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メイド共観察日記~それを編集して小説に~  作者: ナレーショナー: [データ削除済]
第0章 終わりを告げる夜明けの暁
8/27

7 日記

前回のあらすじ。

ローゼが悪夢から覚める→棒人間にイラつく→マクラタコ殴り→スッキリ→棒人間のセリフが気になる→確かめにニルソニアの業務室に行く→開かない扉と格闘する→つかれる

 ローゼは気を取り直し、彼女の主――ニルソニアの部屋へと向かった。






 図らずとも、昨日(あるじ)――ニルソニアお嬢様を起こしに来たときと同じ体勢で固まるローゼ。

 ただひとつ、ローゼが不安げだという事を除いては。


「罠だったらどうしましょうか……いえ、どうせあいつの戯言です。さっさと確認して(お嬢さまの)ベットに入りましょう」


 神妙な顔つきで、ドアノブに手をかけた。

 ドアノブは音もなく回った。



 部屋に入ると、当然ながら天蓋付きのベットでニルソニアが寝ていた。

 床には、脱ぎ捨てられ散らかったお嬢様服。

 普段から身の回りを任せきりのお嬢様。生活力は皆無だった。


 普段通り、無意識に服を回収していくローゼ。

 そして、普段と同じく気配を殺している。

 気配を殺しているため、ニルソニアが起きそうな様子はない。



 後で本人から聞いた話だが、『お嬢さまに悪戯するために、努力しました』とのこと。

 さすがは、駄メイド。いや、もはやメイドですらないかもしれない。



 回収した洗濯物(お嬢様の服)を部屋の隅にポイッと投げ捨てる。


「これで足の踏み場が出来ましたね。―――おっと、お嬢さまは寝ていました。静かに……静かに……」


 忍び足で、業務室へつながるドアへ歩いていく。

 普段通りに、ニルソニアが起きる事もなく、そして何事もなく、ドアの前に着いた。

 今回もドアノブは滑らかに回った。




 静かな業務室は相変わらず散らかっていた。主に書類が。

 ただ、ドアから業務用両袖机(りょうそでづくえ)までは、動線が確保されていた。


 ローゼは、周囲を紙に埋め尽くされた道を進む。

 積み上げられた白い塔に当たらないように慎重に進む。









「まったく、お嬢さまを起こさないことよりも、書類の山を崩さない方が難しいとは」


 愚痴りながら、たどり着いた両袖机の()()、下から二段目の引き出しを開く。





 そこには―――――――

「――――――ん――――――」

 ――――――――何も入っていなかった。





「やはりからかわれた、いえただの夢だったようですね。ならばさっさとニルソニア様と共にベットで寝―――」



 ガチャリ



 棒人間は何と言っていた。

 『願い事は吸血鬼が眠る部屋―――その隣の仕事部屋にある両袖机。()()下から二段目の中から始まる』

 そう言っていた。



 音がした。()()の引き出しから音がした。



 業務机の備え付け引き出し、左側、下から二段目、その引き出しが。


 ローゼには、何故だか鎖で縛られているような気がした。


 つばを飲み込み、だが静寂(せいじゃく)に飲み込まれないように、

 腕に力を()め、だが期待は()めないように、

 引き出しを開ける。



 ―――――止まっていた時が動き出す―――――



 そこにあったのは、

 一冊の古ぼけた黒革の手帳と薇発条(ぜんまいばね)の切れたオルゴールだった。

 手帳の表紙には何かが書かれていた跡と、大きく刻まれた二つの『〆』(×)


 望んだものと告げられたそれを覗き込んだ。


 それは―――――――――






     †     †     †







 手帳――日記を丁重に閉じる。元あった場所に戻すと、ローゼは泣きそうな、それでいて決意したような顔でオルゴールの発条(ぜんまい)を巻き、机の上に置く。


 流れてくるは、美しく気高い、だけどどこか寂し気な旋律。

 その旋律は、この場に動くものがいない夜であることも()わさって、高らかに鳴り響く。


 今にも消えそうな音は、屋敷中に響き渡る。

 壁一枚(へだ)てた部屋にも流れ出る。




 バンッ!!!



 ローゼが顔を上げると、

 メイドが見たことない表情で、日記の持ち主――ニルソニアが扉を蹴り開けて、迫ってきていた。

次回

「幼子」

また見てね

―――――――――――――――――――――

特別版:ハッピーハロウィン


我らが父(上司) 我らが父(上司)、メアさん……棒人間曰く今日は『ハロウィン』というらしいですよ。]


『そうか。だが、お前を下界に行かさせるわけにはいかない』


[どうしてですか!]


『仕事しなくなるだろうが』


[しますよ!……多分]


『……駄目だ』


[そんなーーーーーーー〜]


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