その頃のジャック
俺がこの星に飛ばされて数週間。だいぶこの星のことがわかってきた。
相変わらずうまく魔法は使えないけど少しずつコントロールできてきたし、いつかは帰れるはずだ! たぶん!
俺を飛ばした張本人が俺を探してくれてるといいんだが……。
でも飛ばされたのがここで良かったと思う。
ここの家族はみんな優しくてあったかい。ひなにも会えたしな。
ひなは年の割にしっかりしてて面倒見がいい。それにひなが作るお菓子は何でもうまい!
魔法を失敗して庭を燃やしそうになった時はかなり叱られたが(あれは本気で怖かった)俺自身を心配して怒ったんだと後で気づいた。
いつもあっさりしてるけど優しいんだよな。あと笑うと可愛い……って何考えてんだ!
ブンブンと頭を振って邪念を振り払う。
――ていうか、ひな遅くないか?
今日はトウコウビとかいうので家にいないけどそれにしては遅すぎる。
ちょっと近所を探してみようかと思い玄関をでた矢先、目の前に大きな炎が飛んできて慌てて避けた。
その炎は壁にぶつかりそこに焦げた文字が浮かぶ。
「? なんだ?……お嬢さんは預かりました。返してほしければこちらまでおいでください……!?」
お嬢さんってひなか!?
やたらと丁寧に書かれてるけど誘拐じゃねぇか!
俺は急いでその場を飛び出した。ひなに何かあったらと思うと心臓の辺りがズキズキと痛む。
「ひなっ!」
頼む! どうか無事でいてくれ!
そう願いながらまだうまくコントロールできない魔法を無我夢中で使って俺はひなの所へと急いだ。