43.アイカへの帰路(1)
レスリーはこっちには居ないようだから、アイカに戻ってから会いに行こうか。
2番目の宿場の奴らは、今晩中に冒険者村に帰ってくれるかな?
さっき聞いた話だと、明日の朝には出発しそうなんだけどな。
まあいいか。居たら居たらで何とかしてしまおう。
何とかしないといけない場合を考えると、護衛はいない方が楽だな。
クシェル達に1番目の宿場出るまで付き合って貰うっていうのもいいんだが、
アイカに入る時に護衛が居ないのはやはりおかしいよな。
俺が大銀の冒険者だと知っている、ロベルトさんのいる南門から入ればいいかな。
ロベルトさんを良いように使いすぎな気もするけど、
お土産に塩や海産物でも渡せば許して貰えるか。
今日は、遅いしもうそろそろ寝るとしよう。
今日は、家に戻る。
リルが起きてたので、盗賊達から奪って来た装備類の洗濯をお願いする。
かなり大量なので、時間のある時に少しずつ片づけて貰うようにお願いする。
魔道具もいろいろ拾ったな。
少し見てみたが、なんの魔道具なのかはぱっと見分からなかったので、
後日じっくり分解して確認してみよう。
奪う時に聞いておけばよかった・・・。
リルと少し話て、アリスの寝ているベッドに潜り込んで寝た。
翌朝、クシェル達には護衛として3日ほ付き合って貰う事を了承してもらい、
ケニーさんにもそういう話をする。
今回は、冒険者村の統率が大分乱れている事もあり、
2番目の宿場だけでなく、1番目の宿場や、向かっている最中の街道なんかでも、
無作為に襲われる危険性がありそうな気がする。
なので、一緒にいるのがクシェル達なら、俺も遠慮せずに魔法使えるので、
より安全に帰れる事を伝え了承してもらう。
護衛は断らないとダメだったのでお金がかかったけど、
そもそもアイカから来た時の護衛代金は、支払う必要が無くなったので、
マイナスではないだろうな。
帰りは俺達が、無料で護衛する訳だし。
ウィダスを出る前に、お世話になったケニーさんの両親に挨拶し、
魚料理を教えて貰う為に、人を来させるので教えてくださいとお願いしておいた。
代わりに、こちらもレシピを教える約束で了承してくれた。
ウィダスの東門から俺達5人は出発する。
この2日間商人の通行が止められていた事もあり、9つの商隊が一緒のタイミングでの出発になった。
これだけ商隊がいれば、護衛とか要らなかったかもって言うくらいの大規模な移動になっている。
各商隊5~10名ほどで、全員で100人近い人数での移動である。
「こんなにいっぱいで移動ってあるんですね。」
「アイカから王国ではそんなに珍しくない光景ですが、
ウィダスからだと私もこの規模は初めてですね。」
「これなら順調に帰れるかもですね。」
「そうですね。これだけいれば道中も安全でしょう。」
俺はファギーの引く荷車に座り、周りの商隊に遅れないように進んでいる。
ケニーさんは、周りの商隊からも情報の収集をしてくれている。
その話だと、2番目の宿場で大きな事件が起こっている事が噂になっているが、
この規模の商隊になっているので、みんな不安はないようだ。
ウィダスは、最近貴族の出入りが激しいので、
王国の貴族同士の戦いに、なにか巻き込まれるんじゃないかと危惧している人が多いようだ。
その為、北の開拓村への行商を始めようかと考えてる人もちらほらいるらしい。
ただ、北の開拓村からの帰りの荷物が無いので、北の港町との三角貿易を考えているとの事だった。
最近は、獣人国との小競り合いも大分落ち着いているようなので、
北側の治安も大分良くなっているらしい。
逆に小競り合いが落ち着いてしまって、獣人の奴隷が少なくなっているらしく、
値段が上がっているそうなので、これを帰りの荷物にするのも儲かるそうだ。
小競り合いが無い時には、獣人国の小さな集落を奇襲し獣人を確保しており、
獣人奴隷を仕入れるなら北の港町なんだそうだ。
アイカから東の農村も、盗賊が居なくなった事で、安全な行商が出来ると最近は人気らしい。
東の街道の先にある、鉱山からの鉄などが貿易出来るそうだ。
かなり重いので荷引きを数人連れて行かないといけないが結構な利益が出るそうだ。
そんな話をしながら、商人達は仲良く2番目の宿場が見える所まで移動していく。
俺も、サーチで確認した所、冒険者村の奴らはもう出た後だな。
冒険者村方面に150人程度の人が移動している。
少し話よりも少ないが、まあ間違いないだろう。
少なくなった人数が、どこかで待ち伏せていない事を祈ろう。
2番目の宿場に入ると、宿屋の争奪戦が始まる。
さすがにこの人数では、泊まれる部屋が足りなくなる恐れがあるそうだ。
護衛達は、野営になるのだそうで、商人だけがそれぞれ宿屋に泊まっていく。
ケニーさんは、昨日から取ったままの部屋があるので、そこに行くか悩ましい顔をしていた。
「いってみましょっか。なにかあっても大丈夫ですよ。」
「はい。」
そう言って、俺達は昨日の朝、護衛達に襲われた宿屋に移動する。
ケニーさんが、宿屋の店主に声をかける。
「こんにちは。」
「あんたら・・無事だったのか?あんたらの連れてた荷引きの冒険者が死んでたぞ。」
「はい。何があったのか教えて貰えませんか?」
「ちょっと複雑なんだが・・・ここ数日でいろんな事が起こりすぎてな・・・。」
「いろんなことですか。」
「裸の大量殺人鬼が出たそうだ。」
ん?
「裸の大量殺人鬼ですか!」
「あんたも、アイカの商人なら噂は知ってるんだろう。」
「ええ。人を裸にしてすべて奪ってから殺すって言う殺人鬼ですよね。」
ん~!
「あれがこんな所にも出やがったんだ、幸い死んだ奴はいなかったようだが、
すべて奪われて裸になった奴や、原因不明だが足が動かなくなったり、
穴に落ちていたりと好き勝手やられたらしい。
多分、あんた達の荷引き人もあいつに殺されたんだろう。」
う~ん。身に覚えはあるけど・・・その名前だけは広まってほしくなかった。
なに?裸の大量殺人鬼って・・・俺が変態さんみたいじゃないですか!
好んで男を裸にムいてる訳じゃないんだけど。
無力化の為と、罰を与えようと思ってやってるだけでですね・・。
そう言う趣味とかは無いんです。
それに、その二つ名かっこ悪いよね・・・すごい。