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92 強い女性陣

 マザーなしでの狩りの旅5日目。



「うおらー。前世で俺が彼女に捨てられたのは、お前らみたいな顔をした奴らがいるからいかんのじゃー!」

「フゲッ」

「このイケメンどもめ。俺は、俺は、お前らの事が羨ましくなんて、う、羨ま……羨ましくなんてねえぞ。ウ、ウオオオーッ」

「ヒギャー」


 早朝からミカちゃんがユウとレオン相手に、一方的な暴力による扱きを施している。

 この2人を強くするようにミカちゃんに頼んだのは僕だけど、訓練を施す側のミカちゃんも、精神な変なダメージを負ってないか?


 というかあのおっさん、前世で彼女がいたんだ。

 そして振られたでなく、捨てられたとは……。


 まあ、あの性格なら、さもありなん。

 年齢イコール彼女いない歴ではないけど、色々あったんだろうね。



「うおおおっ、女なんて2度と信じねぇ。でも、巨乳は大好きだー!」

「……」


 ミカちゃんもいろいろ拗らせてるみたいだね。

 僕も人の事は言えないけど、あのおっさんもいろいろと面倒臭い性格してるな。



「に、兄さん助けて……」

「ひええぇぇー、頭が痛いよー」

 ミカちゃんにボコられまくり、僕に助けを求めてくる弟たち。


「2人ともミカちゃんに勝てるぐらい強くなるんだよ」

 手助けはしない。

 僕は2人に、にこりと笑って告げた。


「「ひ、酷いー」」

 声を揃えるユウとレオン。


「うおおおっ、目から嫉妬の炎が零れ落ちる。言ってくおくが、これはかつてモテなかった俺の涙じゃねえからなー」

 弟2人を苛めながら、ミカちゃんの中にある心の闇(ひがみ)がどんどん大きくなっていってる。


「そんなの誰も聞いてないって……」

 僕はそう呟きながらも、嫉妬神の忠実な信徒ミカちゃんの生贄と化した弟たちから、そっと視線を逸らした。


 見ていると、ミカちゃんの精神面が痛々しすぎて、可哀想になってしまう。



「さすがはミカちゃん、レギュラスお兄様の次に強いだけありますね。私も一緒に鍛えてもらいましょう」

 なんて思ってたら、リズが世迷いごとを言い出した。


「リズ、君にはあれが鍛えている光景に見えるの?」

「はい、逃げる訓練は大事です。いつなんどき自分より強い強者が現れるとも限りません。その時には逃げることも必要です」

 僕が思っているより、リズはしっかりとした考えを持っているようだ。


 リズと話しながら弟2人の光景を再び見ると、確かに逃げ足は速くなりそうだ。

ユウもレオンも、ミカちゃんに苛められまいと、必死に逃げてる。


 まあ逃げ足ばかり強化しないで、その内強くなる訓練をちゃんとして欲しい。




 こんな賑やかなことが朝にありつつ、僕たちは本日も狩りと採取の為に、移動を開始した。


 なおこれまでの旅で作ったスケルトン軍団は、既に100体を超えている。

 軍団のリーダーは、僕が名付けてやった労働警備員が務めている。こいつは他のスケルトンよりも頭が多少良くて、軍団をうまく統率していた。


 いつの間にかただのスケルトンから、スケルトンリーダーにでもクラスチェンジしたのかね?

 体の周りから黒いオーラを出していて、以前より強さが増しているように見えた。



 このスケルトン軍団に獲物の探索を行わせて、その後囲い込みを行わせていく。

 連帯の取れた群れによる行動だけど、囲んだ後に戦うのはスケルトンでなく、兄弟たちだ。

 今回僕たちが来ているのは、あくまでも狩りを学ぶため。

 兄弟がモンスターと戦っている間、スケルトンたちは周囲を包囲して獲物が逃げ出さないようにしている。


「おらー、ユウ腰が引けてんぞ!それでも男か、貴様には玉がついてるのかー!」

「そ、そんなこと言われ……ウギャッ」

「やかましかー。無駄口叩いてなんじゃねー!」

 狩りの最中、ミカちゃんが肉体言語を使ってユウを調教する。


「レオン、とっとと前に出て戦えー!」

「前に出たよー。あ、噛まれたー」

「噛まれたじゃねー!お前はどうしてニブチンなんだ!」

「ギャー、ミカちゃんにも噛まれたー!」

 レオンの方にも、ミカちゃんは手加減なしだ。

 ちなみにレオンは土狼に噛まれているけど、ドラゴニュートの防御力のおかげでダメージがゼロ。むしろミカちゃんの噛みつきの方を、痛がっている。



「……こんなやり方で強くなれるのかねー」

 3人の男(うち1人は見た目幼女だけど中身はおっさん)のやり取りを眺めていて、思わずそう言ってしまう僕。


 ま、いいか。



「焼肉焼肉ー」

 一方フレイアは相も変わらず優勢な火力を用いて、獲物を焼肉へ作り替えていく。

 数日間狩りを経験したことで火の扱いがうまくなったのか、黒こげにしないように手加減して、獲物を炎で焼いて倒していく。


「フンッ」

 リズが槍を一閃させると、土狼がまとめて3体吹き飛ばされた。

 強いけれど、パワー任せの戦い方は相変わらずだ。


「GYAOー!」

 ドラドは土魔法を使って、地面を泥状に変えて獲物の足止めをする。

 そこに翼をはためかせながら空中体当たりをすると、直撃を受けた土狼が跳ね飛ばされて動かなくなる。


 ドラドの体が大きいこともあって、車で犬や猫を跳ね飛ばす光景に似ていた。

 (ドラド)に突撃されたら、土狼程度じゃ抵抗しようがないね。



(どうもうちの兄弟は女性陣の方が強いな)

 そう思いながら、僕は地面に落ちていたグラビ鉱石の欠片を拾っていく。

 途中何をトチ狂ったのか、僕目がけて走ってきた土狼がいたけど、相手をするのが面倒なので、尻尾の一撃で吹き飛ばしておいた。


 尻尾の一撃とはいえ、この攻撃で過去に何度となくミカちゃんを岩壁にめり込ませている。

 この攻撃の前では、ドラゴニュートより遥かに劣る土狼ごとき、一撃で命を刈り取れる。


 さらにワンワン吠える土狼がいたので、尻尾の先からウインド・カッターを放って、三枚に卸しておいた。

 魚じゃないので、本物の三枚卸しにはできないけれど、体が3つに綺麗に切れたので、土狼の三枚卸しということにしておこう。




 こうして本日の狩りと採集作業は、順調に進んでいった。

 そんな中、僕たちはそいつに出会った。


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