表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ワンドロ短編集

「オオカミ少年の真実」

作者: 新米ブラン

嘘を吐いたときに、ふと思いついた物語です。

僕は、嘘を吐くのが下手だ。

隠し事は昔から苦手だったし、なにより、自分を偽ることが嫌だった。近所の子が飼っていた猫が死んでしまって、その子を慰めるどころか、「ミケは死んじゃったんだ。もう、戻らない。」と言ってしまい、その子を泣かせてしまったこともある。そもそも僕は、誰かに嘘を吐くということ自体に抵抗があった。でも……嘘を吐けないせいで、よくからかわれもした。すごく嫌だった。


だから僕は、あることを試してみた。なにかの本にあった、ばれないように嘘を吐く方法だ。

嘘が吐けないなら、嘘を吐かなければいい。ただ、嘘に見せかければいいんだ。つまり……「本当のことを言って、それを本当だと思わせなければいい」んだ。


やり方は簡単だ。嘘は吐かない。でも、本当のことをすべては言わない。核となる大事な情報を隠し、それとないことだけを答える。そして、あたかも「嘘を吐いているかのように」装う。それだけで、周りは勝手に騙されてくれる。これならちゃんと、“嘘は吐いてない”ことになる。


効果はてきめんだった。もう、誰も僕をいじめたりしない。でも……僕は、「嘘吐き」のレッテルを貼られてしまった。もう誰も、僕の言葉を信じない。たとえそれが真実だろうと、嘘だろうと。


ある日、村にオオカミが現れた。

月のない夜だった。

深い夜の闇の中に、ぎらぎらと光る目がいくつもあった。

結局、オオカミは何もしなかった。

でも……それから以後、オオカミは頻繁に村を訪れるようになった。

はじめは数匹だったのに、どんどん増えていって、今では20を超える数で群れを作っている。


まだ、オオカミたちは何もしていない。

でもそれも、もうじき終わる。

なんとなく、わかるんだ。

そろそろだってこと。


オオカミに気付いていたのは僕だけだった。

だから一昨日、僕はオオカミの存在を村のみんなに伝えた。でも……僕の言葉をまともに聞いてくれた人は、誰もいなかった。

僕が何を言っても、もう、信じてくれる人は、どこにもいないのだ。


でも……それでも。僕は、みんなに伝えなきゃいけない。

嘘吐きだと蔑まれても、疎まれても構わない。

もう一生、誰にも信じてもらえなくなってもいい。


ただ、僕は。

これまで本当の自分を隠す“嘘”ばかり吐いてきた、その償いではないけれど。

僕以外の誰かのために、本当のことを伝えたい。


だから僕は、僕以外の誰かのために、喉を枯らし、声を張り上げる。

嘘偽りない、僕の、僕自身の言葉で。


「オオカミが来たぞ!」


適量の嘘は人間関係を円滑に保つ上で不可欠なものです。

ホワイト・ライが良い例ですね。

嘘も方便、とはよく言ったものです。

もし、この世界に嘘がなければ……どうなるでしょうね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