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無限の魔法使い  作者: 志野 勇希
2.転生
11/223

7.ロベルト家


門入った所の詰所の裏で15分くらい待っていると、先ほどの門番の人か来た。

「待たせたな。ハルトだっけか。」

「はい。」

「俺は、ロベルトだ。いや~、いい買い物ができたぜ。店で買ったら銀貨3枚以上しやがるし、南門当番なんでウサギ狩りの冒険者なんかも会う事ないからな。ほんとに助かった。」

「いえいえ~。こちらも解体教えて貰えるので助かります。」

「金は家についてから渡すって事でいいか?」

「はい。」

「じゃあ、行こうか。」

商品も、家についてから渡します。

俺はウサギの足を持ち、ぶらぶらさせながら、ロベルトさんの後を付いて行く。


「で、聞きたい事ってなんだ?」

南門から中央広場に向かいならロベルトさんは話を聞いてくれる。


「あの~。今更なんですが、通貨の事教えて貰えれば。」

「ん?通貨の事ってなんだ?銅貨が10枚で大銅貨とか、大銅貨が10枚で銀貨とかってそういう事か?」

なるほど‥‥という事は、やっぱり10枚換算のようだ。


「そうです。そのあたりはわかるんですが、それより高い通貨を教えて貰えればうれしいです。

あと、値段に使われる数字の文字も‥‥。」

「じゃあ、銀貨の上は大銀貨だ。その上は金貨さらに大金貨と続く。大金貨の上は、白金貨だ。貨幣の種類はそこまでだな。それぞれ10枚で上の貨幣になる。」

「なるほど。」


・銅貨 = 100円

・大銅貨 = 1,000円

・銀貨 = 10,000円

・大銀貨 = 10,000円(10万円)

・金貨 = 10,000円(100万円)

・大金貨 = 10,000円(1000万円)

・白金 = 10,000円(1億円)


うん‥‥金貨さえ俺は使わなさそうな気がするな‥‥。だって5歳だし。

まあ、通貨は10倍って事が判ったので良しとしよう‥‥。

慣れるまでは面倒そうだな‥‥。日本の通貨の方が判りやすい。

金貨って純金だったりするのかな?

見てみたいかも。


「他の種類のお金ってあったりするのですか?」

「他の種類っていうのはどう言う意味だ?」

「え~っとたとえば、他の国のお金とか、他の種類のお金とか。」

「他の国ってなんだ?国なんて1つしかないだろ。他の国を知っているのか?」

あ‥‥まずい質問だったかも。


ロベルトさんは、立ち止まり俺の顔をまじまじと観察する。

「あ、いえ。昔のお金とかそういう奴です。」

「‥‥獣人ってわけでもなさそうだな。ああ、なるほど昔の時代の金って事か。」

「はい。」

なんとか誤魔化せたっぽい。

他国との鎖国体制の国とかなら、危険な質問だったのかもしれない。

獣人を疑われたって事は、獣人は別の国なのか別の通貨を使っているって事なのかな。

「昔は、鉄貨って言うのもあったそうだ。だけど、この町の東の方に新たな鉱山が見つかった事で鉄の価値が下がって鉄貨は使われなくなった。まあそれでも鉄製品は高級品だがな。」

「そうなんですね。」

「鉄貨は、10枚で銅貨だったそうだが、枚数持つと重いし屑鉄と価値も変わらなくなったしで無くなったんだ。

無くなる時にはそれなりに大変だったらしいぞ。今まで1個売りができてた商品が、セット売りで最低銅貨1枚ってなったからな。」

「そうなんですね。」


「これが銅貨だ。」

銅の細長い板で、幅1センチ長さ5センチくらい物で、文字が刻まれている。

「で、これが大銅貨」

こっちは、銅の板って感じかな。日本の千円札とほぼ同じ大きさの板だ。

なるほど‥‥。銅貨10枚分って事か。


「ほかの貨幣は手持ちにないけど大きさはほぼ同じだ。それぞれに国の名前が入っているんだが、たまに入っていないのも流通する事がある。そういった場合には重さを計ってちゃんと銅貨の重さがあれば使える。まあ、国の名前が削れて読めないのも同じ扱いされるけどな。」

