45.アイカへの帰路(3)
「前なんか、こんな太い丸太を振り回して戦った事もあったわよね!」
「あの時は、剣が弾かれてすぐに見つからなかったし、状況もやばかったから。」
「鈍器的な武器の方が得意だったりするのかな?」
「そうですね・・・剣だと刃を立てて攻撃しないといけないので、
攻撃する方向が決まってしまうんですけど、こん棒や丸太なんかだとそれを気にせずに、
当てるだけなので戦いやすいですね。」
「なるほど。鈍器か・・・。今度作ってあげようか?フレイル的なのはどうかな?」
「フレイルってなんですか?」
「普通の鈍器と違って、こん棒の先に鎖が付いててその向こうに鈍器が付いてるの。
力だけでなく勢いも乗るので、当てた時の威力がかなり大きくなる武器だよ。」
「う~ん。でも、変わった武器ですね・・。変わった武器は使いにくかったりするので、
もっとシンプルな物の方がうれしいです。」
「そっか・・・。俺的にはフレイルはロマンなんだけどね。
じゃあ六角棒的なの作るね。」
「六角棒?」
「シンプルな鉄の棒です。六角形してるんでそう言われてるそうです。
かなり重い武器なので、ファギーが振る事が出来る長さに調整して作成するよ。
ファギーの力次第だけど、かなりの威力が出るはず。
剣よりもよほど頑丈だし、切れないけど衝撃は大きいし刃こぼれなんかも無い。」
「それはシンプルで素晴らしいですね。楽しみです。」
「アリーヤは今の剣でいいのかな?少し短めの片手剣だけど。」
「う~ん。そうですね。これで満足してますね。」
「片刃の剣とかってどうかな?」
「片刃ですか?」
「片刃にすると、ソリを付けれるので切そこなった時にも振り抜きやすくなるんだよ。
それに、片刃だから重さをもっと軽くしても硬度は十分に確保できるしね。」
「なるほど。軽くなるのはいいですね。試してみたいですがいいですか?」
「うん。今度作ってみるね。試して使いにくかったら元の剣使ったらいいから。」
斥候と言ったら、忍者装備だろ・・・という事で、片刃を推奨してみた。
まあ、戦う事自体ないとは思うけど、合う武器を持ってるのは良い事だし、
もしもの時に準備不足だったりしたら、後悔してしまうからね。
「クシェルは、片手剣が一番得意なんだよね?」
「はい。そうですね。ハルト様に作っていただいた、
この片手剣が今までで一番使いやすいです。
あ・・弓も使えるので今度お時間のある時にでも弓があればうれしいです。」
弓か・・。遠隔武器か・・・それもいいね。ボウガンとか楽しそうだな。
構造難しそうなので、和弓しかイメージ出来そうにないな・・・。
竹とかで出来てるんだっけか?
「今度試してみるね。」
俺は、武器の使い方とか知らないけど男の子だ、
ゲームとかの武器はそれなりに知ってたりする。
使ってくれる人がいるなら、作るのは楽しそうだな。
そんな話をしながら、順調に1番目の宿場に到着した。
今回は宿の争奪戦に負けてしまい、護衛の人達と共に野営場所で野営する事になった。
大き目のテントは、有料で貸し出してくれたので、その中で寝る事になった。
このテントなら、亜空間出しても外から見える事はないので大丈夫そうだな。
「ケニーさん、夕食はバーベキューにしましょっか。」
「バーベキューですか?ほかにも護衛がいるので目立つんじゃないです?」
「露店の前哨戦と言うか、ここの護衛相手に試してみるのはどうかと思いまして。」
「なるほど。明日には町に付くので護衛達も資金に余裕があるかもという事ですね。」
「まあ、なけなしの有り金を最後に搾り取るという言い方も出来ますけどね。」
「ははは。確かにそうかもしれませんね。いいですねやってみましょうか。」
「クシェル達にも、良い練習になるかもですしね。
クシェル、一旦家に戻ってマディやみんなに手伝って貰って用意しておいて。」
「はい。かしこまりました。」
3人が準備を終えて戻って来たら、さっそく開始だ。
バーベキューコンロを用意して、炭を入れて火を起こす。
そこに、下ごしらえの終わったシカ肉を1人前ずつ焼いていく。
シカ肉とニンニクの焼けるいい匂いがあたりに漂い始める。
器は、使い捨て出来るように、木を薄く削った物を折りたたんで、
皿の形にしたものを用意する。船皿ってやつだ。
この世界では、箸やフォークなんかは使わず基本的には手づかみなので、
皿だけ用意しておけばいい。
もちろん、貴族とかはフォークとかきっと使ってるんだろうけど・・・。
木の板に、大きく1食大銅貨1枚と記載してコンロに立てかける。
読めない人には説明しよう。
クシェル達3人に焼いて販売をしてもらい、俺とケニーさんは夕飯代わりに試食に興じる。
「やはり、美味しいですね。この味だと大銅貨1枚ではやはり安いと思いますけどね。」
「まあ、それでもパン10個分の値段となると、冒険者には厳しいでしょう。」
「やはり、商人狙いの方がいいかもしれませんね。」
「でも、もう冒険者ギルドの前に売る場所確保しちゃったんですよね。」
「いつのまに!」
「あれ・・言ってませんでしたっけ?冒険者ギルド前での販売を、
ギルド側に調整してもらってるんです。」
「なんと・・そうでしたか。そこなら冒険者も、依頼に来る商人も狙える絶好の場所ですね。」
「ですよね。」
「でも、ギルドの中に飲食店があるのに良くそんな場所確保出来ましたね。」
「いま、そのあたりをギルドマスターに調整してもらってるんです。
でも、依頼の報酬として確保して貰っているので、
その場所での営業自体は確定で考えていいと思ってます。」
「なるほど。ギルドマスターが調整しているなら大丈夫そうですね。」
「値段については、まず最初は宣伝も含めてシカ肉は安めにしておいて、
他の料理の時に値段を上げて行く方法もあるかもですよ。
まずは宣伝費込みの値段設定という事で・・・。」
「確かにそういう考え方はありますね。
その内シカ肉を一旦取りやめて金額上げて再登場とか出来ますからね。」
と、そんな話をしていると、冒険者達が匂いに釣られてやってきている。
「それ、売ってるのか?」
「ええ。販売していますよ。1人前大銅貨1枚です。」
「高!」
「高いだけの旨さは保障しますよ。」
「いや、それでも高すぎるから、さすがに買えねえな・・・。」