4話
「それじゃあ準備はいい?」
「えぇ、この目が治るのなら」
シリウスさんは結局、僕の所に来た。
だからその気持ちに答えよう。
でも【万物合成】で体の一部を治すと少しだけその人物が変質するんだけど…確か目なら必ず魔眼になるはず
まぁでも問題ないかな?
「まずはっと」
僕は自分の目をえぐり出した。
人形の体だから痛くもなければ取り外しはもともと可能だった為、問題は特にない。
「じゃあ今から全身に麻酔をかけるからね?」
「お願いします。」
プツッ
注射針を刺し、直接体に流し込む。
この世界にある魔力を帯びた草から抽出した特製の麻酔薬だ。
一時的に仮死状態にまで落とす毒薬でもあるが、死ぬわけではない。
「まずはこの眼帯の下を」
ひらっ
「うわっ!?なんだこれは…」
そこに現れたのは『不気味』そうとしか言いようのない目だ。
蛇の縦長の瞳孔に赤い瞳、白い眼球ではなく、何か紋様が浮かんでいるように見える。
まるで赤い瞳を押さえ込むように、瞳の上に黒い手形が覆いかぶさっている。
そしてその上からさらに鎖のような模様が八つほど重なっている。
「でも、やるって行ったんだからやろう。」
その目も抉り出す。
血が出るが気にしないで続ける。
僕の眼球とシリウスの不気味な眼球、そして龍の涙をスプーンで一掬い。
そして
「我禁忌を犯す愚か者なり【万物合成!】」
一瞬眩しい光に覆われ、治ると同時に僕の掌の上には真っ白な丸い玉が完成していた。
「よし、最高だ、あとはこれをシリウスさんとキメラしちゃえばいい」
今度は白い玉を眼に嵌め込みもう一度【万物合成】を使う。
20秒ほど眩しい光に遮られた視界は何事もなかったかのように元に戻った。
見た目は以前のシリウスとほぼ全く同じ。
だが左目の横にあるもみあげ、長くて触角のようになっている髪が一房血のように赤く変色している。
「鑑定系スキルは持ってないから正体はわからないけど…暫定ではドラゴンと私とシリウスが混じってる種族だと断定するけど…でも実際血が混じったとしても10%にも満たないだろうし」
ブツブツとつぶやいていると
突如シリウスの目が見開かれ、私はシリウスに殴り飛ばされていた。
それも尋常じゃない力を叩き込まれている。
頬の外装は剥がれ落ち、血液を模した赤い液体がポタポタと溢れている。
「やっぱり、ドラゴンの素材使うのはまずかったかな…」
「グルル…」
唸り声はシリウスの口から聞こえている。
息を吐くたび白い煙が口からあふれ出る。
「でもシリウスを助けないとね、柄じゃないけどこの暴走を起こした原因は僕だし」
「フシュー」
左目の周りに肌色の蛇のような鱗ができている。
そして肝心の左目だが、黒い眼球、紫の瞳に縦長の瞳孔。
だれがどう見ても普通の目じゃないのがよくわかる。
しばらく見つめあうと、左目の瞳が真ん丸に変わり、歯車のような模様が瞳の周りに浮かび上がる。
あれは私の義眼の能力だ。
望遠と簡易解析能力のある目だ。、スナイパーや狩人に向いている。
私自身のえぐった眼球ももう修復されてる。
同じ能力でしっかりと相手を捉えながら僕は武装を展開していく。
踵から短い杭が斜めに飛び出し、お尻の少し上、腰からは左右計4本の肉のない腕のような部位が外装が開くと同時に伸びる。
左右の脇からはさらに人形のような球体関節の腕がきゅいんと音を立てて飛び出す。
これらは【仕込み武装Lv5】のスキルで好きな場所から取り出せる、そしてこれらの武装は【カラクリ製作】のスキルで作っている。
ちなみに球体関節の腕は大量にストックがあるが、骨のような腕はストックが無い。
「さっきのパワーも考えるとちょっと心もとないけど…」
両方の球体関節の腕に刺股を装備する。
本来の自分の両腕にスタンガンによく似た武器を装備。
骨のような腕はそのまま。
「ちょっと手荒になっちゃうけど…気絶させれば収まるんだよねこれ、ネズミで実験済み」
「グルアアアアアアアア!」
同時、獣のようになったシリウスにとびかかられる。
どこか狼を連想させられる動きだ。
バギッ!
私は咄嗟にシリウスの攻撃からよけた。
だがスピードとパワーの相乗効果で何かとても大変な事になっているのがわかる。
「でも、残念ながらそういうのをカバーするための腕なんだ」
床に拳が刺さってるシリウスに刺股を押し付け倒す。
ものすごい力で暴れ出し、シリウスのきれいな肌がチラチラと見える。
が、そんなこと気にしていられない。
「グギャアアアアアアアアアア!」
刺股を『握りつぶす勢いで掴んでくる。
「グッ…なんて力!?やっぱりドラゴンの素材のせいで体の何%かはドラゴンの血が流れてるって考えたほうがよさそう」
こちらの体が持ち上げられる前に、骨のような腕でシリウスの手首をつかんでTの字になるように押さえつける。
さすがに藻掻くだけになる。
「今のうちにスタンガ―――」
「グガアアアアアアアア!」
気絶させようとしたとき、シリウスの左手が赤く光り、指先から手首までが爬虫類のように変質する。
爪が鋭くなり、内側はプニプニと柔らかそうだ。
だが力はさらに3倍ほど強くなり、骨のような右腕を粉々に破壊した
「マズイ!スタンガン!」
チチ…バチバチバチ!
「グッ…ガッ!アッ!あああ……」
シリウスが気絶したのを確認するといったん距離を置き、しばらく様子を確認する。
左目は瞳が元の縦長に変わり、白い眼球に戻っていた。
そして鱗も左目の下に1枚肌色のが残っているだけでほとんど元に戻っている。
「ふぅ…助かった…腕1本おしゃかにしちゃったか…」
まあ、何はともあれ助かった…
ふぅと息を吐き出すとシリウスが目を覚ました。