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メイド共観察日記~それを編集して小説に~  作者: ナレーショナー: [データ削除済]
第0章 終わりを告げる夜明けの暁
1/27

1 勝気で寂しがりなお嬢さまとズレてるメイドと……

皆様初めまして!


この度投稿させていただく[削除済み]と申します。


――あ、この情報はまだ公開できませんか。

私自身で自動修正機能をつけたはいいですけど、書きにくくなりましたね。


あ、いえ、こちらの話です。


ごほん、気を取り直して、

どうぞ、ごゆるりとお楽しみください。

コツコツと、

窓と扉が並ぶ薄暗い大理石の廊下に足音が鳴り響く。


音の発生源は、夜だというのに

カーテンを開けながら廊下を進む。


突き当たりには、

周囲の扉と装飾の格が違う部屋があった。


その部屋の前に着くやいなや、

人影は何を思ったか、立ち止まった。


そして、唐突(とうとつ)に、

満足した顔で(うなず)き、

音を立てずにドアノブを回した。


     †     †     †


「で、説明して(もら)おうかしら」


さっき部屋に入っていったメイドが、天蓋(てんがい)付きベットの横で正座させられていた。


「何で夜、目が覚めたら私の横にあなたが寝ているのかしら」


「申し訳ありません。起床の時間より早く寝室に着いてしまいまして。思いの外、疲れていたらしく、睡魔に負けました」


「いや、それ説明になって無いからね。私が聞いていることは、何で私のベットで寝ていたの かって話。普段は扉の前でモーニングコールしてくるじゃない」


「それはですね、あれです。睡眠をきちんと取るためは、上質な寝具で寝るべきですから」


「へ〜、あなたこの前、机に()()して寝ていたじゃない。熟睡だったわよ」


勿論(もちろん)真相は違うのだ。

ただ、口が()けても言えないことだが。

主人と同衾(どうきん)、つまり一緒に寝たいだけだなんて。

どうしようも無く、口が()けても言えないのだ。


「そんなことより、お嬢さま。早くお召し物をお換えにならないと、風邪を引きますよ。それとも、見せつけているのですか? 魅惑(みわく)のロリぼでぇを」


メイドは誤魔化しにかかった。

お嬢さまは起きてすぐメイドを()()めていたから、スケスケで風通しの良いネグリジェ姿のままなのだ。

ネグリジェのお嬢さまは可愛らしく、くしゃみをしたあと(ほお)を染めた。


「女同士でしょ。見せつけてどうするの?」


溜息(ためいき)1つ。


「もういいわ。この件は不問にします。朝食の準備をして頂戴(ちょうだい)


命を受けたメイド―――ローゼ・キュリエードは

少し落胆(らくたん)したように顔を伏せた。

直後、(リン)とした雰囲気を(まと)い、


「承りました」


と述べ、部屋の中から厨房へ向かった。


「………」


追い出した者、残された者は、ハァーっと溜息をついた。



     †     †     †



ここはラングドニ邸。銀髪碧眼のメイドローゼ・キュリエードと、金髪緋眼のお嬢さま二ルソニア=A=ラングドニが住んでいる。

以上説明終わり。



 え、短いって? 真面目にやれって? そもそもお前は誰だって? 


[その疑問は過去の、いや未来ですかね? まあ、そのうち私が答えますね]


さて、私についての疑問は置いといて、

説明という名の設定でも騙りますか。

おっと、嘘言うつもりは無い。

語りますかっと。


このラングドニ邸がある場所は、アラスト大陸の左側。

アラスト、ゴンドール、ファフクリ。

この3つは三大大陸(さんだいたいりく)と呼ばれている。


アラストには主に、人が、

ゴンドールには主に、亜人(人に似て似ざる者。エルフ ドワーフ 獣人など)が、

ファフクリには主に、魔物が、住んでいる。


 ∵の右側がアラスト大陸。

 ∵の下側がゴンドール大陸。

 ∵の左側がファフクリ大陸。


さっき記述した通り、アラスト大陸左側に、詳しくは海岸沿いに、ラングドニ辺境伯領がある。


二ルソニアはあれでも、れっきとした貴族なんですよね。

お嬢様なんですよねー。

何が言いたいかは別にして。



閑話休題(それはそれとして)



