのか、男が女の手を引いて逃げてるが、

男は殺され女はそのまま連れて行かれる。

老夫婦は、折り重なるように殺されている。


「なんでこんな・・。」

あたしらのパーティは全員泣き崩れて、その惨状を見ているしか出来なかった。

衝撃的な光景だった。


あたしたちの目に映るのは、荷車に積まれた荷物と、ロープで繋がれた女達。

そして下卑た笑いを浮かべながら、戦利品の確認をする盗賊達。

あたしらは、その仲間なんだ・・・。


そんな中、あたしらの居た場所の近くの家から声が聞こえた。

そっちを見ると、ひとりの女が連れ出される所だった。

あたし達はその光景を茫然と眺めていた。


そんな時、後ろから声がした。

「お前らもだ。」

そう言いながら、後ろからあたしの首に腕を回し、身動き出来なくさせる。

何が起こったのか分らないままに、あたしの意識が薄れて行く。

「アリーヤ!」

クシェルの声が聞こえたら、衝撃があり首に巻き付いてた腕が少し緩んだ。

その隙に、しゃがんで巻き付いてた腕から逃げ出し状況を確認すると、

さっき後ろであたしたちを脅していたパーティーが剣を構えてた。

そして、あたしを狙って剣の腹で殴りかかってくる。


なんとかかわした所で、ファギーがその盗賊に体当たりをして倒してくれる。

クシェルも剣で応戦しているが、人数も経験も力も全く歯が立たない。

「にげるよ!」

クシェルからの指示に従い逃げようとする。

盗賊達はあたしらを逃がさないように、回り込み逃げ道を塞ぐ。


あたしは仕方ないので、さっきの家の方に逃げ出し、

捕まってた女を連れて行こうとする盗賊を切って、その女を逃がす。

その女が逃げる事を見越して、囮にしあたしらが逃げれるようにとの判断だ。


女は自由になった事で、すぐに逃げだしそれを数人が追いかけていった。

その隙になんとか逃げ出そうと、女の逃げた方向と逆側に走り出す。


そこで、あたしに何かが当たって、その勢いで盛大に前のめりに倒れた。

「おいおい!せっかくの女なんだから殺すなよ!」


あたしに当たったのは、仲間だった・・・だが、もう首は無かった。

あたしは震えて、しゃがみこみ動けなくなった。

仲間だった死体を抱きしめたまま、泣くしか出来なかった。


それでも、クシェルは自分の妹をかばって戦っていた。

ファギーも、殺されたのか頭から血を流して倒れてしまっている。

クシェルの足が払われ、その勢いでかばわれてたクシェルの妹が押し出される。

そこに剣の腹でクシェルを狙ってた盗賊の剣が振るわれ、クシェルの妹はそれに当たり

大きく吹き飛んで行く。

クシェルにも、倒れた所で上から剣が振るわれ剣の腹で頭を殴られる。

あたしも、まったく動けずに、仲間だった死体を抱きしめて泣いている。


倒れたクシェルの唇が動いたのが見えた。

「逃げろ。」


あたしは、それで我に返りすぐさま逃げ出す。

しかし、すぐに回り込まれ足を剣の腹で殴られ激痛と共にひっくり返る。

男達は、にやにやと笑いながらあたしらを縛っていく。

さっき、囮にした女も捕まったようだ。

そこで、あたしの意識も途切れてしまった。


あたしらは、そのまま盗賊のアジトに連れらていったようだ。

クシェルの妹も連れてこられていたが、

そのあと目覚める事なく・・・死体になってしまった。


それからの生活も、地獄だった。

あたしは足が折れまったく動けなくなった。

クシェルは、何人かにケガをさせたようで、気晴らしに殴られるようになった。

ファギーは、死んではいないが、起きている時の方が少ないくらいに、

なにかがある度に気絶するようになった。


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