偽造するとかって事じゃなくて、素材自体の価値がそのままその金額になるって考えか。

「なるほど‥‥。参考になります。」

「難しい言葉使うなぁ。」


何となく、この貨幣制度の意味が分かった気がする。

大銅貨を10枚とか持ったらそれだけで結構な重さだ。貨幣を分ける事で重さを軽減させてるんだろう。


ロベルトさんと大通りを歩いているが、川に入って綺麗にしたし髪も切ったとは言え、恰好は浮浪児その物なので大通りを1人でうろつける恰好ではない。

さらに裸足というのも、結構目立つ。

ロベルトさんと一緒じゃなかったら、やっぱり衛兵に見つかると路地に放り込まれるんだろうな。

お金に余裕ができたら、服と靴も買わないとだなぁ~。


ロベルトさんの家は、俺の住んでいた路地からと同じ区画である、北東の区画にあった。

ロベルトさんの説明で、分かったのだがこの町は東西南北を大通りで仕切られている。

一番北側には、貴族街と言って領主を始め町の統治する貴族達が住んでいる。

それに近い場所に、貴族の業務を手伝う平民が住んでいる。

貴族街に近いほど重要な仕事をしていると言う事だ。

門番も、貴族の仕事の手伝いと言う事になるので、北よりに住んでいる。

それ以外は大体こんな感じ。

・北西区画は、商人が多く住んでいる。

・北東区画は、ギルドと倉庫が中心になっている。

・南西区画は、職人などが中心に住んでいる。

・南東区画は、貧民街やギルド所属の平民が住んでいる。

その中でも、大通りに近ければ近いほど裕福な家になるそうだ。


「着いたぞ。ここが、我が家だ。」

ロベルトの家は、大通りから結構入った所にあったので、裕福と言う訳ではないが家自体はそんなに小さくもない。

平屋の一軒家で裏に小さな庭があり、倉庫とトイレとキッチンが外にある。

一般的な家の形のようだ。


玄関の前で、ロベルトさんが声をかけると奥さんだろう人が玄関を開けて迎え入れたくれた。

「ただいま。」

「おかえりなさい。」

「今日は、客付きだ。」

「あら‥‥。かわいい子じゃない。いらっしゃい。」

「初めまして。ハルトと言います。」

「ロベルトの妻のハーリです。よろしくね。」

ロベルトの奥さんだろうか、30歳くらいの少しぽっちゃりとした感じの活発そうな女性だ。


ロベルトさんは、ハーリさんに得意げな顔をしながら、

「黒耳ウサギ‥‥手に入れたぞ!」

「え!ほんとに?」

「はい。こちらに。」

そう言いながら、俺の背中に背負われた黒耳ウサギを前に出す。


「うわ!もしかして、この子が狩ったって事!?すごいのね!」

「ああ。俺もびっくりしたんだが、間違いなく黒耳ウサギだし、売って貰えるように頼んだんだ。大銅貨9枚で良いって。」

「え!ほんとにいいの?冒険者ギルドだと銀貨1枚で買ってくれるわよ。状態も悪くなさそうだし‥‥。」

「ああ。その代わり解体の仕方を教えてほしいそうだ。」

「ああ、なるほどいいわよ。私は解体の専門家ですからね。みっちり教えて上げるわ。これであの子も喜ぶ事間違いなしね!さあ上がって。」


玄関から入ると、すぐにリビングのような場所になる。土足で上がる方式っぽい。

解体の専門家な主婦って‥‥この世界では当たり前なのかな?

