丸いものは転がるし爆発する
ビー玉コロコロ。坂を下って猛ダッシュ。
ビー玉に対する比喩ではなく、私が猛ダッシュしている。
競走をして、ビー玉より早く平坦な道に辿り着けたら、私の勝ちだ。
コロコロ。
あ、まずい。
道路のちょっとした出っ張りにぶつかって、ビー玉が進路変更。
私は『急な車線変更とかないわー』とか、高速道路で見た車について思い出した。
思わずクラクションをプー。
「プー」
あらやだ恥ずかしい。
私がクラクションになってしまった。
プップップー。
おならじゃないよ、ほんとだよ。
いやまあ現実逃避はやめて。
なんか走馬灯っぽい感じで、時間が遅く感じるんだよね。
やばいやばい。
私死んじゃう?
それは困……らないか、別に。
ていうか走馬灯って記憶がフラッシュバックするんだよね。
うーん。
私の人生の薄っぺらさが見える。
フラッシュバックの使い方ってこれで合ってるっけ?
まあどうでもいいか、死ぬんだし。
ん、てかどうやって死ぬんだこれ。
ビー玉で転んで死亡?
ないない。そこまで貧弱じゃない。
転んだ拍子にビー玉を飲み込んで死亡?
私の未来予知能力すげーな。
占い師になれちゃいそう。
ドキュメンタリー系で仕事もらえそう。
ぐへへ、イージーな人生だぜ。
そうだ、周囲の状況から死因を予測するゲームをしよう。
正解者には、天国旅行三泊四日へご案内!
※注意、天国旅行のため、あなたは地獄行き決定です。
あっはっは。
注意はもっと小さく書くべきだぞ、この頭ゆるゆるめ。
てへぺろ。
えーと。
車の影、なし。
人の気配、なし。
蝉の声、うるさい。
ツクツクボーシツクツクボーシ。
ッワッワボーツッワッワボーツ。
木にぶつかって死亡しか思い浮かばない。
そこまで私は貧弱じゃない。
いや、本能レベルで理解してるとか?
うーん。
私には死因がわからぬ。
そして人一倍恐怖には鈍感であった。
芥川龍之介先生よ、こんな私を許してください。
にしてもビー玉きれいよなー。
太陽の光でまぶしいぜ。
あ。
気づいてしまった。
足をずらせば解決じゃね?
そしたらビー玉で滑って転ばない。
天才か。
ふふふ、天才二人分だからね、私は。
年齢的にだけど。
うふん。
よーし。
足を動かしちゃうぞー。
そーれそーれそーれそーれ。
もう一回!
そーれそーれそーれそーれ。
四回してたわ。
そして足が動かねえ。
どうしようもねえ。
あーくそだるい。
もうやめだやめ。
足も浮いたままだと辛い。
はー、足を下ろしたい。
んあ?
下ろせた?
足が下ろせた。
私、急停止。
足がジンジンキタキター。
ビー玉がコロコロコロコロ。
はっ!
もしかして、ビー玉が私の時を止めていたのか。
あのビー玉すげえぜ!
売り飛ばして億万長者になろ。
先に平坦な道に辿り着いたのはビー玉だった。
私の負けだ。
うーむ。
今日はいい体験ができた。
帰ろうか。
ビー玉回収に行くぞー。
カラスが飛んできて、ビー玉を奪っていった。
なんていうんだっけ、こういうとき。
めでたしめでたし?
とっぴんぱらりのぷう?
いや、これは――
カラスがくわえていたビー玉が――
爆発した。
地球は粉々になった。
Fin.