42.暗殺者(2)
俺は、その屋敷の庭に入り、聞き耳で様子を探る。
「報告します!ケニーの暗殺に失敗しました。」
「なんだと!」
「私を除く全員がやられたと思われます。」
「どういう事だ!」
「相手は、私達よりも手練れの暗殺者と思われます。
姿も確認できず、一気に5人がやられました。」
「なんでそんな奴がいるんだ・・・。大銀の冒険者達が失敗したというのもそれのせいか。」
「多分、まちがいないでしょう。」
「・・・それがケニーについているとなると厄介だな。」
「はい。」
「増援を出す。暗殺特化した奴らを全員連れていけ。」
「は!」
いや、、これ以上増援とかやめてほしい。戦争になっちゃうよ。
俺は屋敷を回り込み、その話をしていた部屋の窓をナイフで切り落として中に入る。
「誰だ!」
「・・・お探しの人です。」
暗殺者の男は、すぐに俺に対してナイフを放って来た。
俺の反射の魔法にはじかれて、そのナイフが男に反射し男の肩口を切り裂く。
「はぐぅ。」
肩口の傷が見る見る青くなって行き、男は悶絶しながら倒れ動かなくなった。
あれ?・・・毒か!
まあ、そんな事よりも。
「お前もナイフ投げて自滅するか?」
「魔術師様・・・なのか・・・。」
魔術師?魔法使いと違うのかな?一緒だよね?
こういう時に分らないって言うよりも、誤解させておいた方が良さそうなんで、
ちょっと溜めてから、
「・・・どうする?」
「も、申し訳ありません!どうかお許しを!」
すぐさま男は平服し、頭を地面にこすり付けながら許しを乞うてきた。
この男がきっと男爵なんだろう。
もっと貴族のイメージは、バッハみたいに横ロールのカツラ付けて、
ハデハデな服着て、ゴテゴテの装飾品をしているイメージがあったんだけど、
結構普通だった。
平民服なんだけど、袖の部分だけ長くって全体的にゆったりした服なんで、
寝る為の服装って感じだ。
指輪はいくつかしている物の・・・ネックレスもしてるな。しかも魔道具だ。
「ケニーには、手を出されると困るんだよ。
手を出す奴をすべて殺して回らないといけない程度には。」
俺は、淡々と冷静に話す。
「は、はい!申し訳ありませんでした。
魔術師様がかかわってるとは思いもしませんでした。」
「で、どうするんだ?」
男は、少し躊躇してから、
「ケニーにはもう手をだしません。すぐに全員に周知して一切関わらないようにします。」
「うん。その方が長生きできるね。で、レスリーの方は?」
「レスリーごときが、何を言おうと問題ないのですが・・・。」
「ドウェイン子爵の方か。」
「・・・はい。」
「彼にも話をして、手を出さないように言っておくんだな。
もしもの時には、お屋敷にお邪魔させてもらう事になるからと伝えておいて。」
「は、はい!かしこまりました!」
これで、とりあえずは収まったかな。
「レスリーは、この町にいるのか?」
「いえ、アイカにいるかと思います。」
「そうか。」
レスリーには、直接話をしないといけないかもな。
「ケニーに手を出さないなら、俺はここにもお前にも興味はない。」
俺は、魔法を伸ばしその貴族が身に着けていた。魔法具を回収してしまう。
「これは駄賃として貰っておく。今後も下手な事をしないようにな。」
「はい!どうぞお持ちください。あの・・」
「なんだ?」
「申し訳ありません。お名前をいただけませんでしょうか?」
「そうだな・・・。ハルトだ。」
「あの・・。家名をいただけましたらと思います。」
ああ・・。そっか貴族よりも上の立場って、貴族と同じく家柄的なのがあるのね。
どうしよう、そんなの無いからな・・・。
まあ、嘘ついても仕方ないな。
「王国に仕えてる訳じゃない、ただの魔法使いハルトだ。」
「王国の魔術師様ではない・・・まさか・・・。」
「誤解するなよ。俺の邪魔さえしなければ王国と敵対する気はない。
それ以上の詮索はいらない。お前はただ俺の力だけを理解していればいい。」
俺は、その場から亜空間で拠点に移動する。
「まさか・・・」の後がちょっと気になったけど、
敵対しないって言っておいたし大事にはならないだろう。
そしてもう一つ気になった事があった。
あの暗殺者が死んでいた事だ。
これが俺の初の殺人なのかな?
反射だから、なにもしてないし、自分の毒で死んだんだけど・・・。
あれは、白ヘビの毒が塗ってあったんだな。
それも、かすっただけで死んじゃったし、ほんとにすぐだったし。
助ける間も無かったな・・・。
なんにしてもとりあえず、これでケニーさんのウィダスでの安全は確保出来たかな。
それにしても、貴族に絡む事になるとは思わなかったな。
貴族ってあんな暗殺集団を囲っているって事か。
怖いな・・・。あんなのに突然襲われたら、仲間を守れないよ。