現代日本にはきっと1人もいないよな。いや狩猟している家の奥さんとかでもしかしたらいるのか?まあ、非常にレアなはず。


「じゃあ、すぐに始めた方がいいわよね?どうぞ入って。」

「おじゃまします~。」


ハーリさんに導かれて、キッチンへと向かおうとすると、

「おっと忘れてた。ウサギの代金払っとくな。大銅貨9枚でいいんだよな?」

「はい。ありがとうございます。できれば大銅貨8枚と銅貨にしてもらっていいですか?」

「ああ。その方が使いやすいもんな。」


小さい植物で編んだ袋を出してきて、これに大銅貨を8枚と、銅貨10枚を入れてくれた。

「では確かに。」

結構な重さだ。大銅貨9枚分でもずっしり来るな‥‥。

銅貨1枚で10gくらいだとしたら、大銅貨1枚で100gなので

大銅貨9枚という事は900gだ。1リットルの水と同じくらいの重さか。


ハーリさんに案内されたキッチンは、家の裏口から出た所にあった。

屋根はあるけど壁のないスペースに大きな木製の作業用のテーブルがあった。

横には火を焚くスペースがあり、火は消えているが、鍋は置かれたままになっている。

家の壁際には、薪が高く積まれておりこの薪で調理しているようだ。


「ウサギはそのテーブルの上においてもらえる。」

「はい。」

俺が背負っていたウサギをテーブルの上に乗せている間に、ハーリさんは家に入ってナイフっぽい物を数個持って出て来た。

薪の近くに置いてあった木製のタライのような物をテーブルの下に置いて準備している。


ハーリさんは、ウサギの状態を確認しながら、

「ちゃんと血抜きはしてるみたいね。え?これ首を一撃だけ?すっごい状態いいじゃない!」

「たまたまです。」

「本当にいいの?この状態だと銀貨1枚と大銅貨2~3枚は行くかもしれないわよ。」

「はい。もう大銅貨9枚いただきましたし、その分は解体の方法教えてもらう授業料という事で。」

「わかったわ。そういう事なら、しっかり教えて上げなくちゃね。私これでも冒険者ギルドの解体担当の中でも結構な腕なのよ!」


専門家ってそういう事か。

冒険者ギルドでの解体担当って事は、1日何体も解体し続けてるからそりゃ専門家だわ。

かなりの当たりを引いたのかも、お金払って教えてもらうレベルの人なのかも。

って、お金払って教えてもらっているか‥‥。

さっきのお金でとりあえず、生活出来そうだし、この出費と言うか、安く売ったのは正しい選択っぽいな。


「血抜きは、切って吊るしたって感じじゃなさそうだけどどうやったの?」

「首の所を切って逆さまにして持って帰ってきました。」

「そんな事したら危ないわよ。血を追って他の獣がやってきてしまわよ。」

やっぱりそうだったか‥‥と言うかそうだよな。

「途中でそれに気が付いたんですけど、もうその時にはほとんど血が出た後だったんで‥‥。次からは気を付けます。」


ハーリさんはあきれた顔をして、

「いい。血抜きをする時には、先に穴を掘っておいてそこに血を流すの。その時に内臓も出して中に入れたらしっかり埋めて、獲物から血が垂れないように、布で包んで持って帰って来るのよ。」

なるほど。勉強になる。


「内臓は食べたりはしないんですか?」

「ああ、そうね。内臓は食べられない訳じゃないけど、売れないから持って帰る必要はないわね。狩りをしている人達は、内臓を自分達で食べる事もあるそうよ。」

「現地で料理して食べるって事ですか?」

「まあ、そうでしょうね。臭いし、美味しくないし、たまに体調崩したりするので、食べるのはランクの低い人が食べるくらいね。あなたみたいな子供が食べるのは危険だから辞めなさいよ。」


病気や寄生虫なんかは、火を通せば大丈夫だろうし、臭いも洗ったり薬味でいけそうな気もするんだけど‥‥。ダメそうかな?今後の課題としよう。

「はい。」


「じゃあ、解体していくわね。」


もうすごかった。

何がすごいって手際がすごい。

はじめて解体作業なんて見るので、下手したらグロくてエズいたりするかと思ったけど、そんな事もなくなんと言うか職人技だった。

なんか、魚屋さんやお寿司屋さんが魚を捌くのを見ている感じだった。

俺も釣りはそれなりにやってたし、魚も捌けるから違いの部分を質問しながら学習していく。


解体にもいくつか方法があるそうで、頭を落とさずに皮とつなげたままで加工する方法や、皮が食べられる鳥などは皮を剥かずに骨だけ分けるやり方、ある程度骨を残すやり方や、完全に骨を取り除くやり方などだそうだ。


今回の黒耳ウサギの場合には、食用なので頭は捨てる。皮を食べようと思えば食べられるが、加工品として使えるので毛をムシらずに皮ごと外す方法にしている。肉の部位がそれほど多くもないので、ある程度骨付きの肉の部分を残すやり方だそうだ。