海に領土は面しているが、深い森に邪魔され、手出し出来ない。

魔物も多い。色々いる。



さて、そろそろ彼女たちの食事が出来たようだ。

ここまでにしておこう。

また、随時(ずいじ)説明する。



     †     †     †



「本日の朝食は、昨日の野菜のスープ、ゆで卵、ベーコン、バター付き白パンになります」


運ばれて来た物を上品に(たいらげ)らげる二ルソニア。


やはり出来るメイドなのか、ローゼは主が一息ついた所に、紅い液体で満たした水晶のワイングラスを、テーブルに置いた。


ちなみに、先程(さきほど)まで食事の邪魔にならないように背景と化していた。

ワイングラスを置く時も、気配を減少させていた。


メイドさんが通常持っている技能ではない。

そして、奴は何か期待するように目を輝かせている。


 スッ。 ビクッ‼ ガシャン‼


 結果、二ルソニアは、

突然横から現れた手に驚き、

身体が跳ね、(ひざ)がテーブルにぶつかった。


衝撃で皿が、食器が、宙を舞い、床に叩きつけられる。


しまいに、聞こえてくるローゼの失笑。


……いわゆる駄メイドだったらしい。    



     †     †     †



割れた皿の後処理も終わり、

二ルソニアは、改めて紅い液体に口をつけた。


鮮血を嚥下(えんか)するたび、妙な色気を帯び、顔は恍惚(こうこつ)の表情を浮かべていた。



 そう二ルソニア=A=ラングドニは吸血鬼。




「ローゼの血液は濃厚で美味しいわね。仕事は...(催促すれば)出来るし、料理も血も美味しいし、」


溜息(ためいき)1つ。


「これで、いたずら好きと、馴れ馴れしさが消えたら完璧なんだけど」


「失礼な。元から私は壁です。……何間違えているのですか? それだと私がまな板みたいじゃないですか」



[え、なんで修正入れたのに何で分かるんですか? 『完璧です』を『壁です』って書き間違えかけてすぐに直したんだけど。あれ? 反映されてない? 直しておきましょう。 あ、どうも、未来の私です。まだ私については説明しません。続きをどうぞ]



     †      †     †



「失礼な。もとからわたしは完璧です。どこら辺が馴れ馴れしいのでしょう。厚かましいのは、お嬢さまでしょうに」


溜息一つ。


「そういう所が馴れ馴れしいのよ」


一拍間が空いて、ようやく気づいたのか、


「私厚かましいの?!」


少しズレた反応をする世間知らずのお嬢さま。


「そりゃーねぇ(笑)」


言いながら全身を、ジロジロ見るローゼ。

もはやこの時、(うやま)う気はゼロに近い。


からかわれたと分かり、引きつった笑みを浮かべる二ルソニア。


「……まあ、いいわ。不毛な掛け合いはやめましょ。今日のスケジュールは?」


ローゼは少し項垂(うなだ)れ、顔を上げ、

メイドは答える。


「本日のタイムテーブルは、正午(真夜中)まで領主の事務仕事。そこからは、今日のメイン。紅月祭(ブラットムーン)です」



紅月祭(ブラットムーン)


それは、吸血鬼たちのお祭りだ。

先代のラングドニ辺境伯が世界に広めた祭りだ。

一年の中で一日だけ月が紅く染まる日がある。

昔は不吉の象徴だったが、

今では酒飲み共に、愛されている。




二ルソニアは、前半イヤーなお顔をしていたが、紅月祭と聞いた時、神の啓示を受けたかのようにパァーッと花咲いた。


「もう、紅月祭の時期なのね。そういえば、今日であなたと契約してから十年たつのね。おおきくなったわねー」


しみじみと、近所のおばちゃんっぽいことを漏らすお嬢様。


「ええ、お陰様で、身長も胸も器も胸も、お嬢さまより大きくなりました」


ローゼは二ルソニアの躰を見渡して、


「それにしても、二ルソニアお嬢さまは、まったく変わりませんね(笑)」


哀れみの目を向けた(宣戦布告をした)


