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87 土狼襲来

 ――クンクン

「レギュラス兄上」

「分かってるよリズ。でも今はこのままでいようか」


 フレイアのブレスで炙った肉を食べてる、楽しい朝食の途中のこと。

 リズが注意喚起してきたけれど、僕もそれには気づいてる。


「みんな、しばらくご飯を食べてようか」

「はーい」

 僕の指示に元気よく答える兄弟たち。


「クックックックックッ、俺の封印されし右目が疼く……ホゲッ」

 なんかおっさんが言ってたので、顔面に食べ終わった砂蜥蜴の骨を投げつけておいた。


「うおっしゃー、骨ゲット!」

 もちろん、この程度でへこたれるミカちゃんじゃない。

 逆に骨を口の中に突っ込んで、ガツガツと食べだした。


「兄さん?」

「?」

「?」

 ミカちゃんは超野生児の勘でとっくに気づいてるだろうけど、ユウとレオン、フレイアの3人は、疑問を顔に浮かべていた。


「何でもないよ。さあ肉もまだ残ってるし、どんどん食べようか」

 何気ない風を装って、僕は兄弟たちに炙り肉を振る舞っていった。



 それからほどなくしてレオンが、

「あれっ?」

 と首を傾げる。


「何かいる?」

 と、ユウも周辺の茂みを見る。



 頃合いかな。

 ミカちゃんがニヤリと笑いながら、地面に置いていたブルーメタルタートルソードに手を伸ばす。

 リズも槍を手にする。


 ――ガオオオォォォッ

 草むらから、狼の群が飛び出した。

 その数50頭ほど。

 全方向から僕たちを包囲していて、一斉に襲い掛かってきた。


 毛並みが土色をしているから、名前は土狼でいいかな?

 それともグランド・ウルフ?


 英語だと格好よく聞こえるけど、大きさは1メートル程度しかない。

 今食べている砂蜥蜴より小さいので、土狼の方にするか。



「えっ、うわああっ」

 咆哮を上げる狼たちにユウが絶叫。


「あらまあ」

 手を口に当てて、のんびり驚くフレイア。

 だけど驚きながら、彼女の周囲には既に小型の火球(ファイア・ボール)が5つほど空中に浮かび上がっていた。


 近づいてきた土狼に向かって、フレイアはファイア・ボールで迎撃。

 さらに口からファイア・ブレスを出せば、一瞬で消し炭にされる土狼たち。

 1体だけでなく、複数体をまとめて黒焦げにしていた。



「うわー、たくさん出てきたよー」

 そう言うのはレオンで、口から咄嗟にウォーター・ブレスを出して、近づいてきた土狼を撃退した。

 強力な水のブレスで、攻撃力はほとんどないものの、水圧で狼を簡単に吹き飛ばすことができる。


 リズは無言で槍を振るい、土狼の胴体を薙ぎ払う。

 相手が団体で襲いかかってきたので、急所を突いての一撃より、棒のように薙いで使うことで、土狼たちをまとめて叩き飛ばしていった。


 ドラゴニュートはパワーがあるので、力任せに槍を振り回すだけで、かなりの攻撃力がある。


 ドラドに関しては、もはや説明する必要すらない。

「FUNっ!」

 ドラドが唸り声を上げると、土狼が足で踏みつけられてぺちゃんこにされる。

 ペースト肉の完成だ。



「ふははは、弱い、弱い、弱いぞ、お前らー!」

 調子に乗っているのはミカちゃん。

 飛びかかりながら爪で攻撃してきた土狼の一撃を、紙一重で回避。

 そのまま相手の懐に入り込み、ブルーメタルタートルソードで胴体を下から上に切り上げていた。


 さらに2体の土狼が迫る。

 最初の1体が左前方から、それに少し遅れてもう1体が右前方から迫る。

 ミカちゃんは最初の1体を、体を僅かに左に逸らして回避。

 回避しながら、剣を流れるような動きで操り、土狼の頭に叩きつける。土狼の頭が、潰れた。


「……剣なのに斬れない」

 そんなことをぼやきながらも、さらに迫るもう1体を、体を右に動かして回避。回避しながら、すれ違う土狼の腹に剣を叩きつけていた。

 体の中の臓器が潰され、土狼は口から血液をぶちまけて地面に倒れる。


 見事な手並みだけど、あの剣には刃がないので、切ることができないただの鈍器だ。

 刃があれば土狼の体が切れていただろう。けどドラゴニュートのパワーに物をいわせれば、力だけで土狼を一撃で倒すことができた。


 パワーが凄いけれど、それ以上にミカちゃんは剣を持つと強い。


 剣がなくても強いけど、剣があると戦闘力が倍以上に増えるのがミカちゃんだ。

 かつて残像を残して8人に分身した時の速度を出して、さらに土狼に剣を振るっていく。


「うわっ、ミカちゃんが早すぎてどこにいるのか分からない!」

「まあ、凄いですわね。ミカちゃん」

「凄いです」

「GYAOO!」

 兄弟たちもミカちゃんの疾風のような動き、そして次々に敵を倒していく姿を見て、歓声を送っていた。



「ハッハッハッ、どうだレギュレギュ、凄いだろう。これが俺様の本気……」

「終わったけど?」

 ミカちゃんが自慢しているところ悪いけど、残っている土狼は僕が始末させてもらった。


 7人で50頭の土狼を相手にするのは面倒だから、僕たちが食べた土蜥蜴の骨に死霊術を掛けて、スケルトンとして復活させた。

 ユウの死霊術でさっきまで動いていたけど、今度は僕の死霊術によるものだ。


 地面に転がっているただの骨だったので、土狼どもは気にしていなかったようだけど、その骨が突然生き返ったように動きだし、土狼の足や胴体に食らいついて、次々に動きを止めていった。


 ちなみに蘇らせるついでに少し魔力を多めに注いで強化しておいたので、スケルトン土蜥蜴に噛まれた土狼の足や胴体が、そのまま食いちぎられていた。


 そんなこんなで土狼の半分ほどは、僕の作ったスケルトンたちがまとめて始末していた。



「ひ、卑怯者ー。自分で戦えよー」

「何言ってるの、自力の力だよ。ちゃんと僕の死霊術で戦ったんだから」

 ミカちゃんが悔しそうにしているけど、僕はそれを受け流す。



「死霊術ならこういう戦い方もできるから、今度ユウもしてみる?」

「え、ええっ!」

 それよりユウに提案してみたけれど、どうもユウの反応は芳しい物でなかった。



 うーん、死霊術って便利なのに、ユウは使いたくないみたいだね。

 別に倫理観とか気にしなくてもいいのに。

 優秀な労働力なんだから。


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