頭落として、お腹捌いて内臓を桶に捨ててお尻から首までを縦にひらいたら皮を剥きながら肉の部分も外して行く。

この時、皮は繋がった部分が多ければ多いほど価値が上がるので、注意しながら外す必要があるのだそうだ。

皮が完全に剥けたら、骨を外したり切り身にしたりしていく。


「はい、ここまでで解体終わりね。どう?出来そう?」

「何となくですね。いざ自分でやると違う買ったりわからない所が出て来そうです。」

「わからない所あったら、聞きにきてくれていいわよ。」

「ほんとですか!ありがとうございます。」


「この肉は4日くらい熟成させれば食べられるようになるわ。」

「4日もかかるんですか?」

「そうよ。温かい所においておけば、2日くらいで食べられるようになるんだけど、あんまり温かい所だと腐っちゃうので、冷暗所に大体4日くらい熟成しておくの。熟成させないと、肉が固くって食べられないのよ。」

「そうなんですね。狩ったらすぐに食べられると思ってました。」

「じっくり煮込んだら食べられなくもないけどね。今回は焼いて食べようと思ってるから、先に柔らかくしてから食べるのよ。」


狩ってその場で食べるとかって勝手に思ってたけど食べられないんだ。ってそう言われてみればそうかもしれない。

死後硬直とかってあるんだよな。サスペンスとかで良くやってるよな。

死後2~3時間から始まって12時間くらいで完全硬直、4日くらいで完全に硬直が無くなるってやつだったか。

それが動物にもあるって事だな。

確かに、持って来たウサギも固まってたな。


そうなると予定してた、食料供給の予定が狂ってきたぞ。

たとえば今日狩っても、食べられるのは4日後からか‥‥。しかも、4日間保存する場所も必要になる。

基本は売って金にする方向か。


ハーリさんは取れたウサギの皮を広げながら、

「ねえ、どうやって狩ったの?体に傷1つないし、この首の1撃もすごく鋭利な刃物の傷‥‥。」

「まあ、たまたまです。」

「‥‥まあいいわ。狩の秘密は人に話さないのが普通だしね。とにかくこれだけ傷がない皮だと買い取りも期待できるわよ。」

「そうなんですね。あ‥‥そうだもう1つ教えて貰ってもいいですか?」


「なにかしら?」

「数字と貨幣の文字を教えてほしいのです。」

「いいわよ。木札に書いてあげるから、それで練習してみてね。」


ノートくらいの薄めの木の板の事を木札と言うらしい。これに、鉛筆のような木の棒を使って文字を書いて行く。

インクは、煤を少量の水で溶いただけの物で自家製だそうだ。

「お店に売ってるインクと違って、これは文字に触ったら消えてしまうので注意してね。」との事だった。

持って帰る時に注意しないとだな。


ハーリさんはその木札に、丁寧に数字を書いてくれた。

数字は、ローマ数字のように規則性があって棒が増えてくほどに大きな数字である程度の所で記号が変わったり増えたりする。

これなら簡単に覚えられるし、桁が大きくなっても問題なさそうだ。


その下に、銅貨とか大銅貨とかの貨幣の種類も書いてくれた。

こちらも、記号の一部が変化するだけなので難しくもない。

ただ使われるとしても、商売人同士のやり取りくらいで、通常は品物の大体の相場はみんな知ってるので、値札があったとしてもあえて貨幣の文字は書いていないそうだ。

それと交換レートも合わせて書いてくれた。

交換レートはさっきロベルトさんに教えて貰ったレートだ。


注意しないといけないのは、たとえば銀貨を1枚持っていたとして、銅貨の商品を買おうとしても通常は買えない。

それはお釣りの問題らしい。

基本露店で商売している人は難しい計算は出来ない。その為お釣りの計算が出来ないのだ。

なので、大きいお金を出されると断られる。

じゃあ、大きいお金の使い道がないのではないかとも思うが、各ギルドでは有料だが両替をしてくれる。

そのギルドへの貢献度が上がると、無料になるそうだが両替するのに大銅貨1枚程度は取られるそうだ。


お金の価値や文字、その辺りの情報はこれからお金を稼ぐのに必須の知識だったので、払った額に対して十分な価値があった。

ハルトの記憶にあればよかったのだが、そもそもお金なんて持ってた事ないのでまったく情報がなかった。


「本当に、いろいろ教えていただきありがとうございます。」

「いえいえ。こちらこそありがとね。う~ん、ほんとにお利口な子ね。解体だけでなく、困った事や分からない事があったらいつでも聞きにきてね。」

「はい。ありがとございます。」


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