81 初狩
さて、マザーなしでの狩りの旅2日目だ。
自宅周辺に広がる荒野を抜けて、地面に草がポツポツと生え始める。
「ここの地面って砂だよな。これでガラスが作れないか、今度試してみようか」
「この草の下に何か実でも生ってないかな。ピーナツとか、豆みたいな何かが。芋でもいいな……いい加減、肉以外の物を食べたい」
「この石って、何かの鉱物かな?普通の石と違う」
砂地の平野に落ちているあれこれ、さらに雑草にしか見えない植物など、僕は色々と調査していく。
前回はマザー同伴で、立ち止まっての調査ができなかったけど、今回は兄弟だけなので、僕は色々なものを調べてみる。
「レギュ兄さん、早く行こうよー」
僕が立ち止って自分の世界に没入していたものだから、レオンに注意され、他の兄弟たちにも似たような目で見られてしまった。
「うっ、仕方ないな。でも、もう少し調べて……」
「嫌ですわ、レギュレギュったら。わがまま言わないでくださいます。一応長男でしょう。迷惑……ゲホッ」
「ごめんごめん、さあ行こうか」
ミカちゃんが気色悪い女言葉を使ってきたので、肉体言語を使って黙らせておいた。
「ク、クソウ。なんで俺が殴られなきゃならないんだ。俺は何も間違ったことはしてないぞ!」
「ごめんねミカちゃん。でもミカちゃんに気色悪い女声出されると、生理的に耐えられないんだ。背筋に悪寒が走って、蕁麻疹ができちゃう。だから、殴るしかない」
「をぃ。殴る理由にならないだろう!」
僕とミカちゃんの間で口論。
そんな僕たちを、他の兄弟は微笑ましく見ながら歩みを進めていった。
で、旅を続けていたら出てきた。
土の中から蜥蜴が。
体長は3メートルくらいかな?
それが「シャー」って長い舌を出しながら、僕たちを威嚇してきた。
「メシじゃー」
直後、ミカちゃんが片手に持ったブルーメタルタートルソードで突貫。
――ズガンッ
という音を立てて、ミカちゃんの剣が蜥蜴の頭に半分ぐらいめり込んだ。
威嚇してきてなんだけど、登場から10秒たたずに蜥蜴は死んだ。
「ウガー、メシー」
そしてマザーがご飯を持ってきた時と全く同じで、ミカちゃんは倒した蜥蜴に食いつきだした。
「ご飯ー」
「早くしないと、ミカちゃんに全部食べられちゃいますわ」
「GYAOー」
ミカちゃんに続き、兄弟たちも我先にと群がっていった。
蛇を除けばこれが僕たちの初狩なんだけど、一瞬で終わってしまった。
なお、その後も砂の中に蜥蜴が潜んでいたけれど、隠れている場所は少し砂が盛り上がっている。
遠目だと分からないけれど、近づけばなんとなくわかる。
特に野生児ミカちゃんの勘は人間やめてるレベル……いや僕らはドラゴニュートだから、ドラゴニュートもやめてるレベルで、目ざとく発見しては、まだ土の中にいる蜥蜴に剣を叩きこんで仕留めていった。
この子、本当に超野生児だ、原始人だ、蛮族だ。というか野生生物だ。
マザーが持ってきた瀕死の獲物を殺すときに全く躊躇いがなかったけど、狩りでも躊躇いが全くない。
本能で生きてる獣だね。
元日本人って、マジでないわー。
「ミカちゃん、1人で狩るのもいいけど、ちゃんと他の兄弟たちにも狩りの経験をさせてあげるんだよ」
「ここら一帯の獲物は全て俺様の物。悔しかったら、俺より早く獲物をしとめることだな。クハハハハ」
こいつ、勘が鋭くて獲物を次々狩っているのをいいことに、またしても大人げない態度をとってる。
――ガッ
なんて思っていたら、近くにいた蜥蜴に向けて、リズが槍を一突き。
蜥蜴の口から頭までを槍が貫通し、一撃で蜥蜴を仕留めていた。
「殺りました」
初獲物をしとめて、尻尾をピンと立てて嬉しそうにしているリズ。
表情では読みにくいけれど、あれは獲物をしとめて自慢している。
「フッ。リズよ、これでお前も立派なハンターだな」
「はい、ミカちゃん」
ミカちゃんに認められて、リズが神妙に返事をする。
よく分からないが、2人だけの世界があるようだ。
よく分からないので、僕はこの件に関して、突っ込まないけど。