ローゼ16歳。二ルソニア外見12歳。

高校生が、背丈が自分のお腹までしかない小学生に張り合った瞬間であった。


「おいそれはどういう意味だ」


………無い胸を張りながら、青筋立てるお嬢さま。


それを無視(勝手に勝利宣言を)しながら、


「さ、早くお嬢さま。お仕事の時間です。もし、しないのなら、私もサボれるのですが」


同時に、ニート宣言も―――言外に祭の時間が削れますと伝えた。


「仕事はするわよ!? あなたも祭までには、間に合わせなさい!!……人選間違えたかしら」


もちろん、お嬢さまの青筋が増えたことは言うまでもなかった。



     †     †     †



 真夜中、吸血鬼は黄昏(たそがれ)ていた。


人が寝静まる時間ではあるが、街では、酔っ払い共がまだ騒いでいた。


人が寝静まる時間ではあるが、黄昏ていた。


周囲に人はいない。

そもそも森の中なので、目に入る場所に家がない。


紅い月を見てボーっとしていると、いつの間にか、隣にローゼが座っていた。



ちなみに、

ここは地元の住人から『お化け樹』と呼ばれる

全長20メートル弱の木の上だ。

5メートル地点の(うろ)にある二ルソニア特製秘密基地なのだ。その洞の前にある木の枝にニルソニアは座っていた。



「あら、早かったじゃない。普段通りならもう少しだけかかると踏んでいたのだけど」


「完璧メイドのローゼちゃんからすれば、あのような仕事、二ルソニア様の―――失礼、赤子の手をひねるようなものです。」


「ねぇ、ローゼちゃん。あなたの発言間違いだらけよ? ちょっとそこの裏まで(ツラ)貸しなさい」


 二パァ、と満面の笑みを貼り付ける二ルソニア。


 空気が張り詰める。

 さすが、腐っても吸血鬼。

 常人が浴びたら、失神する威圧を放っている。


 が、10年間いじり続けてきた完璧メイドローゼちゃん(自称)には、効かず


「お断り申し上げます。結果は分かりきっていますから」


 と、なめた口をききながら、いつの間にか用意していた酒を傾ける。


「ローゼ、それは?」


「今日のために取っておいた、とっておきの安酒です」


「どうして安酒なのよ」


「本番は明日。二ルソニア様のお誕生日ですので」



 笑いあう二人。

 いつの間にか険悪な雰囲気は消えていた。



 数秒後、

 何事も無かったかのように、差し出される手。

 (うやうや)しく酒をグラスに注ぎ、

 手渡すローゼ。


 なみなみに注がれた(ワイン)


 スーッと細まる緋眼。

 見事なジト目を(かも)し出していた。


「どうして、水面が盛り上がるほど入れているのかしら?」


「あ……申し訳ございません」


 只々(ただただ)心ここに在らずだったようだ。

 素で気づけなかっただけだった。

悪気はなかった。いいね。



 手を少しプルプル震えさせながら、

 ワインを(こぼ)さぬよう、

 ゆっくり味わう。


 心地よい風に吹かれながら、


「あなたを初めて見てから十年か。早いわね。ああ、今年も契約更新ね」


 感傷にも浸る。


 ローゼの方を横目で見て


「あなたの()()()()()()()、私は生活出来ているからね。いなかったら、領主の仕事に専念できないもの。また、1年よろしくね、ローゼ」


 笑みを作った。


「承りました。ご主人様」


 深々と(こうべ)()れた。




 だが、神妙な態度も長くは続かず、


「お嬢さま。領主の仕事といっても、実際は町の役人頼みで、書類の処理だけじゃないですか」


 お嬢さまニート疑惑にメスを入れた。


 二ルソニアは、肩の位置まで手を上げ、


「人間のことは、人間に任せるわ」


 やれやれと、オーバーアクションを取って誤魔化した。



 そんなたわいも無い会話が続いていく。

 夜が()けていく。



     †      †     †



 紅月祭は、お開き。


 あと片付けも終わらせ、ベットに入るローゼ。

 自分の部屋の天井をボーッと見あげ、思う。




(二ルソニア様は、先程私のおかげでやってこれたなどの節をおしゃっていたけれど、とんでも無い。

私はあなた様がいなければ、こうして思考することさえ出来なかったでしょう。私の方が救われているのです。


 私は、

 十年前、私を買って頂いた、

 いや拾って頂いた恩返しがしたいのです。


 なのに……なのに……、

 二ルソニア様は何も教えてくれません。

 何も探させてくれません。

 何も知らないから、分からないから、

 許してもらえないから、何も、何も出来ないのです。

 

 1番喜んで貰えることを出来るのが望ましいのですが、何がいいのかサッパリわからないのです。)


 支離滅裂なことを考えながら睡魔に沈んでいく。



 †      †     †



 紅月祭は、お開き。


 日課の日記を書いて寝る。


 人間が起床してくる時間に、ニルソニアはベットに入りこむ。




 吸血鬼の『夜』がくる。


 微睡みに沈んでいく意識の中で、


(また一年、たった。わたしはやっぱり一人。ずっと一人。今までも、これからも)


 例年通りの言葉を吐く。




 完全に墜ちる前、


 例年とは違い、


 黒く昏い闇の底と、

 紅い月が照らす空の上で、

『ナニカ』が嗤った、気がした。

感想,ブックマーク,評価などをしてもらえると、この小説が主神に捧げるにふさわしいか否か、がはっきりとわかるので、大変助かります。




ところで、お嬢さまの名前には、顔文字は

入っておりません。=A=

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